名もなき砂漠 【アカリウムお題ガチャ】ショートショート
どうも、皆様こんばんは。
今週もお疲れ様です。灯の旅人です♪
本日もやっていきました…。
参加したい方はこちらから(*´▽`*)
本日もノーマルモードになります。
#アカリウムお題ガチャ
【サンのお題ガチャ】
ジャンル:異世界転生
舞台:双子の太陽が沈む砂漠
スパイス:主人公以外は全員名前を持たない
形式:3000字程度のショートショート
( *´艸`)という事で異世界転生ものとの事でしっかりと書きます。
しかしまあ結構中身重いかも2508文字。挿絵1枚です。
どうぞ。
目を覚ましたとき、最初に見えたのは太陽だった。
二つあった。
ひとつは白く、ひとつは赤い。
どちらも空の高いところに浮かび、乾いた大地を容赦なく照らしていた。
僕はしばらく空を見ていた。
暑い。
喉が渇いている。
背中には細かな砂が張りついていた。
そして、死んだはずだった。
そこまで思い出して、ようやく身体を起こした。
最後に覚えているのは、雨の日の交差点だった。
信号。
ライト。
誰かの声。
それから、何もない。
少なくとも、砂漠ではなかった。
「起きた」
声がした。
振り向く。
布を頭から被った人が立っていた。
男なのか女なのか分からない。
年齢も分からなかった。
その後ろには数人いる。
全員が同じような服を着ていた。
「ここは?」
僕が聞く。
彼らは顔を見合わせた。
「ここ」
一人が答えた。
「だから、ここってどこ?」
また顔を見合わせる。
「砂のある場所」
間違ってはいない。
けれど、僕が欲しい答えではなかった。
「国は?」
「くに?」
「町は?」
「まち?」
言葉そのものを知らないようだった。
僕は立ち上がった。
遠くまで砂丘が続いている。
建物らしいものはない。
ただ、ところどころ黒い柱のようなものが砂から突き出していた。
近づいてみると、それは朽ちた石だった。
文字らしきものが刻まれている。
だが半分以上が削れていた。
「君たちは?」
僕は聞いた。
「名前は?」
誰も答えなかった。
「名前。呼ばれるもの。僕なら――」
自分の名前を口にした。
久しぶりに聞いた気がした。
いや。
ついさっきまで、その名前で生きていたはずなのに。
彼らは不思議そうな顔をする。
「それは何?」
「何って……名前」
「なぜ必要?」
僕は言葉に詰まった。
名前が必要な理由なんて、考えたこともなかった。
自分が自分であるため。
人に呼んでもらうため。
記録するため。
忘れないため。
最後の言葉が、妙に引っかかった。
「みんな、名前がないのか?」
「ない」
「昔から?」
彼らは首を傾げた。
「昔?」
その日、僕は彼らと歩いた。
行くあてがあるのかと思ったが、そうでもないらしい。
水のある場所を探しながら、砂漠を移動しているだけだった。
誰かを呼ぶときは、指を差す。
少し離れている者には、手を振る。
それで困らないらしい。
夕方。
白い太陽が先に沈んだ。
空が赤く染まった。
もうひとつの太陽だけが残る。
僕たちは崩れた石壁のそばで休んだ。
そこで初めて、砂の下に何かが埋まっていることに気づいた。
僕は掘った。
石板だった。
そこには文字があった。
僕には読めない。
けれど、一緒にいた者の一人が石板を見た瞬間、動きを止めた。
「読める?」
僕が聞く。
首を振る。
「でも、知ってる?」
また首を振る。
それでも、その人は石板から目を離さなかった。
やがて、ぽつりと言った。
「ここに、誰かがいた」
「誰?」
「分からない」
「町だった?」
「分からない」
「君たちの祖先?」
答えはなかった。
赤い太陽が沈み始める。
風が吹いた。
砂が石板の上を流れていく。
その人が突然、口を開いた。
聞いたことのない音だった。
短い。
二つか三つの音。
「今、何て?」
本人も驚いた顔をしていた。
「分からない」
「もう一回」
「できない」
その言葉だけが、二度と出てこなかった。
夜になった。
空には星が多すぎるほど浮かんでいた。
僕は眠れなかった。
隣に座っていた誰かに聞く。
「この砂漠には、昔何があった?」
「分からない」
「何でみんな名前がない?」
「分からない」
「誰も覚えてないの?」
その人は空を見た。
「砂が覚えてる」
「砂が?」
「たぶん」
翌日。
僕たちはさらに歩いた。
途中で巨大な門を見つけた。
半分以上が砂に埋まっている。
門の向こうには何もない。
ただ砂丘がある。
その近くで、割れた像も見つけた。
顔は削れていた。
台座には文字がある。
僕には読めない。
また、誰かが立ち止まった。
昨日とは違う人だった。
その人は像に触れた。
そして泣いた。
理由は分からないらしい。
「悲しい?」
僕が聞く。
「悲しいって?」
僕は答えられなかった。
夕方。
白い太陽が沈んだ。

赤い光が砂漠を染める。
そのとき、遠くに街が見えた。
塔がある。
壁がある。
屋根がある。
人影まで見えた。
僕は立ち上がった。
「街だ」
誰も動かなかった。
「見えるだろ?」
彼らは砂漠を見ていた。
「何もない」
「あるよ」
僕は走った。
けれど、近づいても街との距離は縮まらない。
やがて赤い太陽が沈んだ。
その瞬間、街は消えた。
夜だけが残った。
戻ると、彼らは火を囲んでいた。
僕は聞いた。
「さっきの街、知ってる?」
誰も答えない。
「昔ここにあったんじゃないか?」
一人が言った。
「昔は、たくさんあったのかもしれない」
「何が?」
「名前」
僕はその言葉を聞いて、しばらく黙った。
名前。
人の名前。
街の名前。
国の名前。
山の名前。
川の名前。
きっと、昔は全部に名前があった。
でも、この砂漠はそれらを少しずつ埋めた。
文字を削り。
記録を消し。
人の記憶からも。
忘れられたものは、名前を失った。
名前を失ったものは、やがて何だったのかも分からなくなる。
では、この人たちは。
名前がなかったのではない。
名前を忘れたのだ。
「僕の名前は――」
口にした。
言えた。
まだ覚えている。
隣にいた人が僕を見る。
「それを覚えていると、何か変わる?」
「分からない」
「重くない?」
「少し」
名前には、前の世界がついている。
家族。
友人。
学校。
街。
雨の日の交差点。
死んだ瞬間。
全部が名前に結びついている。
名前を捨てれば、きっと軽くなる。
この砂漠の人たちのように。
でも、僕はまだ捨てたくなかった。
夜が深くなる。
僕は砂の上に横になった。
昼間の熱が少しだけ残っている。
誰かが布を一枚かけてくれた。
名前を聞こうと思った。
やめた。
その人は、それで困っていない。
僕だけが名前を必要としている。
空には星があった。
二つの太陽は、もう見えない。
明日になれば、また昇るのだろう。
白い太陽。
赤い太陽。
そして、また砂漠を歩く。
僕は目を閉じた。
自分の名前を心の中で一度だけ呼ぶ。
まだ言える。
まだ覚えている。
でも。
この砂漠は、すべてを忘れていく。
街も。
人も。
言葉も。
いつか僕も、その中に混ざるのかもしれない。
意識がゆっくり沈んでいく。
最後に浮かんだのは、たった一つの疑問だった。
明日もまた僕は、名前を憶えているのだろうか?
…( *´艸`)
そして ” 僕 ” は自分の名前を忘れて空白になるんでしょうね。
はい、今回の主人公名前は 僕 です。
異世界文学本になりますね。
不思議な世界ですね……
という事で今回はここまでまた次回お会いしましょう。
以上灯の旅人でした。
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