『二回目の人生』
(約 850 字) ショート・ショート
俺は知っていた。
この後に起こることを──
今、俺は競馬場に来ている。
ほら、「シックスペンス」が1着だった。
「ガイアフォース」と「ワールズエンド」が2着同着だ。
だが、俺は「ガイアフォース」単勝の馬券を握っていた。
なぜ、ハズレ馬券を買っているのかというと──
・・・
俺は二回目の人生を生きている。
初めは何が起こったのか分からなかった。
気づいたら幼少期まで戻っており、
夏休みにおばあちゃんの家に遊びに来ていたのだ。
そうだ。
この頃はまだおばあちゃんは生きていたんだ。
おばあちゃんの姿に懐かしい思いが込み上げ、
抱きつこうとした。
しかし、体は動かなかった。
俺は「おいしいね」と言いながら、
アイスクリームを食べ続けていた。
あれ? 俺の意識通りに体が動かないぞ。
どういうことだ?
その間も俺の体は俺が記憶していた通りの行動をした。
ご飯を食べ、風呂に入り、寝た。
翌日、俺の体が目を覚ました時に俺も覚醒した。
これは俺の二回目の人生ではあった。
しかし、俺の意識はこの世界に干渉することができない。
まるで、俺の人生の映画を見ているようだった。
長い年月が経った。
俺は今「ガイアフォース」単勝の馬券を握っていた。
外れると分かっていても馬券を買うしかなかったのだ。
「ちくしょう! あと少しだったのに!」
俺が悔しがっていた。
まあ、悔しいよな。
俺は勝っても負けても関係ないが、
当時の俺は金がかかってたもんな。
と他人事のように考えていた。
俺は相当まいったのか、とぼとぼと帰路についた。
交差点に差し掛かった。
うつむいたまま、俺の体は赤信号の交差点へ踏み出した。
おい、俺! 信号は赤だぞ! 止まれ!
しかし、俺の意識では体は動いてくれなかった。
そこに一台のトラックが突っ込んできた。
俺は気づいていない。
危ない!
時間の進みが極限まで遅くなっていく。
トラックがゆっくりこちらに近づいてきている。
そうか。
これは、走馬燈──
幼少期のおばあちゃんとの記憶が蘇ってきた。
俺は「おいしいね」と言いながら、
アイスクリームを食べ続けていた。
やはり、俺の意識では体を動かすことはできなかった。
[了]
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2026/07/27 コングラをいただきました!
#短編小説 での受賞は初めてと思います!
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