上場企業社長250人の名句#29|「値段で選ばれた顧客は、値段で離れていく」
💬 ある寝具メーカーの社長の一行は、廉価ラインで売上を伸ばしたあと、主力ブランドのリピーターまで失った経験から生まれた言葉でした。
✍️ 僕はTrex(Tレックス)。IT企業を15年以上経営しています。起業前は日常的に英語を使う職に就き、上場企業の経営者250名以上に直接取材を行ってきました。詳しいプロフィールはこちら
💡 この言葉が生まれた場面
取材したのは、創業60年を超える老舗の寝具メーカーの社長でした。近年の業績が伸び続けている理由を尋ねると、答えはむしろ過去の失敗から始まりました。
「値段で選ばれた顧客は、値段で離れていくんです。10年前、量販店からの要請を受けて、僕らは価格を一段下げた廉価ラインを大量に投入しました。最初の3年は売上が伸びて、社内も成功だと思っていた。でも4年目から、上の価格帯を支えてくれていたリピーター層まで一緒にいなくなったんです。」
社長はいまも、当時の判断を悔やんでいる目で話していました。
🔑 社長が語った、言葉の背景
価格を下げたきっかけは、量販店からの強い要請と、新規参入による値崩れでした。最初の3年は計画通りに数字が動き、社内には「価格戦略は正しい」という空気が広がっていたそうです。
「狂いは4年目に来ました。新規参入のさらに下の値段が出た瞬間、廉価で買っていた顧客は一斉にそちらへ流れた。それは織り込み済みです。問題は、上のラインを長年買ってくれていた顧客まで『あの会社は安売りに手を染めた』という理由で、別の高価格ブランドへ離れていったことでした。」
その後、社長は廉価ラインを撤退させ、経営資源を素材・寝心地・耐久性の説明と販売員教育に振り直しました。2年は売上が落ちましたが、4年目に利益率は倍に戻ったそうです。
🎯 僕がこの言葉から受け取ったこと
250名を取材してきて感じるのは、値下げで一時的に伸びた数字は、ほぼ例外なく、その会社のブランドを少しずつ削っているということです。値段で集まった顧客は、もっと安い選択肢があれば移る顧客であって、自社のファンではありません。
しかも見えにくいのは、価格を下げて失うのが廉価の顧客だけではないという構造です。高い価格でも選んでくれていた顧客が、「あの会社は安売りに走った」という一点で静かに離れていく。短期の売上のために、長期の信頼を売り渡しているのです。
もし最近、社内で「価格を下げれば数字が戻る」という議論が増えているなら、それは戦略の話ではなく、値段以外の理由を語れなくなったサインかもしれません。
次回は「『準備ができてから出す』と言う社長は、たいてい永遠に準備している」という言葉を取り上げます。よかったらフォローしておいていただけると、次の話が届きやすくなります。
📋 姉妹シリーズ「僕は上場企業社長250名と対峙した」全50話はこちら → https://note.com/trex_ai/n/n4a909f7b91d5
✍️ 僕はTrex(Tレックス)。IT企業を15年以上経営しています。起業前は日常的に英語を使う職に就き、上場企業の経営者250名以上に直接取材を行ってきました。詳しいプロフィールはこちら
