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「怒らないはずの釣具店fishing Mini」の話-02

Tinycoには、釣具店は2軒しかない。そのうちの1軒が”fishing Mini” 親身で優しい釣具店が店のモットーで、「情熱○陸」と言う某番組の取材も 受けたと言う噂まである。お店のSNSでも「怒らない店主🙂」と自己紹介もしている。 ある意味間違いないが、何せ店主のクセが強烈なのだ。


しかし、名品の品揃えも多く、ついつい来てしまう。 不要なものまで買ってしまうのは、釣具店を魔界と呼ぶ釣り人の常だ。 「今日は財布の紐を締める!」そう心に誓って入店。


「おっ、毎度。ちょっとだけご無沙汰やな。そのTシャツどないしてん?」 愛想よく店主から声をかけてくれた。 「ダサいTシャツなんですが、色々あって…」


『ダサい??ウチの店でも売ってるフグ一家の新作やろ?』
空気が一気に凍り、慌てて謝る。「大変失礼しました…」 『まぁええわ、で、今日は何探してるんや?』
「明日タコでも釣りに行こうかと思って…」 店主しばしの沈黙…


『……タコやと? 自分、いま『タコ“でも”』言うたか?』 「え? あ、はい」 『……アホか自分!!(一喝) タコちゃんを軽んじたらあかんぞ! あんな知能が高くて 足が八本もある海の賢者を『〜でも』って、ついでみたいに言うな!!』 「すんません…タコさん用の、そこのセールの餌木にしようかな….」 『あんなぁ、自分。瓶の蓋かて自力で開けるんやぞ! そんなタコちゃんを釣るのに、 安もんのプラスチック製エギで騙せる思てんのか!?』 「でも、みんな派手なプラスチックのエギで釣ってるけど….」


『激甘や! 今のタコちゃんは目が肥えとる! 派手なだけの偽物には見向きもせんわ! タコちゃんが思わず「抱きしめたい……!」ってなる本物を抱かせなアカンねん!』 『これを見てみぃ!(高級感漂う箱を出す)』 『越前ガニの甲羅を特殊加工して、『トリュフオイル』を仕込んだ 『超熟成・トリュフ香り立つ極上蟹エギ』や! 』 「……タコに、トリュフ?」 『何を迷っとんねん! タコちゃんはグルメなんやで!海中での最後の晩餐に なること思たら、それが愛情やろがい!』 『ほんでな、タコちゃんは底に張り付いたら絶対に離れん頑固者や。 でもな、この『職人謹製・タコ粘り腰竿』やったら、タコちゃんに 『あ、無理かも……降参♡』って優しく諦めさせることができる!』


「ちなみにその竿っていくらです……?」 『特別価格5万円や!』 想像以上に高い。。思わず固まってしまった。 『自分……お金とタコちゃんの命、どっちが大事なんや?』 「命!? タコさん釣ったら食べる気満々ですけど….」 『ちゃう! 釣られたタコちゃんが「最高の相手と添いとげれた…」って満足して 茹で上がるかどうかの話や! タコちゃんに最高の最期をプレゼントできる思ったら、 実質タダみたいなもんやろがい!』


店主は、急に遠くを見つめながら穏やかに語った。 『……波止場に立ってな、夕日を浴びながらトリュフの香りのエギを投げる……。 引き揚げたタコと目が合った瞬間、そこにはタコとの「確かな絆」が生まれるんや…』 ぐぬぬ……またこの謎のポエム空間に引き込まれる…….。 『……行くか? 絆の向こう側へ』


「全部ください」


『自分、ほんまに愛に溢れたえぇ男やな!!』 店主は涙を流しながら、がっちりと握手を交わして店を出た。 「….また、買ってしまった」


翌日、防波堤でタコを釣った。 「タコちゃんとの絆」という謎のロマンを頭に描きながら、トリュフの香りが ほのかに漂う高級エギと、重戦車のようなゴツいタコ竿。 周りの釣り人は100円ショップの仕掛けで普通にタコを釣り上げている。。


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