人間、極限の環境でも酒への執念が凄すぎる件
以前、収監されていたニューハーフの方から刑務所の話を聞いた。
一番衝撃だったのは罪の話ではない。
酒の話である。
まず驚いたのが、ニューハーフは他の受刑者とは別で生活し、基本的に独居房。工場作業ではなく、部屋で内職をしていたそうだ。
そして、その方が収監されていた刑務所は当時エアコンがなく、冬は保温水筒が貸与されていたらしい。
普通なら「寒いなぁ」で終わる話だ。
しかし、人類はそこから進化する。
保温水筒にフレッシュオレンジジュース。
そこへ親指ほどの大きさにちぎったパンを投入。
約一週間放置。
すると、微炭酸でスパークリングワインのような酒が完成するらしい。
しかも最初から成功したわけではない。
パンが多いとパン臭くなる。
少ないと発酵が弱い。
試行錯誤を繰り返した結果、
「180mlのフレッシュオレンジジュースに対して、親指サイズのパンがベスト」
という黄金比にたどり着いたそうだ。
完全に研究者である。
いや、もう杜氏である。
しかし、このレシピには重大な欠点があった。
実は、この酒造りには絶対条件がある。
・独居房であること
・部屋で一人で食事をすること
・保温水筒が貸与されていること
つまり、普通の受刑者ではまず再現できない。
「受刑者だけが知る裏技」かと思ったら、
実際は極めて限定された受刑者だけが挑戦できる超高難度コンテンツだったのである。
ゲームで言えば、
「隠しキャラで二周目限定。特定ルートを通過しないと解放されません。」
くらい条件が厳しい。
聞けば聞くほど、
刑務所の話というより、
刑務所版『きょうの料理』である。
人間は本当に面白い。
自由を奪われても、
酒だけは諦めない。
その執念だけは、塀の中でも発酵し続けるらしい。
