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暗黒ぽいぽい帝国との戦い

あるいは、家人の帰還までに世界を救わねばならない俺の日常

つい先刻――俺は、ひとつの恐るべき事実に気づいてしまった。

この仕事の締め切りが、 今日ではない。 明日でもない。 ……! 昨日だった。。。 ナンテコッタ、パンナコッタ、ナシゴレン

「ククク……ようやく気づいたか」

脳内に響く邪悪な声。

姿を現したのは、世界中の人間から計画性と自制心を奪い、あらゆる仕事を「あとでやればいい」に変えてしまう悪の秘密結社――

《暗黒ぽいぽい帝国》!

奴らの目的はただひとつ。 人類のすべての締め切りを過去へ追放し、床という床をゴミで埋め尽くし、最終的に文明そのものを「まあ、明日でいいか」の闇へ沈めることである。

「まずい……! すでに《締切超過結界》が発動している!」

俺はただちに仕事へ取りかかった。

キーボードを叩く指は、もはや人間の速度ではない。 一文字ごとに火花が散り、一行書き上げるたび、過去へ失われた時間がわずかに巻き戻っていく。

そのときだ。

「煙が……俺を呼んでいる……」

帝国の幹部、《紫煙侯爵ニコチン》が俺の精神へ侵入したのである。

「うっ! す、吸いたい!」

かくして俺は、禁断の煙草を求め、深夜の補給拠点《コンビニ》へ向かおうとしている(←乗っ取られた笑)。

分かっている。

煙草を買えば、吸う。 吸えば、時間が消える。 ただでさえ昨日までに終わっていなければならない仕事の時間が、さらに煙となって夜空へ消えていく。

これは、罠だ。。。

すべて、暗黒ぽいぽい帝国の計画なのだ。

「それでも行くのか、俺……?」

財布を握る右手が震える。

「行く!」

俺は立ち上がった。

だが、ただ帝国の策略に屈するためではない。 この敗北すら、勝利へと反転させる秘策が俺にはある。 すべてを乗っ取られてなるものか。

我が領域に蓄積されし《穢れの封印袋》――すなわちゴミ袋を、道中に存在する廃棄祭壇《ゴミ置き場》へ、いざ奉納せん!

煙草を買うという罪。 ゴミを捨てるという徳。 プラスとマイナス。 光と闇。 紫煙と生ゴミ。

その二つが交差するとき、宇宙の収支は限りなくゼロへ近づく。

「見たか、暗黒ぽいぽい帝国! これが俺の《等価交換》だ!」

しかし、真の戦いは明日の夜に待っている。

その刻、この領域の絶対統治者にして、あらゆる乱雑を一目で看破する《白銀の監察者――家人》が帰還するのだ。

それまでに部屋を浄化せねばならぬ。

床に落ちた菓子の袋。 机に残された食器。 脱ぎ捨てられた衣服。 何本あるのか数えることすら恐ろしい空き缶たち。

※これらはすべて、《暗黒ぽいぽい帝国》が俺の生活圏へ送り込んだ侵略兵器である。俺は悪くない。

だが――よく考えてほしい。

家人が帰還するのは、明日の夜。 つまり、それまでは誰にも裁かれない。 ここは俺だけの《男の楽園》。

今夜は汚し放題。 食い散らかし放題。 脱ぎ散らかし放題。 いえ〜い!

舞え! 菓子袋! 床を這え! 靴下! 食器よ、高く積み上がり、 天を衝く黒き塔となれ!

俺は混沌の中心で高らかに笑う。

「見ているか、暗黒ぽいぽい帝国! 貴様らの力など、すべて承知のうえで利用しているのだ!」

もっとも、明日の夕刻になれば、俺は焦る。

間違いなく焦る。

「なぜ昨夜の俺は、あれほど食い散らかしたのだ!」

そう叫びながら、ゴミを集め、食器を洗い、衣服を畳み、掃除機を振り回すだろう。

すべては家人の帰還までに、この領域で起きた惨劇の痕跡を完全に消し去るため。

そして扉が開く、その瞬間――。

部屋は清浄。 机は整然。 ゴミ箱は空。 俺は何事もなかったかのような顔で、仕事をしている。

白銀の監察者は部屋を見渡し、静かに言うだろう。

「ちゃんと片づけてたんだね」

俺は振り返らず、ただ小さく答える。

「ああ」

誰も知るまい。

その平穏な部屋が、わずか数時間前まで《暗黒ぽいぽい帝国》の占領下にあったことを。

誰も知るまい。

締め切りを一日超過した男が、煙草を買い、ゴミを捨て、食い散らかし、最後にはすべてをなかったことにしたことを。

これは掃除ではない。 仕事でもない。 ましてや、単なる留守番などではない。

世界の秩序を守るため、悪の秘密結社と孤独に戦い続ける、ひとりの男の記録である。

そして俺はいま、再びキーボードへ手を伸ばす。

「待っていろ、暗黒ぽいぽい帝国。まずは煙草を買ってから、貴様らを滅ぼす――!」

……たぶん。

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