バーが身体の一部になった日。──デッドハングで気づいた「構造が仕事をする」ということ。
手が小さい人は、デッドハングは不利。」
そんな話を聞いた。
たしかに、一理あるのかもしれない。
でも、その言葉を聞いたとき、私はふと立ち止まった。
「本当にそうなのかな?」
私はトレーニング理論を専門的に説明できるわけではない。
だから、「違う」と言いたいわけでもない。
ただ、自分の身体で確かめてみたくなった。
身体は、頭で考えるより正直だから。
そこでテーマを一つだけ決めた。
「本当に手の大きさが、一番の問題なのか。」
その問いを持って、もう一度デッドハングをやってみることにした。
いつもと変えたことは一つ。
IAPで身体を一本の筒にすること。
重力に逆らうのではなく、重力と同期すること。
そして、仙骨をほんの少し整えること。
その瞬間だった。
カチッ。
広背筋と肩甲骨が噛み合った。
そして、今までにない感覚がやってきた。
私はバーを握っているんじゃなかった。
バーと私が、一つの構造になった。
その瞬間、頭に浮かんだ。
「これだ。」
イチロー選手が話していた、身体とバットが一体になる感覚。
身体拡張って、こういうことなのか。
バーは道具じゃない。
身体の一部になった。
その感覚に鳥肌が立った。
……
そして約30秒後。
痛い。
手が、めちゃくちゃ痛い(笑)。
「あっ、やっぱり手は鍛えなきゃダメか。」
思わず笑ってしまった。
でも、この30秒は私にとって大きかった。
気づいたのは、手が大事じゃないという話ではない。
優先順位の話だった。
今まで私は、
「手が小さい」
↓
「だからデッドハングは苦手」
と考えていた。
でも実際に身体で感じたのは違った。
まずはIAPで身体という筒をつくる。
重力と同期する。
バーと身体を一つの構造にする。
そこまでできて初めて、「手」が仕事を始める。
つまり、手は大切だ。
でも、一番ではない。
この考え方は、ゴルフにもそのまま当てはまる。
飛距離を出そうとして、インパクトで力む。
でも、それは、しぼんだ風船を強く叩いているようなものだ。
力は途中で逃げてしまう。
一方で、空気がしっかり入った風船は違う。
押した力が全体へ伝わる。
身体も同じだ。
IAPで身体という筒に圧が入り、脚から生まれた力が、骨盤、胸郭、肩、腕、クラブへと自然につながる。
インパクトで頑張る必要はない。
構造が仕事をしてくれる。
そして私は思った。
これって、人生そのものじゃないか。
私たちは、「足りないもの」にばかり目を向けてしまう。
才能がない。
年齢が高い。
手が小さい。
だからもっと頑張らなきゃ、と力む。
でも、本当に変えるべきなのは、能力ではなく優先順位なのかもしれない。
まず構造を整える。
軸を整える。
世界と同期する。
そうすると、それまで一番の問題だと思っていたことが、実は三番目、四番目の問題だったと気づくことがある。
デッドハングは、握力を鍛えるトレーニングだと思っていた。
でも違った。
私にとってデッドハングは、
「何を一番大切にするか」を教えてくれるトレーニングだった。
……とはいえ。
手は、ちゃんと鍛えます(笑)。
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