見出し画像

🌙光の行方⑥ 春の歌が、光を呼ぶとき

この物語は、チュチュ・テイルの世界を旅する記録です。
シルエットで描かれた猫たちや動物たちが暮らす、やさしい世界✨
白いうさぎの旅人 エトワール の旅日記として綴っています。

はじめての方は、ぜひ固定記事からご覧ください🌙


小さな芽に、たしかな光が宿るのを見たぼくは、このフローラの森に届くやさしい光が、まだどこかにあるのかもしれない——

そんなふうに思いながら、ゆっくりと森の奥へと歩いていきました。

やわらかな風が、花のあいだを通り抜けていきます。

色とりどりの花が森いっぱいに咲いていて、歩くたびにふわりとやさしい香りが広がっていきました。

しばらく歩いていると——

どこからか、楽しそうな声が聞こえてきました。

「ピピ〜、それちょっと甘そうだよ〜」

「ほんと?あとで味見する♪ ナッツ、かごに入れるね!」

ぼくは、その声のするほうへ少し距離を保ったまま、視線を向けました。

そこには、とんがり帽子をかぶって大きなかごを抱えたリスと、

赤い実をくわえてパタパタと翼を広げる、長い尾が美しい鳥がいました。

木の実を集める2匹

リスのナッツは、ころんとした体で大事そうに木の実やベリーを抱えています。

鳥のピピは、歌うように声を弾ませながら、花から花へと軽やかに飛び回っていました。

そのとき——

ピピが、ふわりと空中で止まってこちらを見ました。

「ねえ、旅の人?」

「“春のめぐみ祭”、見に来たの?」

ぼくは、少し驚きながら首をかしげます。

「春のめぐみ祭……?」

2匹と旅人エトワール

「そう!」

ピピはくるりと一回転して、にっと笑いました。

「もうすぐ始まるんだ」

「森のみんなで、木の実とかベリーとか、蜜を集めてさ」

「やさしい光を届ける日!」

「ピピ、それ説明ちょっと長いよ〜」

ナッツが、やわらかく笑いながら言います。

「でもね〜、ほんとにきれいなんだよ〜」

「ピピの歌で、森が光るんだ〜」

ピピは、ぱっと羽を広げて、そのまま歌いながら空を舞いはじめました。

「ひらいて ひらいて 春のめぐみの日!」

くるくると、軽やかに。

風をまとって、楽しそうに飛び回ります。

その歌にあわせるように、空気の中にやわらかな光がふわりと集まりはじめました。

それは、どこかあたたかくてやさしい気配をまとった光でした。

やがて、

足元の小さな芽に、そっと触れました。

やさしい光

その瞬間——

芽の中心が、ほんの少しだけやわらかく光ります。

それを合図にするように、あちらでも、こちらでも、小さな光が芽や花へと静かに降りていきました。

ぽつ、ぽつ、と。

まるでやさしさがほどけていくように、花がひらいていきます。

小さな葉っぱに宿る光

そのたびに、ふわりとやさしい香りが広がって、森全体がやわらかな光に包まれていきました。

「ね、きれいでしょ?」

ピピが空をくるりと回りながら言いました。

ナッツは、やさしくうなずきました。

「“春のめぐみ祭”、楽しみでしょ〜?」

「まだお祭りの準備中だけどね〜」

ぼくは小さくうなずきながら、胸の奥がほんの少しだけあたたかくなるのを感じていました。

ふと、

さっき出会った、あの小さな芽のことが頭をよぎります。

小さな芽

あの光も、もしかしたら——

ぼくはその続きを確かめたくて、もう少しだけこの森にとどまることにしました。

フローラの森

🌙エトワールの旅をたどる

← 前のお話  

→ 次のお話


🌸 はじめての方へ

👉 チュチュ・テイルの世界はこちら

チュチュ・テイルの地図

いいなと思ったら応援しよう!