『ディスクロージャー・デイ』日本公開延期記念(皮肉です)!『マイノリティ・リポート』『宇宙戦争』感想文

未来は自分で決められる
画がバチボコに格好いいの、流石スピルバーグ。演出が素晴らしくて見応え十分。言わずもがな何でも撮れるスピルバーグだけど、だからこそSFという世間が彼に期待する本領発揮ジャンルでは、たとえそれが『未知との遭遇』や『E.T.』でなくてもブチ上がる。実際、見せ場が多くて、謎に迫っていく過程もスリリング。構成自体は王道で、逃げながら冤罪を証明する逃亡者モノのプロットで惹き込まれるSFサスペンスだけど、知的でスマートであり、記憶に残るショットやシーンが多い「窓の外の男」。主人公が眼球を入れ替える手術の後に、冷蔵庫でカビだらけのサンドイッチとカビだらけの冷蔵庫と二択をことごとく間違えるシーンなんかは少しコメディ的ですらある。
二重の意味で懐かしくもなる未来像が、かえってどこかレトロフューチャー的で魅惑的。今日では失われた温度がしっかりとある00年代の魔法(例えば『アイ,ロボット』とかとも?懐かしい時代)。この時代に少年時代を送った者にとっては特別だ。影やダークさ、枷や葛藤、決して癒えることのない喪失の苦痛に、スピルバーグ作品にしては少し「性」もある。陰影の際立った色調やルックが『A.I.』的なのもこの時代らしく、ちなみに、同じくトム主演作で言えば『ミッション:インポッシブル3』もこういう感じ。こういうLUT(フィルター)が当時流行っていたのかな。シンプルな服装でもスター性抜群のトム・クルーズは、イーサン・ハントのモードに近く、己の身体性をもって本作を地に足のついたものにしている。
共演には、まさかの幕引きが待っている若くギラギラしたコリン・ファレル。世界観に説得力をもたらし作品を締めるマックス・フォン・シドー。個性派枠のティム・ブレイク・ネルソンに、ピーター・ストーメア。そして、坊主頭サマンサ・モートン。「彼らが来る」アガサの予知能力で指示されるがままにの展開も好き。逃げて!!タイトルにも示される消される不都合な声。近未来SFあるあるユートピアと見せかけてディストピア、一見完璧なシステム(体制)の綻びや欠陥・盲点。システムの崩壊、人間の限界、体制側がひた隠しにする不都合な真実。子どものときは終盤の展開に、アクション的なカタルシスが無くて、物足りなく感じていたと思うけど、今観るとだからこそいいのだなと分かる。
「誰だって逃げるさ」…トム×スピルバーグ最強タッグに、フィリップ・K・ディック原作の幸福な組み合わせ!誰だって楽しめること請け合いな、00年代の空気がたまらないSF大作であり、快作。そして真に驚くべきは、それでもスピルバーグ監督作品において、ベストな作品ではないだろうということだ!
※プルコギではありません。
勝手に関連作品『逃亡者』

理不尽な破壊・暴力と、それでも逞しく生きる生命力
SFに重ねられた9.11。息を呑む、圧倒的なまでのカオス描写が目を見張る(ここでもスピルバーグ節!!)
最初の襲来から、一気に惹き込まれる。訳も分からないまま惹き込まれている自分がいる。世界観に没入できるだけの圧倒的な規模感破壊の限りを尽くして観客を「?」・「!」と共に、絶望のどん底に叩き落すような、ドキドキハラハラの緊張感を巧みに演出して盛り立てる。傑作ではないかもしれないけど、一見の価値がある作品だ。子供たちと疎遠なアースカラーを着込んでワーキングクラスやさぐれトムに、天才子役ダコタ・ファニングの存在が、本作をより魅惑的なものにしている。
地球外生命体にされるがまま逃げ惑う家族ドラマであり、ディザスタームービーでもあるというSFパニック・アクション・スリラー。世紀末もののヒトコワな恐ろしさもあって、人間の醜さも描かれている。スーパーマンでなく、市井の人々の視点から、その混乱を描くことで、本来避けられたはずの二次災害、三次災害へと雪崩込むさまは、一種ディザスタームービー的な側面もある作品だと思う。親子それぞれのドラマもあって、名優ティム・ロビンスのヤバ分子っぷり。業を背負い、本当の意味で父になる。
「未知との遭遇」の友好的な側面を描いてきた彼が、今度は宇宙人侵略モノの古典が原作に、『マイノリティ・リポート』とあわせて、当時の彼の気分(ムード)を感じるし、彼ならではの手に汗握るような演出によって9.11同時多発テロをも想起させる。そのオチには、子どもの頃はキョトンとしたものだが、人類の技術発展が生み出した文明の利器(兵器)ではなく、人知を超えた自然・生命の神秘が、それすなわち地球という惑星の歴史自体が、私たちを救い守ってくれたということなのだと今は納得できる。
勝手に関連作品『ノウイング』『グリーンランド』『モンスターズ』

