おいしい時間が待っている
最近、茄子が食べたくてたまらない。
関西のほうでは、茄子のことを「なすび」というのだろうか。よく、大阪や岡山の方の出身の子が「なすび」といっていて、茄子よりもその方が、うまそうに聞こえるな、と心の中で思ったのを覚えている。
なすびは、うまい。私は野菜の中でも、最も好きかもしれない。だから、秋が一番うれしい。今の時期は、まだそのほど出回ってなくて、皮は厚いし価格も安くはない。でも、食べたくて買ってしまう。
お気に入りの食べ方がある。
なすびを半分に切って、皮の方に格子状の切れ目を入れる。皮目から多めの油でじっくり焼いて、油を吸いきったら厚揚げ豆腐を加え、すこし炒める。だしを入れて少し煮、醤油と砂糖であまじょっぱく味付ける。お好みで生姜を入れてもよいが、私はただ甘いだけのものも好きだ。
これが、うまい。ごはんが本当に進んでしまう。焼きナス、揚げナス、さまざまな料理に使えるなすびだが、この食べ方は自分の中では一番うまい。
どこで知ったのかと言えば、大学の調理学の時間だった。私は、栄養学科を出ているので、調理実習の時間があった。教授はなかなか厳しくて、それこそ嫌味っぽい姑みたいに横に来ては「あら、いやねえ。食材を素手で触るなんて」とかいって、ぷいとどこかへ行ってしまう。そんな感じだった。
ある日、助手の人が茄子をたくさんもらってきた、みんなで食べ切ってほしい、と箱に2つもどっさり持ってきた。それで教授が、適当に冷蔵庫にあった材料でささっと作ったのがこの料理だった。食べたとき、本当にうまい、と思い、媚びを売るでも何でもなく、作り方を聞いた。
「今から説明するんだから急かさないで頂戴。いやあね」と言われた気がする。
それで各々作って、それを置かずにご飯を食べた。お代わりがしたかったが、そこでは人数分しかないからぐっと我慢し、家でたくさん作って存分に食った。うまかった。
夏は夏バテをしていてもいけるし、秋はあつあつにして食べても体が冷えずにまたうまい。うどんにかけるというのもなかなか乙で、ビールとも合う。作れば、すぐになくなってしまう。
そういうわけで、茄子を買ってきて、作ることにした。今、朝の6時半。作って、浸して味を染みらせれば夜ごはんには食べられるだろう。ああ、楽しみだ。楽しみが待っているなんて、そしてその楽しみを自分で作りだすことができるなんて、ぜいたくな話じゃないか。
外を見ると、少しずつ日差しがきた。朝の6時半。20度だ。今日は31度まで上がるということだから、すこし身構えている。氷はたくさん作ったし、アイスもカルピスもあるし、朝にしっかり散歩をしたし。
松任谷由実の『悲しいほどお天気』というアルバムを聞く。これは、2015年くらいに知ったもので、春に聞けば「春にぴったりだな」と思うし、秋に聞けば「これは秋らしいアルバムだ」と思う。不思議なものだ。今、夏に聞いているけど、まさに夏のために作られたアルバムのよう。
彼女の曲は、聞くたびに、情景が浮かぶ。すごく強い訴えのようなものがあるのではなく、映画なんて大げさなものじゃない。なんとなく、昔の連ドラを見ているような、来週もあるから楽しみだなー、と完結しないゆるやかな物語がこのさきもずっと続いていくような心地よさがある。
さて、これを聞きながら、茄子と揚げの焼きびたしを作ろう。今夜はおいしい時間になるぞ。
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自分を許して、大好きな釜揚げうどんを食べに行きます。ありがとう!