見出し画像

【8月】決断する人・支える人

第1話 決断する人
 
 
猛暑が続いている。
60年前の私が子どもの頃は、気温が30度を超えることなど、なかったように記憶している。
 
 
天気予報は、今では、雨雲レーダーで正確に天気が予想されている。
60年前までは「天気予報」はあまり当たらなかった。
 
私が小学五年生の頃、夏休みの自由研究で天気予報が当たるかはずれるかの研究をしたことがあった。
 
研究名は「天気の予報と実際」
40日間の記録でわかったことは、当時の「天気予報」が実際に当たった確率は25%だった。
 
つまり「天気予報」を信じない方が当たるという結果だった。
この自由研究は、市の「自由研究の部」で賞をもらったが、父のアイデアだったので、私にそれほど感動はなかった。
 
 

 
 
私が小学校に勤務し始めた頃の、古い話だ。
運動会当日の朝。
雨が降ったりやんだりで、開催の判断が難しかったことがあった。
 
当時は今と違って、開催の判断はそれぞれの学校の校長がする。
職員たちも朝早くから集まっていた。
 
校長は、朝の6時までに、今日開催するかどうかを決めなくてはならなかった。
保護者のお弁当の作り具合があったからだ。
 
天気予報では「曇りときどき雨」
なんとも頼りない予報。
 
校長は、ずっと校長室から空をうらめしそうに眺めていた。
近隣の小学校では、早々と「中止」を決めた学校もある。
 
職員たちは校長の判断を待っていた。
中止や延期なら、大急ぎで保護者に「連絡網」で知らせなければならない。
スマホもメールもなかった時代だ。
 
何かに気が付いたように校長は、電話を取った。
学校から西の方角に位置する島の漁師に電話をかけた。
校長は若いころに島に赴任した。
その時に知り合った漁師らしい。
 
天気は西から東へと移動している。
漁師は海の水温や波や雲の流れ、遠くの島の見え方、鳥たちの動きで天気を読む。
 
しばらくしてその漁師から電話があった。
「そっちは、9時から晴れるばい」
 
校長は「開催」と決めた。
「連絡網」で「本日開催」が伝えられる。
 
外に出ると、まだ小雨が降っている。
この状況では誰もが中止だと思うだろう。
ところが、校長の「開催します」の号令。
 
私たち職員と早く登校してきた6年生たちで、小雨の中、雑巾を手に、運動場の水たまりを吸い取った。
 
雑巾で吸い取った泥水をバケツに絞る。
この繰り返し。
 
8時45分、入場行進のため、全児童が入場門に並んだ。
保護者はテントの中にいたり、傘をさして入場を待っていた。
 
9時ちょうど、予定通りに入場行進の曲が流れた。
本当に9時になったら雨がやんだ。
雲の切れ間から青空が見えてきた。
 
「おお」と空を見上げる保護者。
子どもたちの楽しみにしていた運動会が、始まった。
 
 
 
あの時代「気象庁の運動会が、雨で流れた」と聞いたことがある。
 
 
(完)
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
【特典】第2話 支える人
 
息子夫婦は、田舎の古い家に暮らしている。
子どもはいない。
 
高く青い山並み、朝もやの茶畑、
遠くで鳴くニワトリの声、畑の匂い、
駆け抜ける子どもたちのランドセルの群れ、
土間で寝そべる柴犬、みそ汁の湯気。
 
近くにコンビニもスーパーもないが、
ふたりは、ここの暮らしが気に入っているようだ。
 

ここから先は

584字 / 2画像

メンバーシップ ¥ 500 /月

自由気ままに、投稿は不定期です。特典記事もまだ少ないです。特典は、第2話目をメンバーだけが読める。た…

休憩室プラン

¥500 / 月
1ヶ月無料