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景気回復、いざなみ超えって本当?

 昨日(9/8)の日本経済新聞朝刊に興味深い記事が載ってました。日本の景気回復が2020年5月に谷をつけてから74ヵ月を経過し、2000年代の小泉政権下の景気回復(いざなみ景気と呼ぶそうです)を超えたというのです。昨晩のNHK「クローズアップ現代」でも特集され、私もよく存じ上げている三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎さんがコメントされてました。一方、「景気回復ってホント?」と思う方も多くないでしょうか?


景気動向指数のCI一致指数は上向きが続く

 日経の記事にも出てましたが、景気動向指数(下図)をみる限り、確かに上向きが続いてはいます。今年に入ってからは上昇が顕著にも見えます。
 景気動向指数とは、景気に敏感に反応する指標の動きを統合して作成されるています。景気の波を捉えているとされる一致指数は、10の経済指標が採用されています。そして、日経の記事にも出ているCI指数とは、この10の経済指標の変動を合成して作成されています。10の経済指標のすべてがプラスに寄与するとは限らず、9月7日に公表された速報では、耐久財出荷指数、商業販売額(卸売業)、有効求人倍率(除学卒)がCIを押し下げる方向に働いたと書かれています。

DI一致指数は、50の分岐点を超えたり、下回ったり

 景気動向指数にはDIと呼ばれる指数もあります。採用されている指数の各月の値を3ヵ月前の値と比較して、増加した系列の数の割合を見るものです(横ばいの場合は0.5とカウント)。多数決的な指標で、過半数、つまり50%を超えれば景気は上向き、そうでなければ下向きと判断します。誰が計算しても同じ値になるので、私はDIの方が好きです。
 そのDIのグラフをみると、2021年から2025年まで50を超えたり、下回ったりを繰り返していることがわかります。直前の景気の谷の翌月、2020年6月から2026年7月までで数えると74ヵ月中50を上回ったのは38ヵ月と半分程度に過ぎません。改めてCI一致指数をみるとその期間は横ばいに見えます。景気が悪化してはいないものの、改善しているともいえない時期が大勢を占めているのです。
 ちなみに、2000年代のいざなみ景気の時は景気の谷の翌月の2002年2月から山をつけた2008年2月までの73ヵ月中、56ヵ月はDIが50を超えていました。この時も、景気の中休み(もしかしたら後退?)が疑われた時期がありましたが、今回よりもしっかりした景気回復であったと考えられます。

採用系列における実質値と名目値の混在が問題か?

 CIとDIの動きの違いを生み出している一因は、一致指数の採用系列に物価変動の影響を受ける名目値と、影響を取り除いた実質値が混在していることにあると私は考えています。採用指数の動きをみると、名目値である営業利益や商業販売額は改善基調であるのに対し、実質値である生産関連は横ばい圏内にとどまり、有効求人倍率は低下傾向にあるためです。特に営業利益の改善幅は大きく、変動を合成するCIに比較的大きな影響を与えているのではないかと推察されます。
 いざなみ景気はデフレ状況にあったため、実質と名目の混在は問題にはならなかったのでしょうが、物価が上がるようになった近年では、混在は問題ではないかと考えます。だいぶ前に、私が景気動向指数の改善のためのワーキンググループに参加させていただいた際に指摘したのですが、相手にされませんでした(汗)。

新指数で問題は解決するのか?

 こうした中、景気の山谷を決める内閣府の「景気動向指数研究会」が2026年7月23日に開催されました。ホームぺージの資料をみると、現在は参考指数の位置づけとなっている「景気を把握する新しい指数(一致指数)」を改善させた「新CI一致指数」「新DI一致指数」を2027年4月分から公表することを決めたようです。引き続き参考指標の位置づけのようではありますが、次の景気の山の暫定設定には用いることも検討されています。
 「景気を把握する新しい指数(一致指数)」については、私も下記のnoteで問題点を指摘してきましたが、名目系列の実質化などを進め、実質GDPの動きと整合的になったと研究会は述べています。景気指数というよりは月次GDP指数のようにも思えますが、これで問題が解決するのでしょうかね?

実は2023年あたりから景気弱含み?

 なお、研究会の資料(このリンクの12頁)に興味深い図がありました。景気の山谷を決めるときにはヒストリカルDIと呼ばれるものを算出します。景気後退期にはこのヒストリカルDIが50を下回り、0に近づくのですが、現行の一致指数に採用された系列で算出されたヒストリカルDI(資料の図の黒線)が2023年に50をはっきり下回り、その後も50以下になっているのです。アベノミクス景気の時も2014年の消費税率引き上げ後に50を下回っても景気後退が認定されなかったので、これだけで景気後退とはならないでしょうが、上述してきた戦後最長の景気拡大に対する違和感を示してくれているとも思います。
 ちなみに、新DI一致指数の採用系列を用いたヒストリカルDI(資料の図の赤線)も2023年以降に50を下回るなど微妙な動きになっています。新指数でも戦後最長の景気拡大は疑わしいということでしょうか? 

#日経COMEMO #NIKKEI


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