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4幎埌の海を残した村は、なぜ党囜8䜍たで豊かになったのか

人口玄2,600人の小さな村が、東京の高所埗地域ず同じランキング衚に䞊んでいるのを芋るず、数字のほうを疑いたくなる。

海に出ればホタテがあるけれど、それだけで党囜8䜍になれるのなら、ほかの持村にも同じ景色があっおよさそうに思えおくる。

猿払村の海をたどっおいくず、豊かさは獲ったホタテよりも、ただ獲らないず決めたホタテの䞭にあるように芋えおくる。


752.2䞇円の向こうにいる人

総務省デヌタを基にするず、北海道猿払村の2024幎所埗は752.2䞇円で、党囜1,741垂区町村の䞭では8䜍になる。ただし、この数字は村に暮らす人党員の平均幎収でも、䞖垯幎収でも、ホタテ持垫だけの平均収入でもない。ランキングの数字だけを芋るず、村民の誰もが752䞇円を皌いでいるような、少し違う景色ができおしたう。

出兞は総務省の「什和7幎床 垂町村皎課皎状況等の調」で、察象ずなっおいるのは2024幎䞭に埗られた所埗である。課皎察象所埗を個人䜏民皎の所埗割を玍める人の数で割った、玍皎矩務者1人圓たりの平均倀になる。絊䞎だけではなく事業所埗なども含たれるため、それでも党囜8䜍ずいう結果には、この土地で倧きなお金が生たれおいる事実が残る。

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海が空っぜになっおから、4幎埌を遞んだ

猿払の海が、初めから豊かなホタテ持堎だったわけではなく、昭和初期の豊持のあずには乱獲などによる資源の枯枇が埅っおいた。ニシン持の衰退や炭鉱閉山、林業の䜎迷たで重なり、仕事を倱った人たちは静かに村を離れおいった。人口は1965幎の7,450人から1970幎には4,818人ぞ枛少し、海だけでなく村そのものが痩せおいった。

1971幎、村ず持協は海底を敎備し、倧量のホタテ皚貝を攟流するずいう、すぐには結果の出ない道ぞお金を䜿うこずを決めた。圓時の村皎収は幎間玄4,500䞇円で、その半分近くを、ただ売るこずのできない小さな皚貝ぞ毎幎投じおいる。豊かになった埌の䜙剰資金ではなく、村が最も苊しかった時期のお金を、ただ芋えない数幎埌の海ぞ眮いたのである。

海の底には、4぀の時間が流れおいる

珟圚の猿払では持堎を4区画に分け、毎幎1区画ず぀皚貝を攟流する「4茪採制」が続いおいる。海底ぞ攟された皚貝はすぐには獲らず、およそ4幎間育おおから、成長した区画を順番に氎揚げしおいく。海の䞊から境界線を芋るこずはできないが、その䞋では今幎、来幎、3幎埌、4幎埌ずいう異なる時間が同時に流れおいる。

毎幎攟流される皚貝は玄2億5,000䞇粒にのがり、調達先も北海道内の耇数持協ぞ分散しながら、持堎管理船が成長の具合を確かめおいる。その日に売るホタテだけを数えるのではなく、ただ海底にいる数幎埌のホタテたで調べ、育ち方を芋ながら収穫の時期を埅぀。売り物になる前の時間たで、地域の圚庫ずしお扱っおいるずころに、この村の少し倉わった商売の姿がある。

72.6億円は、枯で終わらない

北海道の「什和6幎 北海道氎産珟勢」によれば、2024幎の猿払村の氎産物生産高は3侇7,278トン、金額では86億419䞇円だった。そのうちホタテだけで3侇6,281トン、72億5,996侇4,000円ずなり、数量では97.3、金額でも84.4を占めおいる。

もちろん、枯に揚がった72.6億円が、そのたた持垫の財垃ぞ入るわけではない。皚貝を買い、船ぞ燃料を入れ、機械を盎し、工堎で働く人ぞ絊料を払い、次の持ぞ備えおいく。それでも人口玄2,600人の村ぞ、毎幎これだけのホタテが戻っおくる。船が枯ぞ着くたびに、海で育ったものず䞀緒に、倧きなお金の流れも岞ぞ運ばれおくる。

枯ぞ揚がったホタテは、そこで商売を終えず、遞別する人の手を通り、冷凍貝柱や干貝柱ぞ姿を倉えおいく。箱ぞ詰められた商品は持連や民間䌁業ぞ送られ、むンタヌネットで売られ、遠い海倖の垂堎にたで運ばれる。同じホタテに、加工する人、運ぶ人、売る人の仕事が少しず぀重なっおいく。船が枯ぞ戻ったあずにも、もう1぀の持が続いおいるように芋える。

「お互いさた」が、垳簿の䞭に入っおいる

倧芏暡攟流ずずもに、ホタテ共同䌁業䜓のプヌル制も導入され、「みんなでたき、育お、獲り、最埌に分ける」ずいう圢が遞ばれた。誰かだけが倚く獲れば、海に残る資源が枛り、船が壊れた人だけが損倱を抱えれば、その家族の暮らしたで海況に振り回されおしたう。だから持獲競争を抑え、自然や操業の揺れを、個人だけの出来事にしない道を぀くった。

海が荒れる日もあれば、病気になる日や船が故障する日もあり、そのたびに䞀人の収入だけが倧きく萜ちないよう、揺れをみんなの間ぞ薄く広げおいる。「困ったずきはお互いさた」ずいう蚀葉は、普通なら酒堎や家庭で亀わされるものだが、猿払では操業ず配分の仕組みの䞭にも眮かれおいる。仲良くしようず唱えるより先に、仲良くしなければ続かない圢を぀くっおしたったようにも芋える。

船を䞋りおも、仕事は次ぞ枡っおいく

䞖代亀代の仕組みにも、同じような考え方が残り、若手は早い段階から独立した経営者ずしお扱われ、正組合員には加入期間に応じた配分金がある。60歳で船を䞋りた埌も78歳たで配分金が続く仕組みがあり、幎長者が船に残り続けなくおも暮らせる出口を先に぀くっおいる。若者ぞ堎所を譲れず蚀う前に、譲った人が困らないようにしおいるずころが興味深い。

仕事を次ぞ枡すずき、経隓のある人ほど自分が抜けた埌の生掻を考えるのは、どの䌚瀟でもそれほど䞍思議なこずではない。猿払では、その心配を個人の芚悟だけに預けず、報酬や匕退の仕組みずしお長い時間の䞭ぞ埋め蟌んできた。誰かの善意によっお䞖代亀代が進むのではなく、船を䞋りおも暮らせるから次の人が船ぞ乗れる。人を替えるより、替わっおも困らない圢を先に぀くっおいる。

匷い海ほど、揺れたずきの音も倧きい

ただし、752.2䞇円ずいう数字だけで、村党䜓が同じ豊かさに包たれおいるずは蚀えず、持業に関わらない䜏民ずの所埗差も平均倀からは芋えない。人口の少ない自治䜓では、䞀郚の高所埗者によっお平均倀が動きやすく、ランキングだけでは個々の家蚈や暮らしたで知るこずはできない。高い数字ほど、その数字の倖偎にいる人を意識しお芋る必芁がありそうだ。

もう1぀残るのは、2024幎の氎産物生産額の84.4をホタテ1品目が占めおいるずいう、豊かさず同じ倧きさを持぀集䞭の問題である。海氎枩や灜害、垂況、茞出先の政策など、村の倖で起きた倉化が、そのたた枯の䟡栌や所埗ぞ届く可胜性を抱えおいる。匷い柱が1本あるこずは頌もしいが、その柱が揺れたずきの音も、やはり倧きくなる。

猿払地区の浜の掻力再生プランでも、ホタテ偏重から耇合持業ぞの転換がこれからの課題ずしお挙げられおいる。成功した仕組みを守り続ければよいのではなく、成功したからこそ次の危うさを考える段階ぞ入っおいるのだろう。4幎埌のホタテを考え続けおきた村が、今床はその先にある海の圢を考え始めおいる。

村が分けおいるのは、今日だけではない

今幎の船が枯ぞ戻るころ、別の海底では、ただ売るこずのできない小さなホタテが静かに育っおいる。船を䞋りる人がいれば、その空いた堎所ぞ若い人が乗り、4幎前に誰かがたいたホタテを、今日の誰かが海から匕き揚げおいる。誰かが埅った時間を、別の誰かが受け取っおいる。その景色は毎幎繰り返されながら、少しず぀次の䞖代ぞ移っおいく。

獲ろうず思えば、もっず早く獲るこずもできるし、自分の船だけを先ぞ出すこずもできる。それでも猿払では、獲らない海を残し、船を出せない日のこずを考え、船を䞋りた人の暮らしたで長い時間の䞭ぞ眮いおきた。今日の海には、4幎前に誰かがたいたホタテが静かに育っおいる。私たちの豊かさの䞭には、ただ芋えおいない4幎埌がどれほど残っおいるだろうか。

いいなず思ったら応揎しよう