だから全部「下ネタ大全」のせいにすることにした。
バチェラーデートで出会った彼。
前の彼氏と別れて15人目だ。
やっと会えた、と思った。
高身長、高学歴、高収入、高コミュ力、ENFP、祖父母の家が牧場。これだけでもう結婚相手はキミに決めた!状態だった。
お酒も飲めるし、運動習慣もある。申し分ない。
付き合えたけど、12日で振られた。
世界陸上くらいの儚さだった。
見た目は塩顔系で、キリッとした眉と濃いめのもみあげが素敵だった。眉毛はアートメイクなの?と聞いたら、ううん、とそっけなく言われただけだったのでもしかしたらコンプレックスだったかもしれないけど。もみあげも、次会った時は短くなっていたからコンプレックスだったのかもしれないけど。
会話の節々で笑わせようとしてくるところも好きだった。居酒屋のお通しがキャベツおかわり無料だと聞いて、「じゃ、もう今日なんも頼まなくてもいいね!」とか言うような。そのくらいのユーモアがよかった。
あとは、言葉選びも好きだった。他のアプリでの出会いはどんな感じ?と聞いた時、「からっきし」とだけ言うような、そんな語彙力が。
私のことも、それなりに好いてくれていたような雰囲気も出してくれていた。
どんな髪型が好き?と聞いたらLINEのアイコンくらいの感じいいね、と言うから、じゃ次会う時はゆる巻きで行くね、と言ったら「次のデートががぜん楽しみだ!」なんて言ってくれて、
実際顔を合わせた瞬間に第一声で「かわいい!」って言ってくれたのよ。
まぁそれくらい誰でも言うか。
デートの時も自分から手を繋いでくれて、ポケットにも手を入れてくれた。高校生かよ、と思った。
横浜の屋形船をみながら、来年の夏は屋形船に乗ろうねって言ってくれた。
12日で振る予定の相手に2季節先の話なんかするな。
彼の将来の夢は、ちっちゃな料理屋さんを開くことだと話してくれた。私が賛同して、田舎で、犬猫OKがいいな、なんて話をしたら「それも将来の夢にしていこう」っていってくれた。
は?プロポーズ?
なのに突然、別れようって言われた。LINEで。
恋人として続ける気持ちが高まってないって言ったけど、それってどういうことなんだろう。
まだ好きではないけど好きになれそう、と思って付き合ってくれたけど、ダメだったってことかな。だとしたら好きになれなかった原因ってなんだったのかな。
シンプルにもっとレベルの高い相手を探したいと思ったか、やっぱり顔が好みでなかったか、陰鬱な性格が嫌だったか、猫アレルギーなとこか、今の所何%くらい素を出せてる?って聞かれて正直に40%くらいと言ってしまったことか、よっぱらって仕事で病んだ話をしながら泣き出したことか、家がカビ臭かったか、LINEの文が気持ち悪かったか、ペースが遅かったか、平日昼間に猫カフェの行きたい候補3ヶ所のURLを送りつけたことか、、、
考えても分からない。
だから全部「下ネタ大全」のせいにすることにした。
大好きな作家、堀元見さんが執筆した本。昔から下ネタと雑学が好きな私にとって、このふたつのベン図が綺麗に重なる「読むだけでグングン頭が良くなる下ネタ大全」を買わないという選択肢はなかった。開始日と同時に予約したし、特典の「ひどすぎるAVのタイトル当て」動画もニヤニヤして見た。
堀元さんの下ネタへの探究心と叡智を集約した素晴らしい本だった。だからいつでも崇め奉られるように、目線より少し上の高さの棚へ大切に飾っていた。もちろん、不意に彼がうちに来ることになったその日も。
彼が本について、自分から話題に出すことはなかった。けれどしっかりと、さりげなく凝視している瞬間があったことを私は見逃さなかった。翌朝を迎えてそろそろ帰ろうとアウターを羽織ろうとした時だ。
見ても何も突っ込まない、それが真理だったように思う。
後日、「そういえばこの前うち、汚くてごめんね〜!何か違和感だったり変なとこなかったかな??」って聞いたら
「下ネタの本ちょっと気になったよ」と真顔で言われた。「けど、調べたら頭が良くなるって書いてあったからいいかなと思った」と。
「いや、調べたんかーい!」と心の中で突っ込んだ。ならその場で何これ?ってきいてくれてもよっじゃん。後々調べるってかなり気になってだってことだよね。
その後、彼の口から面白そう、とか今度読ませて、とか前向きな言葉はひとつもなく次の話題へといった。
でもまぁよく考えりゃそりゃそうか。アプリで出会った一見清楚っぽい彼女のうちに「下ネタ大全」が嬉々として飾ってあったら。
それまでのその人の人生なんてまだまだ知らない関係。たった数日しか会ってない中で彼は色々なことを考えたのだと思う。
この本を買う、ということは下ネタが大好きなのか??ではとても下品な女なのか??他にも何か変なものを持ってるのではないか???
と、気になる要素をあげ出したらキリがないことは分かる。
その辺りは付き合っていくうちにだんだんと分かることだ。今回はちょっと急でかつインパクトが強かったため、事故のようなものだったと思う。むしろ早めに合わないことがわかって良かったのかもしれない。
本当に振られた理由は分からないけど、「下ネタ大全」が何かしらの要因であったことは間違い無いと思う。
この件を受けて、私の結婚相手の条件に「下ネタ大全」で引かない人という項目が追加された。
これからもうちに大切に飾り、踏絵のようにこの本を使っていこうと思う。
「下ネタ大全」を買うような私を好きでいてくれる人がきっとどこかにいることを信じて。
