雨宿り
「愛するのと、愛されるの。どっちが幸せだと思う?」
昔なら迷わず「愛する方」と答えていた。
誰かを好きでいるときの高揚感は特別だ。
相手の言葉ひとつで浮き足立ち、会えない夜には胸が痛む。
けれど、それは自分の心を少しずつ削りながら灯す火のようでもあった。
恋が終わったあとの部屋には鉛のような疲労感だけが残る。
相手の機嫌をうかがい、言葉を選び、心を砕き続けた結果、からっぽになった胸の奥がまだ熱を持って痛む。
もう誰かのために差し出せるものは残っていない。
だから人はすり減ったあとに「愛されたい」とこぼす。
雨に打たれ続けた身体があたたかい軒下を探すように。
気の利いた言葉も探さず、何も差し出さず、ただそこにいるだけで許される時間。
心が擦り傷だらけのときは愛する席は空けておけばいい。
乾くまでただ雨宿りをしていればいい。
曲も作りました。
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