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ババルウ星人が仕掛けた「離間工作」 ― ウルトラマンレオ「決闘!レオ兄弟対ウルトラ兄弟」「レオ兄弟 ウルトラ兄弟 勝利の時」

■今回取り上げる話

今回取り上げるのは『ウルトラマンレオ』第38話「決闘!レオ兄弟対ウルトラ兄弟」と第39話「レオ兄弟 ウルトラ兄弟 勝利の時」の前後編です。

この二本はウルトラ兄弟が地球へ駆けつけ、ウルトラマンキングが降臨し、最後にレオとアストラの兄弟がウルトラ兄弟に迎え入れられる回として知られています。しかし仕掛けた側から読むと、別の顔が見えてきます。ババルウ星人は正体を暴かれるまで、ウルトラ兄弟ともレオとも一度も正面から戦っていません。それでいて、守り手たちを殺し合いの寸前まで追い込みました。狙われたのは兵力ではなく、守り手たちを結びつけている信頼そのものだったのです。

■今回のテーマ

同盟は力の足し算です。正面から戦えば、足し合わされた力の全部を相手にしなければなりません。ですが同盟を内側から裂けば足し算は消え、うまくいけば敵同士が戦ってくれます。一兵も損じずに、敵の力が敵の力を削るのです。

だから同盟を断つことは古くから戦いの上策とされてきました。古代中国の兵法書『孫子』は、最上の戦い方は敵の謀を挫くことであり、その次は敵の同盟関係を断つことだと説いています。城を攻めるのは下策である、と。

そして同盟を裂くとき、どこを突くかは決まっています。信頼の最も薄い場所です。同盟は対等な仲間の集まりに見えて、実際には信用の蓄積に濃淡があります。古くからの仲間と、加わったばかりの新参者。疑いは蓄積の薄いところでこそ広がりやすいのです。

ババルウ星人が突いたのはまさにこの場所でした。

■ストーリー

ババルウ星人はまずレオの弟アストラを倒し、氷塊に閉じ込めました。そしてアストラに変身します。この変身は完璧でした。それまでの偽ウルトラマンには本物と見分けのつく違いがありましたが、にせアストラにはそれがなく、ウルトラ兄弟も、モロボシ・ダンも、実の兄であるレオさえも、最後まで疑いませんでした。

にせアストラはウルトラの星に侵入し、ウルトラタワーを倒して守りを混乱させ、その隙に、星の軌道を制御するウルトラキーを盗み出します。キーを抜かれたウルトラの星は軌道を外れ、地球への衝突コースに入りました。二つの星があと少しで共倒れになる。ババルウ星人が作り出した危機です。

犯人はアストラ——そう信じたウルトラ兄弟は地球へ向かい、ダンには「レオを見張れ」というウルトラサインが届きます。アストラを庇うレオに、初代ウルトラマンはアストラを倒すと告げました。

亀裂は防衛組織の中にも生じます。ウルトラの星への爆弾攻撃まで検討されるなか、ゲンはダンに詰め寄ります。あなたはウルトラ兄弟を裏切るのか。ダンは答えました。私は地球を守るMACの隊長なんだ、と。そしてレオの変身を止めようとするダンを、ゲンは殴って気絶させ、レオに変身します。

レオとウルトラ兄弟の戦いはレオが倒れて決着がつきかけます。そのとき、にせアストラは盗んだウルトラキーの銃口をウルトラ兄弟に向けました。小さな星を消し飛ばす威力の武器です。

そこにウルトラマンキングが現れます。キングは光でウルトラキーを断ち、ウルトラ兄弟を叱責しました。愚か者ども、それでもウルトラ兄弟か。お前達はウルトラ兄弟の弟ともいうべきレオを殺すところだったのだ、と。そしてキングの光線を浴びたにせアストラはババルウ星人の姿に戻り、逃走しました。

レオは氷塊から本物のアストラを救い出し、兄弟は二人でウルトラキーを復元します。アストラはキーを持ってウルトラの星へ戻り、星の軌道を元に戻しました。地球に残ったレオがババルウ星人を倒します。そして事件の後、レオとアストラはウルトラ兄弟の一員として迎え入れられます。

■現実世界の話

同盟を裂く、あるいは同盟が組み上がる前に断つ。この工作は二十世紀の戦争にもはっきり現れています。

第二次世界大戦の直前、ナチス・ドイツを警戒するイギリス・フランスとソ連の間では対独で手を結ぶ交渉が続いていました。三国が組めば、ドイツは東西から挟まれます。ですが英仏とソ連の間には相互不信が積み重なっていました。前年のミュンヘン会談にソ連は招かれず、英仏の側にも対ソ連の根深い警戒がありました。ドイツが突いたのはこの隙間です。1939年8月、ドイツは英仏と交渉中だったソ連と先に独ソ不可侵条約を結び、対独包囲網は組み上がる前に崩れました。その約一週間後、ドイツはポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が始まります。

現代でも同盟は攻撃の対象であり続けています。偽の情報を流して同盟国の間に不信を育てる、加盟国の一部だけを優遇あるいは威嚇して足並みを乱す——同盟を正面から打ち破るのではなく、内側の信頼を蝕むやり方です。同盟の力は兵力の合計で数えられますが、その合計を成り立たせているのは、互いを疑わないという目に見えない土台なのです。

■この話の意味

ババルウ星人の作戦を並べてみます。本物を消して、完璧な偽物になる。守り手たちの共有財産であるウルトラキーを奪い、それを凶器に変える。そして仲間の裏切りという偽の事実を同盟に信じさせ、守り手同士を戦わせる。正体が暴かれるまで、ババルウ星人自身は一度も表で戦っていません。敵の力に敵の力を削らせる——孫子が説いた「同盟を断つ」の徹底した実行です。

そして突かれたのは信頼の最も薄い場所でした。レオとアストラはL77星の出身で、ウルトラの星の兄弟たちから見れば新参の客分です。信用の蓄積が最も薄い。犯人はアストラだと兄弟が信じてしまったこと——その信頼の薄さ自体が、この作戦の入り口でした。

偽装の精度にも理由があります。ザラブ星人のにせウルトラマンは目つきも輪郭も本物と違う粗い偽装でした。それで足りたのは、騙す相手が人類——守り手を遠くから見上げるだけの側——だったからです。ババルウ星人のにせアストラは完璧でなければなりませんでした。騙す相手が実の兄と長年の仲間、つまり見破る力の最も高い者たちだったからです。偽装に要求される精度は騙す相手との近さに比例します。二体の偽物の出来の差は技術の差ではなく標的の差なのです。

エースの回のヤプールは守る者と守られる者の縦の信頼を偽装で攻めました。タロウの回のバルキー星人は守る力が消えた瞬間を選んで動きました。ババルウ星人はその両方を一段進めています。偽装で攻めたのは守り手同士の横の信頼であり、力の空白は、待つのではなく兄弟自身の手で作らせようとした。兄弟がレオを殺せば、ババルウ星人は手を下さずに守り手を減らせたのです。

この作戦を破ったものは何だったでしょうか。事件の中にいた者は、ダンもレオも兄弟も、誰一人偽物を見破れませんでした。見破ったのは疑いの外に立っていたウルトラマンキングです。同じものを、疑いに巻き込まれていない目が見たとき、初めて偽装は偽装として見えたのです。

そして結末はババルウ星人の狙いの正反対になりました。裂かれかけた同盟は事件の後、レオとアストラを七番目、八番目の仲間として迎え入れます。この作戦の入り口は信頼の最も薄い場所でした。事件を経て、そこは同盟の中で最も信頼の厚い場所に変わりました。離間工作が突いた弱点は結末ではもう存在しなかったのです。

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