「藻場」という場
水族館が好きという方は多いだろう。
私自身、水族館を訪れるのが大好きである。
宝石のように色とりどりの魚が泳ぐサンゴ礁の水槽、この世の生き物とは思えないエキゾティックな生き物にあふれたジャングル水槽などなど派手で物珍しい展示が観る人の心を奪う。
そんな中でひっそりと、そして地味にも見える展示がある。それが藻場やアマモ場の水槽だ。今回は少しだけそんな藻場の話をしてみようと思う。
そもそも、藻場とは海藻や海草の群落のことを指す。(海草の場合アマモ場とも)
でも単なる海藻の集まりではない。複雑な構造に外敵から身を隠すため、葉上に付着した珪藻を食べるため、安定した底質に身を落ち着けるため、海藻を基盤として卵を産みつけるため…などなどさまざまな理由から多くの生き物が棲息している。いわば、海のマンションである!
水族館の水槽は青い無機質な背景があるだけの場合も少なくない。このような水槽だと、どうしても生簀を見てるようで味気ない。がしかし、藻場があるだけで、そこにいる生物たちの生きている姿への解像度がグッと上がる気がしてくる。

私はついつい、多分海の中の彼らもこうやって生活してるのかなー、なんて思いながら水槽を眺めてしまう。不幸なことに温暖化の影響で日本本土でもサンゴ礁が見られる場所が増えているというが、やはり日本の沿岸の風景は藻場が中心であってほしい。あと、サンゴ礁で生きてるような南方系の魚より、藻場で生きてる魚たちの方が我々の口には馴染みがあって美味しい。
さてこんな藻場だが日本では、高度経済成長期に沿岸開発、化学物質の海洋への流出、さらには近年の温暖化などが原因で減少傾向にあるとされている。(藻場があった場所へのサンゴの侵入について述べた論文、Kumagai et al. 2018, PNASは私にとって衝撃的であった)
最近はブルーカーボン(海藻・海草の炭素貯留機能)への関心の高まりから再注目され始めているが、これらの研究は単なる藻場面積やバイオマスの評価に過ぎないことが大半である。ただ、本来の藻場の重要な役割は、やはり生き物の棲家としての機能だろう。そのためには、藻場の生物多様性や藻場を構成する藻類そのものの多様性に着目すべきだろう。多くの人が藻場とそこに棲む生き物たちに興味を持って、保全活動がより適切に進められたらと思う。そして、私も研究者サイドから市民科学に訴えられるような研究成果をあげられたら良いのになあ、なんて今日も考えている。
余談
私の研究テーマが「藻場の生物多様性と生態系多機能性の評価」なのでこんな記事を書いております。生態学会や海洋学会など関連しそうな学会に顔を出しておりますので、まだまだ拙い研究内容ですが温かく見守ってくださればと思います。
あと、参考程度に第73回生態学会大会で出したポスターの要旨も下に貼っつけてありますのでよろしければ。
