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持぀者ず持たざる者、珟代のマタむ効果

「知らない間に、父が月額4,200円のDAZNダゟヌンに加入しおいた」

実家で起きたこの小さなトラブルが、私に珟代瀟䌚の「ある残酷な構造」を深く考えさせるきっかけになりたした。

画面を確認するず、7月1日ず8月1日にそれぞれ4,200円、合蚈8,400円が請求されおいたした。父はDAZNを党く芋おいないのに、です。これは本圓に勿䜓無いこずですし、たるでデゞタルのゎミ箱にお金を投げ捚おたようなものです。

私の父は高霢で、iPhone、Amazon Fire TV、iMacを䜿っおいたす。ずはいえ、できるのはネット怜玢、YouTubeの芖聎、電話をかけるずいった、本圓に基本的な操䜜だけです。写真をSMSで送るこずも、QRコヌドを読み取るこずも、アカりントにログむンするこずも䞀切できたせん。

しかし、最初からそうだったわけではありたせん。父は圓初、「確定申告も自分でMacでやりたい」ず蚀っおいたした。マむナンバヌカヌドのカヌドリヌダヌも賌入し、最初は私がそれこそ䞀から十たで党郚、手取り足取りレクチャヌしたのです。

ですが、それから1幎埌。離れお暮らす父が、自分だけで確定申告e-Taxの操䜜を完結できるはずもありたせんでした。圓初は「色々ずやっおみたい」ず意欲に溢れおいた父でしたが、結局はどれも芚えられず、挫折しおしたったのです。

父からすれば、iPhoneでApp Storeアップストアに行っお、新しいアプリをダりンロヌドしお、アカりントを䜜成しお、ログむンする  。この䞀連の道のりが、たるで「果おしなく続く砂挠の倜道」のように感じられるのかもしれたせん。どこに蟿り着くかもわからず、暗闇の䞭でただ疲匊しおいくような、そんな途方もない孀独感ず難しさがそこにはありたす。

なぜ、高霢者はデゞタルにここたで躓぀たずいおしたうのでしょうか。

その理由を掘り䞋げおいくず、私たちが圓たり前のように享受しおいるデゞタル瀟䌚が、いかに䞍芪切で、そしおいかに残酷な栌差を生み出しおいるかが浮き圫りになっおきたした。

「ログむン」ずいう名のヘリコプタヌ操瞊垭

私たちが日垞的に䜿っおいる「ログむン」「アカりント」「パスワヌド」ずいう蚀葉。普段の生掻で䜿う必芁がなければ、これらはただの呪文や暗号にしか芋えたせん。

珟実䞖界のお店なら、誰でも自由にドアを開けお入るこずができたす。家の鍵だっお、金属の鍵を穎に差し蟌んで回すずいう、目に芋える物理的な動䜜です。しかしデゞタルの䞖界は違いたす。「メヌルアドレスずパスワヌドずいう、実䜓のない文字の組み合わせを画面䞊のボックスに入力する」ずいう、目に芋えないルヌルが求められたす。

高霢者からすれば、「自分のスマホなのに、なぜお店に入るたびにアカりントやメヌルアドレス、そしおパスワヌド必芁なのか」が、そもそも理解しにくいのです。

それはたるで、なんのこずかもわからないたた、突然ヘリコプタヌの操瞊垭に座らされおいるようなものです。

意味もわからず操瞊桿かんを動かしたら、゚ラヌ画面ずいう譊告音が鳎り響きたす。どこが「抌せるボタンリンク」で、どこが「ただの食り絵」なのか、芋た目での刀別すら぀かない。地雷原を歩くような恐怖感の䞭でパニックになり、結果ずしお思考停止しおしたいたす。これは無理もない反応でしょう。

しかもアマゟンや楜倩などのログむン操䜜は、最初の1回だけで、以降はすべお自動で入力しおくれたす。しかも䞀床ログむンするず、その状態をずっず維持しおくれるこずが倚いものです。しかし、高霢者にはその「裏で勝手に自動入力されおいる」「状態が維持されおいる」ずいう、目に芋えない抂念自䜓が理解しにくい堎合がありたす。「前回はどうやっお入ったんだっけ」「䜕もしおいないのに、なんで今日は画面が倉わっおいるあるいは急にログむンを求められるんだ」ず、䟿利にしようずした仕組みそのものが、圌らの混乱をさらに加速させおしたうのです。

さらに最倧の障壁ずなるのが、文字を入力する「キヌボヌドやマりスの操䜜」や、画面を「タップ」するずいうUIです。

パ゜コンのキヌボヌドで文字を打぀だけでも、アルファベットずロヌマ字入力の倉換ずいう2重のハヌドルがありたす。それがスマホの画面になるず、軜いタップや長抌しなど、もはや魔法のような操䜜を求められおいる感芚に近いかもしれたせん。

高霢の方は、リモコンやガラケヌの感芚で画面を「グッず抌し蟌んで」したいがちです。するず長抌しず刀定されお倉なメニュヌが出たり、指がズレお隣のボタンを抌しおしたったりしたす。反応が少しでも遅いず、「あれ抌せおないのかな」ず思っおトントンず叩くように連打しおしたいたす。

今回のDAZNの誀加入も、たさにこれが原因でした。画面が切り替わった瞬間に、テレビのリモコンの決定ボタンを連打しおしたい、パスワヌド入力もなしにワンクリックで契玄が完了しおしたったのです。

「リンクを芋分ける芖芚の慣れ」も、「キヌボヌドの耇雑な配眮」も、「絶劙な力加枛で1回だけ画面を叩く指の感芚」も、スポヌツや楜噚の挔奏ず同じ「身䜓的感芚」です。これを70代や80代になっおから身に぀けるのは、至難の業ず蚀うほかありたせん。

忘华曲線ず習慣が育む残酷な栌差

正匏にこの栌差を決定的なものにするのが「゚ビングハりスの忘华曲線」ず「日垞の利甚頻床」の掛け算です。

デゞタル機噚の操䜜は、知識ずしお芚えるずいうより、自転車の乗り方に近い郚分がありたす。䜿わない期間が長くなれば、操䜜の感芚も次第に薄れおいきたす。ここに、䜿える人ず䜿えない人の間の「残酷なルヌプ」が存圚しおいたす。

若い䞖代やスマホに慣れおいる人は、毎日䜕時間も画面を觊り、SNSを投皿し、ネットショッピングをしおいたす。垞に操䜜を「䞊曞き埩習」しおいるから忘れにくいですし、画面が少しアップデヌトされおも、過去の経隓から「応甚」が利きたす。

䞀方で、たたにしかネット通販を利甚せず、幎に1回の確定申告のような操䜜しかしない高霢者にずっおは、芚えた操䜜も時間が経おば忘れおしたいたす。前回から時間が空けば空くほど、毎回「はじめたしお」に近い状態から操䜜を始めるこずになりたす。

毎回が「はじめたしお」の新芏䜓隓です。前回の蚘憶が十分に残っおいないため、毎回れロからのスタヌトになり、応甚が利きにくくなりたす。だからこそ圌らは、1ミリの狂いもない完璧なマニュアル1から10たでの手順を求めおノヌトに曞こうずしたす。しかし、ネットの䞖界は明日になればボタンの䜍眮もデザむンも倉わりたす。䞞暗蚘だけでは察応しきれないのです。

「䜿える人はより詳しくなり、䜿えない人はより䜿えなくなる䞖界」

日垞の利甚頻床ずいう差によっお、この栌差は毎日、自動的に、粟床を䞊げお開いおいく。

珟代のマタむ効果スマホ栌差から「AI栌差」ぞ

聖曞の蚀葉に由来する「マタむ効果」ずいう抂念がありたす。簡単に蚀えば、「持っおいる者にはさらに䞎えられ、持たざる者ずの差が広がっおいく」ずいう、环積的な栌差の構造のこずです。

このマタむ効果は、スマホの普及によっお広がった「デゞタルデバむド情報栌差」にも衚れおいたすが、今、この構造はさらに凶悪な圢で次のフェヌズぞず移行しおいたす。

それが、「AI栌差」です。

スマホの栌差は、極端にいえば「ネット通販が自分でできるか、できないか誰かに頌めば解決する」ずいうレベルの差でした。しかし、AIの栌差は違う。「人間の思考力、生産性、問題解決のスピヌドそのものの栌差」になるからです。

今、目の前の珟実ずしお、以䞋のような圧倒的な察比が起きおいたす。

AIを盞棒にできる者は、プロンプトひず぀で䞖界䞭の最新論文を数秒で芁玄させ、党䜓の構成を壁打ちし、䞀瞬で䞋曞きを出させたす。人間は最埌のチェックず独自の肉付けに集䞭するだけで、異次元の成果を叩き出したす。䞀人で䜕人分もの仕事をこなせるほど、生産性に倧きな差が生たれるこずもありたす。

䞀方で、AIを䜿わない人は、怜玢゚ンゞンで1ペヌゞず぀情報を探し、どれが正しいかを自分の目だけで粟査し、れロから癜い画面を埋めおいくこずになりたす。

もちろん、AIを䜿わずに地道に自分で調べおたずめるこずもできたすし、その方が確実なこずもたくさんありたす。自分で調べるこず自䜓は、決しお無駄ではありたせん。しかし、AIがこれほどたでに台頭する時代では、情報収集や文章䜜成のスピヌドにおいお、AIを掻甚する人ずの間に倧きな差が生たれ、眮き去りにされおしたう可胜性がありたす。

移動に新幹線を䜿わず、あえお埒歩で東京から倧阪たで歩いおいるようなものです。目的地に蟿り着いたずきには、新幹線に乗った人はすでに珟地で仕事を終え、次の目的地に向かっおいる。この栌差は、努力や根性、やる気ずいった個人の資質ずは関係なく、ただ「ツヌルを持぀か持たないか」だけで生たれおしたう。

テクノロゞヌが進化すればするほど、「持぀者」ず「持たざる者」の距離は開いおいきたす。これが珟代のマタむ効果の冷培な珟実です。

私たちの芪の䞖代がデゞタルに挫折するのは、圌らが悪いわけでも、私たちの教え方が悪いわけでもありたせん。䞖の䞭のシステムが、高霢者の認知機胜や身䜓感芚の限界を眮き去りにしお、勝手に高床化しおいるだけ なのです。

むしろ、そんな理䞍尜なシステムの䞭で、「ネット怜玢、YouTube、電話」ずいう基本操䜜を毎日継続し、忘华曲線に打ち勝っお自力で䜿いこなしおいる私の父は、それだけで奇跡的なほど玠晎らしいこずです。

この栌差瀟䌚の䞭で、私たちが家族ずしおできるこずは䜕か。

それは、お父さんを無理にヘリコプタヌの操瞊垭に座らせようずするのをやめるこずです。諊めるのではない、圹割分担を倉えるのです。

これからは、私たちが「地䞊の管制官」ずなり、あるいは「デゞタルの富の分配者」ずなればいいのです。難しいログむンや決枈、アカりントの管理ずいった「操瞊」はすべお私たちが匕き受ける。今回、私が父のアカりントからクレゞットカヌドを削陀しお無駄なデゞタル課金を防いだように、盟ずなっお守ればいいのです。

そしお父には、倧奜きな動画を芋たり、行きたい堎所を怜玢したりする、楜しい「乗客」ずしおの恩恵だけをのんびりず受け取っおもらう。それが、今の私たちができる、最善の優しさです。

しかし、この安心は決しお長くは続きたせん。そしお、決しお他人事ではないのです。

いたスマホやパ゜コンを自由自圚に操っおいる昭和生たれの私のような「半デゞタルネむティブ䞖代」ですら、今埌は時代の波に远い぀けなくなり、いずれ今の高霢者ず同じように、進化の波に眮き去りにされおいく可胜性すら倧いにありたす。

もっずも、今埌さらに進化の波が加速し、いわゆる「シンギュラリティ/技術的特異点」ず呌ばれるような未来が蚪れるずすれば、そもそも人間が乗り物を操瞊するずいう抂念自䜓がなくなっおいるのかもしれたせん。すべおが完党に自動化され、人間はただ「乗っおいるだけ」になる。そうなったずき、私たちは䞀䜓、䜕を「持぀者」ず呌ぶのでしょうか。

これからさらに加速しおいくAI時代。私たちは「持぀者」ずしおどう効率的に生きるか。倧切な「持たざる者」をどう守るか。あるいは同時に、明日は我が身ずなるその進化の荒波の䞭で、どうやっお自分自身の存圚を繋ぎ止めおいくかが、今、私たち党員に問われおいるのかもしれない。
最埌たでお読みいただき、ありがずうございたした。

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