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第三者所有物没収事件

こんにちは、

 今日は、密輸の罪で有罪判決を受けた被告人の船を没収するのみならず、第三者の貨物も没収できるのかどうかが問題となった最大判昭和37年11月28日を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 中村数一と俊弘は、韓国向けに衣料品などを密輸出する計画を立てていました。昭和29年10月5日に、2人は所轄税関の輸出免許を受けないまま、大阪港尻無川岸壁で、機帆船大栄丸に410万円相当の貨物を積み込み、博多沖合の島付近で、韓国向けの漁船蛭子丸に貨物を積み替えようとしていました。ところが、途中の下関付近の海上で時化にあったため、積み替えができませんでした。大栄丸が引き返して門司港方面に向けて航行中に、門司水上警察が大栄丸を発見し、停船させたうえで船内を捜索したところ、荷送り状も携帯せず、朝鮮近海の海図などを所持していたので、2人を密輸出の疑いで逮捕し、後に検察によって起訴されました。

2 最高裁判所大法廷判決

 原審は、2人を関税法上の密輸出未遂罪で有罪とし、数一に懲役6か月執行猶予3年、俊弘に懲役4カ月執行猶予3年、船と積載貨物の没収を言い渡しました。最高裁判所大法廷は次のような理由で、原審を破棄しました。

主文:原判決及び第一審判決を破棄する。被告人数一を懲役6月、被告人俊弘を懲役4月に各処する。ただし、本裁判確定の日から3年間右各刑の執行を猶予する。福岡地方検察庁小倉支部の保管に係る機帆船大栄丸はこれを没収する。

 関税法118条1項の規定による没収は、同項所定の犯罪に関係ある船舶、貨物等で同項但書に該当しないものにつき、被告人の所有に属すると否とを問わず、その所有権を剥奪して国庫に帰属せしめる処分であって、被告人以外の第三者が所有者である場合においても、被告人に対する附加刑としての没収の言渡により、当該第三者の所有権剥奪の効果を生ずる趣旨であると解するのが相当である。 
 しかし、第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であつて、憲法の容認しないところであるといわなければならない。けだし、憲法29条1項は、財産権は、これを侵してはならないと規定し、また同31条は、何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられないと規定しているが、前記第三者の所有物の没収は、被告人に対する附加刑として言い渡され、その刑事処分の効果が第三者に及ぶものであるから、所有物を没収せられる第三者についても、告知、弁解、防禦の機会を与えることが必要であって、これなくして第三者の所有物を没収することは、適正な法律手続によらないで、財産権を侵害する制裁を科するに外ならないからである。そして、このことは、右第三者に、事後においていかなる権利救済の方法が認められるかということとは、別個の問題である。然るに、関税法118条1項は、同項所定の犯罪に関係ある船舶、貨物等が被告人以外の第三者の所有に属する場合においてもこれを没収する旨規定しながら、その所有者たる第三者に対し、告知、弁解、防禦の機会を与えるべきことを定めておらず、また刑訴法その他の法令においても、何らかかる手続に関する規定を設けていないのである。従って、前記関税法118条1項によつて第三者の所有物を没収することは、憲法31条、29条に違反するものと断ぜざるをえない。 
 そして、かかる没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であっても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは、当然である。のみならず、被告人としても没収に係る物の占有権を剥奪され、またはこれが使用、収益をなしえない状態におかれ、更には所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らかであるから、上告によりこれが救済を求めることができるものと解すべきである。これと矛盾する昭和35年10月19日当裁判所大法廷言渡の判例は、これを変更するを相当と認める。 
 本件につきこれを見るに、没収に係る貨物が被告人以外の第三者の所有に係るものであることは、原審の確定するところであるから、前述の理由により本件貨物の没収の言渡は違憲であつて、この点に関する論旨は、結局理由あるに帰し、原判決および第一審判決は、この点において破棄を免れない。 
 原審の是認する第一審判決の確定した事実に法律を適用すると、被告人らの同判示所為は、関税法111条2項、1項、刑法60条に該当するから、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期範囲内で被告人数一を懲役6月に、同俊弘を懲役4月に各処し、情状により刑法25条1項を適用して本裁判確定の日から3年間右各刑の執行を猶予し、主文掲記の機帆船大栄丸は、本件犯行の用に供した船舶であつて、被告人俊弘の所有に係るものであるから、関税法118条1項本文により、その換価代金43万1000円を没収することとする。

3 応急措置法の成立

 今回のケースで裁判所は、関税法第118条第1項の規定により第三者の所有物を没収することは、憲法第31条、第29条に違反するが、没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であっても、これを違憲であるとして上告することができる、としました。
 この最高裁判所による違憲判決を受けて、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法が成立し、刑事事件において被告人に対する附加刑として第三者の所有物を没収する場合には、事前にその第三者に対し被告事件に参加する機会を与え、参加が許された第三者には、没収に関し、意見陳述、立証、上訴等につき原則として被告人と同一の訴訟上の権利が認められているということも、知っておくべきでしょうね。

 では、今日はこの辺で、また。


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