教師の読書ノート📚#13『スポーツメンタルトレーニング』|「切り替えよう」と言われて、切り替えられるだろうか。
#13
「最終決定版!スポーツメンタルトレーニング」
笠原彰 著
2026.8.
「切り替えよう」と言われて、切り替えられるだろうか
サッカーの練習試合で、ハーフタイムに選手たちへ声をかける。
失点して、少しチームの雰囲気が悪くなっている。
そんなとき、私はよく、
「切り替えよう」
と声をかけます。
「勇気をもってプレーしよう」
「楽しんでいこう」
という言葉をかけることもあります。
選手たちには、失点を引きずらず、自分たちから声を出して、チームの雰囲気を変えてほしいと思っています。
でも、そんな選手たちの様子を見ながら、少しずつ考えるようになりました。
「切り替えよう」と言われて、本当に切り替えられるのだろうか。
「勇気をもって」と言われて、勇気を出せるのだろうか。
「楽しんで」と言われて、楽しめるのだろうか。
もちろん、こうした言葉が必要な場面もあります。
ただ、選手たちが自分たちでチームの雰囲気を変え、自分の力を発揮できるようになるためには、もう少し違った関わり方があるのではないか。
そんなことを考え、スポーツに関する本を読んでみようと思いました。
私は、部活動を通して、生徒たちのこれからの人生が少しでもより良いものになってほしいと思っています。
だからこそ、スポーツの技術や戦術だけではなく、スポーツを通して身につく考え方や、自分自身を整える方法についても学んでみたい。
そんな思いから、この本を手に取りました。
1.フローやメンタルトレーニングを、もっと具体的に知りたい
こちらの本の前に手に取ったのが、『スポーツが教えてくれる人生という試合の歩み方』でした。
この本を読んで、私は「フロー」や「メンタルトレーニング」に興味を持ちました。
自分の力を発揮しやすい状態である「フロー」。
では、実際にどうすれば、そうした状態に近づくことができるのでしょうか。
そこで次に手に取ったのが、今回の『最終決定版!誰でもできるスポーツメンタルトレーニング』でした。
今回は、メンタルトレーニングについて、より具体的に学んでみたいと思って読み始めました。
そして、読み進めとすぐに気づきがありました。
「思考と行動を変えることで、感情や身体反応をコントロールする」
という考え方でした。
2.メンタルトレーニングは「気持ちを変えること」ではなかった
メンタルトレーニングというと、私はこれまで「気持ちを強くすること」というイメージを漠然と持っていました。
緊張しないようにする。
不安にならないようにする。
落ち着いてプレーする。
そんなふうに、感情そのものを整えることを考えていたように思います。
しかし、本書では、メンタルトレーニングは「感情」を変えることではなく、「思考」と「行動」を変えることによって「感情」や「身体反応」をコントロールしていくものとして説明されています。
これは、私にとって大きな気づきでした。
「落ち着こう」
「冷静になろう」
と思うだけで、緊張や不安がなくなるわけではありません。
でも、
「今、自分は何をするのか」
に目を向けることはできます。
感情を直接変えようとするのではなく、まず思考や行動を変えていく。
メンタルトレーニングに対する見方が、少し変わりました。
3.フローや集中につながるのは、「行動」に焦点を当てること
特に印象に残ったのが、フローや集中につなげるために、「行動」に焦点を当てるという考え方です。
本書では、結果目標と行動目標が紹介されています。
「試合に勝つ」「得点する」といった結果目標は、短期的なやる気を高めることができます。
一方で、競技直前や競技中に結果を強く意識すると、不安や雑念が増え、目の前のことに集中しにくくなることもあります。
そこで大切になるのが、行動目標です。
結果を出すために、今、自分は何をするのか。
そこに意識を向けます。
本書では、行動目標に焦点を当てることで、不安が強いときにも冷静になりやすくなるとされています。
さらに、フローをつくるためには「挑戦(challenge)と技能(skill)のバランス」を調整することも紹介されています。
今の自分たちにとって、少し挑戦できるけれど、決して無理ではない。
そんな行動目標を設定する。
この考え方を知って、私は「集中しよう」という言葉について、あらためて考えました。
集中することを直接求めるのではなく、集中しているときに、自分は何をしているのか。
そこまで具体的に考えることが、フローや集中につながっていくようです。
4.「切り替えよう」を、具体的な行動につなげてみる
ここまで読んで、自分のサッカーの指導を振り返りました。
私は、選手たちに「切り替えよう」「勇気をもって」「楽しんで」と声をかけます。
こうした感情への声かけを、なくす必要はないと思っています。
選手たちの気持ちに働きかける言葉も、やっぱり大切です。
ただ、その言葉だけで終わらせない。
「切り替えよう。では、ここから何をする?」
と考える。
その「何をする?」には、その時期にチームとして取り組んでいることや、練習で意識してきたことを入れていく。
例えば、
「ここからは、まず自分たちから声を出そう」
「次のプレーでは、まず前を向いてボールを受けよう」
など。
「勇気をもってプレーする」という気持ちを求めるだけではなく、
「勇気をもってプレーしているとき、自分たちは具体的に何をしているのか」
まで考えておく。
これからは、CSバランスも意識しながら、そのときのチームに合った行動目標を設定してみたいと思います。
5.教室でも、「切り替えましょう」を具体的な行動にしてみる
そして、この気づきは学校の授業でも意識するといいなと思いました。
学校の授業でも、私は「切り替えましょう」「集中しましょう」と自分自身も言うことがありますし、他の先生の授業でも聞くことがあります。
でも、「切り替える」「集中する」とは、具体的にはどんな行動なのでしょうか。
例えば、
「ノートを書きましょう」
と言うよりも、
「今から3分で、実験結果を○○までノートにまとめましょう」
と伝える。
「黒板を見ましょう」と言うよりも、
「黒板の右側にある実験結果を見て、自分の結果と比べてみましょう」
と伝える。
「聞いてー」と声をかけるだけでは、何をすれば「聞く」ことになるのか、子どもには曖昧かもしれません。
それよりも、
「おへそを前に向けましょう」
「私と目を合わせてください」
のように、具体的な行動を伝える。
これまでも、こうした具体的な声かけはしてきました。
ただ、今回の本を読んだことで、こうした言葉がなぜ大切なのかを、自分の中で少し整理することができました。
感情や状態を変えようとする言葉と、実際の行動を変える言葉。
この二つを意識して使い分けることで、生徒が「次に何をすればいいのか」を、よりわかりやすく伝えられる、そして行動の修正が、感情や身体反応の修正につながり、話が聞ける、集中しているという状態につながるのではないかと思います。
◆「気持ちを変える」より、「次の行動をつくる」
今回、この本を読んで一番大きかったのは、メンタルトレーニングに対する見方が変わったことです。
メンタルを整えるというと、私もそうでしたが、どうしても「気持ちを強くする」「緊張しないようにする」と考えてしまう人も多いのではないでしょうか。
でも、緊張そのものをゼロにする必要はありません。
本書でも、適度な緊張はフローに入る条件になり得ること、そして緊張をどう解釈するかが重要であることが示されています。
大切なのは、今ある感情を無理やり変えようとすることではなく、その状態の中で、自分が次に何をするのかに意識を向けることなのだと思います。
だから、これからは、
「切り替えよう。そして、ここから何をする?」
を大切にしたい。
サッカーでも、授業でも。
「集中しよう」「頑張ろう」と声をかけるだけではなく、その気持ちを具体的な行動につなげる。
そして、いつか選手たち自身が、
「今、チームに必要なのは何か」
「自分は次に何をするのか」
を考え、自分たちで声を出して、チームの状態を変えられるようになってほしいと思っています。
スポーツを通して学べることは、ピッチの中だけにあるものではないと思います。
自分の状態を知り、考え、行動を選ぶ。
そうした力は、学校生活にも、その先の人生にもつながっていくはずです。
だからこそ、私はこれからもスポーツから学びたい。
そして、そこで得た学びを、選手たちとの関わりや、教師としての日々の仕事にも生かしていきたいと思います。
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