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導入 署名が、紙に落ちた週
先々週、署名は遠のいた。
先週、署名は線の上に戻ってきた。
そして今週、署名はついに紙に落ちた。
6月17日、米とイランは十四項目の覚書(MOU)にデジタル署名した、
米側はトランプとヴァンスが、イラン側はガリバフ国会議長らが名を連ねた。
署名の場は、マクロンが主催したG7(エヴィアン)の傍ら、フランスでの晩餐に設えられた。
そして18日、タンカーがホルムズを抜けた、封鎖から二か月、海峡をふさいでいた約600隻・二万人の船員が、ようやく動き出した。
Brentは合意の報で4ドル超を落とし、80ドル前後まで崩れた。
紙の上の覚書が、海の上のタンカーへ変わる――先週わたしたちが宙づりと呼んだものが、今週、半分だけ地に着いた。だが、残りの半分は、署名のすぐ後ろでまた浮いた。
19日、スイス・ビュルゲンシュトックの技術協議は流れた、イランは代表団を送らず、ヴァンスも訪問を見送った。
理由はレバノンである。停戦の枠から外されたままのレバノンで刃がぶり返し、その日の夕、四たび停戦が敷かれた。
署名は落ちた。
それでも像は、また縁から崩れかける。6月第3週とは、そういう週である。
1.アメリカ 据え置きの初陣と、再びの梃子
ウォーシュ新議長の初めての一票は、動かないことだった。
6月16〜17日のFOMCは、12対0で政策金利を3.50〜3.75%に据え置いた、イラン戦争が押し上げた物価が、利下げの扉を閉じたままにしている。
点描図(ドット)は年内利上げへ傾き、18人のうち9人が一回、6人が二回を見込む、年末のPCEは3.6%へ――三月の見立て2.7%から、大きく上ぶれた。
利下げを好むはずの議長は、初陣を「言葉の刷新」に充て、利下げの芽には触れなかった。
対イランでは、トランプが署名を「世界経済の破局を避けた」と誇り、同じ口で「約束を違えれば再び叩く」と凄んだ。
海峡の封鎖は、最後まで成果を引き出すための梃子だった、
そして梃子は、いま矛先を北へ転じる。
エヴィアンのG7で、ウクライナが卓の中央へ戻された、トランプは、いったん解いたロシア産原油への制裁を、再び科しうると匂わせた。
中間選挙を11月に控え、目に見える成果がもう一つ要る、イランの次はロシアだという読みが、ワシントンの口の端にのぼり始めた。
2.ロシア 火は降り続け、卓は北へ寄ってくる
ロシアは、今週も夜ごと火を吐いた。前線は動かず、製油所への相互の打撃もやまない。
だが、イランが「片づいた」ことで、世界の視線が戻ってくる。
エヴィアンのG7は、ゼレンスキーを迎え、防空・迎撃・長距離兵器の支援上積みと、ロシアの石油・ガスへの制裁強化で足並みをそろえた、米国が手を引いた穴を いまは仏を筆頭に欧州が埋める。
イラン停戦で原油が緩んだことは、皮肉にもモスクワの収入を細らせる方向に働く、署名の余波は テヘランからモスクワへと伝わっていく。
ある論調は、この終戦を「トランプとプーチンが強いた平和」と読む。
西を失ったモスクワが、戦時に立ったテヘランを支えた二十年の絆――その絆が、今度はモスクワ自身の番として問われる。
降る火と、北へ寄る卓。矛先が東から北へ滑る気配は、今週、確かに兆した。
3.ヨーロッパ 主催の椅子と、緩む相場と、なお薄い蓄えと
今週、欧州は議長の椅子に座った。
エヴィアンのG7はマクロンが主催し、署名の場まで自国に引き受けた、米が退いたウクライナ支援で いまや欧州が最大の出し手である。
原油の急落は、エネルギー輸入地である欧州の景気不安を、ひとまず和らげた。
だが、足元の蓄えはなお薄い。
ガスの貯蔵は注入の季節に入ったものの、冬を越す水準にはまだ遠い。
ナフサとクラッカーの弱さも、相場が緩んだだけでは埋まらない、EUは年末までにロシア産LNGを 来秋までにパイプラインガスを断つ計画を、今週も崩していない。
署名がもたらした安堵と、自前で背負う安全保障の重荷。相反する二つを、欧州は今週も同時に抱えている。
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