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「第一子と第二子の対面は、最初がとても大切だ」と先輩たちから何度も聞いて

産後ケア施設の2階にある、なぜかスイーツやアイスのラインナップに気合いとセンスを感じるセブンイレブンまでが、その時の私の行動の自由範囲の極限だった。

エスカレーターで地上1階に下ってゆく息子と夫。上を見上げてくれる2歳児の、なんと愛しくて可愛いことか。

「会いにきてくれてありがとうね。また明日ね」と、息子に吹き抜けの上階から声をかける。

「うん!またあしたねー。むかえにきる(来る)からねー」と言って、手を振って2歳が前方に走り出す。夫がすかさず追いかけて、彼らは産後ケア施設(建て替えられたばかりの総合病院の最上階が専用フロア)の建物の外へ消えていった。

ガラス張りの広い窓から、駐車場に停まっている夫の車が遠くに見えた。走り出すまで見送ろう、と思って少しだけ立ち止まる。

久しぶり——破水の日から数えて、10日ぶり—— に会った息子は、記憶よりもなぜかずっとちいさく、そして新生児の娘よりもずっとずっと、重たくておおきかった。

愛してる、と思った。愛しい、と。

子どもはふたりに増えたけれど、きちんとどちらも愛している自分にどこかホッとしたような、安堵したような。泣きそうになるような、不思議な気持ちだった。

とにかく、第一子に会えて、泣きたかった。

***

久しぶりの息子との対面は、もっと簡易に済むものかと思っていた。けれど、まず「ママである私によそよそしいところ」から再会は始まる。

予想外だった。

再会後すぐに抱っこして、ぎゅっとしがみついてはくれたものの、ほぼ黙っている息子。なでなでしても、手を外される。大好きよ、と言っても反応はない(それはいつもだけれど)。

1時間、2時間かけて、産後ケアの個室や病院内を二人でおさんぽするうち、やっと自分から手を繋いでくれたり、お膝に座ってくれたり、おむつを替えさせてくれたりして、「いつも通り」に戻っていった息子の空気。

最初、駐車場まで迎えにいった時。危うく警備員さんに「病院外に脱走した人がいると聞いて」と追いかけられそうになってしまったが(ごめんなさい)

その時、第一声が「あかちゃんつれてきた?」だった。「ママ」でもなく、「あいたかった」でもなく、「あかちゃん」。

でも、目は合わなかったんだ、そのとき。

これは、想像でしかないけれど。「ママに会う」ということは、「そのときに一緒に赤ちゃんがいる」と思って、彼なりになにか覚悟や緊張をしていたのかもしれないな、とあとから思った。

あかちゃんがいない、とわかると、以後2時間、「あかちゃんとはあわない」一点張りだった。話を逸らすか、無視するか、「あわない」と答えるかの3択で。

じりじり、と今日の面会時間が過ぎてゆく。夫と目配せしながら、「今日は無理しなくてもいいかもね」と諦め始める。

18時の面会時間、10分前。すでに面会開始から3時間程度経つ頃に、さいごのダメ元の打診のつもりで、「息子くんに会いたいあかちゃんがあっちにいるんだけど、まどからみていく?」と聞いたら、「うん、いこう!」と初めて言った。

指差した方向に、すでに走り始めてもいた。会って、くれるの?
「あえるの、うれしいね!」と走りながら話していた。

新生児室で助産師さんとともに待機してもらっていた、娘を窓越しに確認して、「なでなでする?」と聞いたら「する」と言った。

抱っこしながらブザーを押してもらって、事情を知っている助産師さんに「息子くんのあかちゃん、つれてきてください」と伝える。その間に手を洗って。

透明なコットごしに、背伸びをして張り付く息子。——笑って、じっと見つめて、なでなでしたいと抱っこをせがみ、愛しいふたりが、触れてゆく。抱っこしたい、と抱っこもした(一緒に)。

「つれてかえろう」と出口に向かって、歩き出す。慌てて「あしたになったら一緒に帰れるよ」と伝える。しばらく嫌がっていたけれど、「わかった!」と自分で新生児室に見送ろうと、コットをベビーカーのように押し始める。

聞き分けが良くなった。会わない間に、また成長してしまってさ。



そして時系列は、冒頭の駐車場見送りシーンに戻る。車に乗り込む夫と息子を遠目に眺めながら、ひとめ憚らずここで泣いてもいいだろうか、とすこし思う。

なんとか、終わった。なんとか、無事に。第一子と第二子の対面は、最初がとても大切だと先輩たちから何度も聞いた。「絶対に赤ちゃんを抱いて再会しないことが大事だ」とも。

だから、絶対にまずは第二子がいない場面で、息子との再会を果たそうと工夫した。本当は産院の入院中にこれができたらよかったのだけれども、今月は息子の体調不良が結果4回連続し、発熱も感染症も激しかったため、タイミングを見計らっての実行だった。

……なんとか成功したのだろうか。ホッと、ドッと、疲れと安堵が押し寄せる。

後ろ手にあるセブンイレブンで、祝杯がわりのノンアルビールでも買って部屋に戻ろう、と思ったら、スイーツたちのラインナップはこんなにあるのに、ノンアルもお酒もひとつも置いていなかった。

代わりに、なんとかスパークリングっぽさのあるチョコラBBを買ってみた。なんか違うけど、まぁでも、なんもないよりいっか、と思う。

***

面会をした日は、朝方に、家にいる夫が育休前の申請書類を広げながら、「名前の電話しよう」とLINEをくれて、そして私たちは名前会議を繰り広げた日でもあった。

そう、第一子と第二子の対面、そして、第二子の名付け決定日が、同じ日だった。

なんて、なんて人生でそうない一大イベントが組み合わされた大事な日だったのだろうかと思う。

その上、今日の明け方から3,4,5,6,7時、みたいに一時間ごとに新生児が起きる眠れない日々もスタートを切っていた(今日までは、まだ新生児がお腹から出てきた自覚がまだ強くなく、なんとなく眠ってくれていた感じがしていた)。

眠い。眠すぎる。頭も身体もつかいすぎた。

そういや午後、コンビニにナプキンを買いに行ったのに、アイスしか買ってなかったし、ほぼ一本道の病院内で、産後ケアのフロアに戻れず何故か二度迷子にもなっていたし。

ぽんのこつ。

けれど今日は。祝うべき日だ。

とにかく眠ろう。名付けも、対面も、私へ、私たちへ、おめでとうと、おつかれさまを。そして、束の間のおやすみなさいを。

次に娘が起きるまで、あと二時間を切っている。というか起きたわ、いま。授乳をして、私も眠れるだけ眠ろう。この産後ケア施設を出る明日から、私たちの新しい日常が待っている。

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