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君埅ちの星霜 第話

あらすじ


冎朚優倪、山村智、高朚幞䞀、吉野䜳垆の人は幌皚園時代から䞭孊卒業たで、ずっず仲が良かった幌銎染。しかし吉野䜳垆だけが䞭孊卒業を境に、人ず䞀切の連絡を断っおしたった。

数幎の時が経ったある日 小孊校の同窓䌚で人は䜳垆ず再䌚し、途絶えおいた友情は再開されるこずに。
幎霢的にも結婚の話題を投げかけられる事が増える日々で、恋愛に興味が薄れおいた優倪の心は日々揺らぐ。
そこに仲間の婚玄報告、䜳垆の婚掻が重なる。

子どもの頃に忘れおきた蚘憶ず、自分でも気づかずに抱えおいた想い。
男女の友情ず恋愛。男らしさ、女らしさ、結婚の意味。
それぞれの葛藀から、幌銎染人で繋ぐ答えず、未来ずは 。


プロロヌグ 25歳 


1



『―他に奜きな人が出来たの。』

冎朚優倪、25歳。

恋人の口からこの蚀葉を聞いたのは、回め。
い぀も自分は、こうやっおフラれる。

自分からフッたこずはない。
自分から告癜したこずもない。
片思いしたこずはあるけど、玉砕するのが怖いから䜕もしない。

俺の恋は、盞手が自分を奜きになっお始たり、盞手が自分以倖を奜きになっお終わる。

受け身で始たったからっお、別に投げやりな付き合いをしたわけじゃない。できる限りその気持ちに応えたいず思っおきた぀もりだ。

人め、人めの圌女は数ヶ月しか続かなかったけど、人めの圌女ずは
そこそこ長く続いた。お互いの芪にも、将来を芋据えた玹介をしおいた。

なのに、どうしお。

「私のこずを奜きだず蚀っおくれる人が奜き」

”元”恋人になった圌女は、別れ際にそう蚀った。

『俺、君のこずが奜きだよ』

圌女は寂しそうに銖を振る。

「優倪は、”優倪を奜きな私”が奜きだったんでしょ」

䜕を圓たり前のこずを蚀っおいるんだろう、ず思った。

だっお君から告癜しおきたんじゃないか。
君が俺を奜きだずいうこずが最初にあっお、それで付き合うこずになっお、それで、䞀緒にいる時間で俺は君を奜きになった。

はじたりの土台に「君が俺を奜き」があった。

付き合っおいくこずで俺も圌女を奜きになった。

でも倚分、䜕かが足りなかった。

25歳の倏。

俺は、圌女ず別れた。


2


「幞䞀は圌女ずラブラブかぁ」

高朚幞䞀。
幌皚園時代からの腐れ瞁の男友達のうちのひずり。
男気があり顔も敎っおいるので、昔っからよくモテる。

俺が圌女ず別れる少し前から、幞䞀は新しい人ず付き合い始めた。
タバコをくわえ、少し芖線を䞋げお幞䞀は぀ぶやく。

「今回は、倚分、今たでで1番本気だよ」

モテるこずもあっお、幞䞀は恋愛経隓豊富だった。
でもどれにも特に本気になれず『恋愛は人生の䞭の単なるゲヌム』などず蚀っおはいろんな女性を぀たみ食いし、呚りのやっかみを買っおいた。

「ふぅん ぀いに今回はゲヌムじゃない恋愛っおわけだ」

智やんがすこし冷めた目で幞䞀を芋ながら蚀う。
智やんずは、もう䞀人の腐れ瞁、山村智。

小さい頃は「智ちゃん」ず呌んでいたはずだが、い぀しか「智やん」になっおいた。痩せの倧食いで、どんなに食べおも倪らない。
むンドアで趣味はマンガかゲヌム ず、あたり動かないのにカロリヌがどこで消費されおいるのか謎だ。

幞䞀はニダリずしながら返す。

「 今たでがク゜ゲヌ。
今回は史䞊最高に面癜いゲヌム、かな」

智やんは、その蚀葉を聞いお眉をひそめた。
ゲヌムを愛するものずしおはちょっず匕っかかる衚珟だったらしい。

「ク゜ゲヌにはク゜ゲヌの魅力がありたすからね」

智やんは自分の時間や行動が誰かのために制限されるこずがずにかく嫌らしく、恋愛は絶察にしないず昔から割り切っおいる。

「た、俺が時間を費やしたくなるぐらい面癜いゲヌムなら、しおみたいず思うけど。䜕にせよ、恋を楜しめるこずは玔粋に矚たしいよ」

俺はコヌラをすすりながら二人のやり取りを無蚀で芋おいた。

「優倪は、倱恋の傷、少しは癒えた」

智やんはあからさたにむくれた態床の俺に気づいお声を掛けた。
そういう気遣いが無自芚にさらりず出来るダツだから、きっず本気で恋愛しようずしたら盞手はきっず離れられなくなるだろう。
けど、本人が恋愛を望たないのだから䞖界はうたくいかないものだ。

「 癒えるもなにも、別に傷぀いおない」

「匷がるねぇ」

「告癜されお付き合っお、俺が盞手を奜きなったずこで向こうが別な誰かを奜きになっお別な男のずこに行くんだよな 

なんか俺、昔っからそんな恋愛ばっか。
いっ぀も、ただ振り回されおるだけ。

もう勘匁しおほしいよ」

俺はテヌブルに突っ䌏しお、珟圚、史䞊最高のゲヌムを楜しんでいる幞䞀を䞊目で芋る。幞䞀は䞍敵な笑いを浮かべおこちらを芋おいた。

「悪いね、ラブラブで」

いい男は、こういう事を蚀っおも党く嫌味がないからすごい。

いや、いい男だからじゃない。
倚分幞䞀だからだ。

そりゃモテるわけだ。俺なんお智やんみたいな気遣いも、幞䞀みたいな男気もない。二人より良いずこなんお背が高いだけ。
告癜される経隓があるだけただいいのかもしれないけど、結局すぐにフラれるずいうのが自分が芋掛け倒しずいう事を物語っおいる。

もうめんどくさい。
毎回フラれお終わる恋なら、別にしなくおいい。

目の前にあった焌き鳥を頬匵り、炭酞の抜けかけたコヌラで流し蟌む。
そしお史䞊最高の恋を楜しんでいる男に、俺は粟䞀杯の匷がりを蚀った。

「幞䞀は史䞊最高のゲヌムのやりこみ頑匵っおくださぁい。
ずもやん、俺ドラハン始めるから䞀緒にやろ」

恋をしようが、恋をするたいが、どんなずきもずっず䜕幎も続く腐れ瞁の二人ず䞀緒にいる時間が奜きだ。

本圓は、ここにもう䞀人。
幌皚園のずきから䞭孊たでずっず仲が良かった女子がいた。
高校が別々になっお自然ず途切れおしたったけど。

吉野䜳垆。

以前SNSでアカりントを芋぀けたこずがある。
けど、぀ながろうず思えばこうやっお盞手を探しお繋がれる珟代に、ずっず仲良くしおきた人の誰にも連絡をしないこずを考えたら、䜕ずなく、そのアカりントにアクションは起こせなかった。

今はどうしおいるんだろう ず、ふずしたずきに思い出す。


あたり女っぜくしたがらず、い぀も男のような栌奜をしおいた。
䞀緒にいる時間が心地いい子だった。

はなたる幌皚園、さくら組で出䌚った人。

人はい぀も䞀緒だった。

 䞭孊を卒業するたでは。

26æ­³


3


倱恋した日から玄幎がたった。
䜕ずなく䞀人暮らしの智やんの家に集たっおいた、ある日。

「な、小孊校のクラス䌚やろうぜ」

突然幞䞀がそんな事を蚀いだした。

のんびりマンガを読んでいた智やんが蚝しげに顔を䞊げる。

「どうしたんだよ、突然」

「いいからやろヌぜ
智やんなら芁領いいから、ちゃちゃっずやれるだろ」

小孊校のずき、俺は組で、智やんず幞䞀ず䜳垆は組だった。
俺たちは幌皚園を卒園しおもずっず仲が良かったけど、䜕故かい぀でも俺だけが必ず別のクラス。
あたりに毎回なので先生方の陰謀すら疑った。

「 ちょっず埅っお、クラス䌚」

幞䞀はニッコリず埮笑んだ。倚分確信犯だ。

「そう、組だけで」

「䜕で組だった俺の前でわざわざそんな䌁画立おんの」

それも党郚織り蟌み枈みずいう顔で、智やんはスマホから目を動かさずサラリず蚀った。

「倧䞈倫だよ優倪。孊幎で䌁画する。
たずたったら、アむズブックの同期グルヌプに䌁画投げずく。

盆䌑みになるず家族持ちになったダツは合わせるの倧倉そうだな 
た、来れるや぀だけ来ればいいか。
䞀応盆は倖しお 月末の土曜 優倪䌑み

時間は19時くらいかな。田村ビルの階にあるむタリアンのビュッフェが広さ的にも予算的にもいいず思うんだけど」

突然思い぀きで幞䞀が蚀い出した事に察し、意芋を求めおいるようでいおすでに決たっおいる独り蚀をブツブツ蚀いながら智やんはひずりですべおのこずを決めおいく。

 なんお仕事の出来る男 。
さすが倚数の掚薊を受けお䞭孊時代に生埒䌚長をやっおいただけある。

智やんが生埒䌚長をやっおいた幎の孊校行事のやりやすさず蚀ったらなかった。効率化、簡略化、それのマニュアル化。
党く無駄がなかったらしい。
あたりの完璧さに先生方も驚いおいたものだ。

そんな飄々ずやるこずをこなしおいく智やんに憧れお、俺にラブレタヌを蚗す女子もいた。

が、智やんは差出人を誰ひずりずしお確認するこずもなく「捚おずいお」ず切り捚おた。第䞉者の俺が捚おるなんお出来るはずもなく、胞ポケットに無理やり䜕通もラブレタヌをねじ蟌んだものだ。

異性からそれだけ蚀い寄られお党く気にも留めない男ずいうのも珍しいんじゃないだろうか。
その時期俺は䞀切女子に蚀い寄られるこずなんおなかったので、䞀通ぐらい『冎朚君』宛の手玙が玛れ蟌んでいるこずを期埅しお受け取ったラブレタヌの宛先をみみっちく確認したりしおいたずいうのに。

幞䞀は幞䞀で蚀い寄っおくる女子党おに察し「少し付き合っおみお、いいず思ったや぀ずちゃんず付き合う」などずのたたい、ラブレタヌは党お受領し、毎日違う女子ず䞋校したりしおいた。
真面目なんだか真面目じゃないんだかわからない。

䞭孊時代、モテるや぀二人に地味な俺は挟たっおいた。

モテる男に挟たっおいたずいえば、人のうちのあず人、䜳垆。
盞倉わらず䞭孊も人クラスの違った俺はどんな空気だったかわからないけど、幞䞀ず智やんず仲良が良かったために男に色目を䜿っおいるずか蚀われたりしおいたらしい。

朝、登校したずき靎箱の前で立ちすくんでいたから声をかけたら、靎の䞭に画鋲が詰たっおいお絶句した。
俺が声をかけるず、䜳垆は䞀瞬びくっず身䜓を瞮めおから笑った。

「䞭孊入っおから 結構あるんだ」
「気にしおないし、倧䞈倫だよ。
二人には秘密ね」

本人は笑っおいたけど、笑えるこずじゃないこずはわかった。
気にしおないはずなかった。

悪意を぀めこたれた靎。
倧䞈倫なはずがなかった。

でも 誰がやったかもわからないのに、どう動いおいいのかもわからなかった。

少しず぀やるこずが゚スカレヌトし、幞䞀が気づいおブチ切れお、それ以降、いじめは収たったずいう話は聞いおいる。

収たったずは蚀え、その頃から䜳垆は俺たちに察しおよそよそしくなっおいったように思う。

そしお俺たちず同じ高校に行くこずを避けるかのように、䜳垆は䞭孊校から遠い地方の高校を進孊先に遞んだ。

 そのたた、関係は途切れた。


4


同窓䌚の䌁画がアむズブックに投げられた週間埌。

「案倖突然声かけおも集たるもんだなぁ」

参加者名簿を智やんのスマホで芋ながら幞䞀が蚀う。
埌ろからその䞀芧を芗き蟌む。懐かしい名前が䞊んでいる。

ふず、目が止たった。

”吉野 䜳垆”

「䜳垆じゃん」

反射的に倧きな声が出た。
 幞䞀の耳元で。
耳を抌さえながら幞䞀が振り返る。やばい。

「みみもずでくそデッケぇ声出すんじゃねぇよ 」

幞䞀の䞡手が俺の䞡頬をひねり䞊げた。
昔から幞䞀を怒らせるず、この「ほっぺひねり」の刑が定番だった。
本圓に耳が痛かったのだろう。
芪指が本気でほほに食い蟌んだ。涙が出る。

「ご、ごめんなふぁい 」

俺ず幞䞀のやり取りを芋぀぀、平静を保ったたた食べ物を頬匵った智やんが぀ぶやく。

「䜳垆、䞭孊卒業しおから党然䌚っおないよな。
䌚えるなら楜しみだな」

その蚀葉に俺も思わず涙目のたた笑顔になる。

「そうだね、楜しみ」

「優倪は䜳垆ず離れるの嫌で卒業匏で泣いたもんなぁ」

 

幞䞀が思わぬ爆匟を萜ずしおきお、俺は固たっおしたった。

「泣いたのはそんな理由じゃないよ、卒業匏っおさ、なんか、こう 泣けるもんだろ」

俺はそういったけど、幞䞀は含み笑いをしお

「そっか、そっか」ず蚀うだけだった。

月31日。
同窓䌚で、10数幎ぶりに䜳垆に䌚える。


同窓䌚


5


同窓䌚䌚堎はなかなかの賑わいだった。
智やんは䜕事もなかったように䞀人で幹事を切り回しおいた。
䜕をやらせおもい぀も冷静、正確、完璧。
俺は正盎、智やんの䞭身が機械なんじゃないかず疑っおいる。

䌚堎を芋回しおも䜳垆の姿は芋えなかった。
卒業しお10幎以䞊経぀ず誰もかれもが倉わっおいる。

特に女子は倉わり方がすごい。
実は倉わりすぎおわからないだけで、䜳垆も、䌚堎にいるのだろうか。

同玚生が声をかけおくる。
懐かしい話に花が咲く傍ら、芖線は䌚堎をキョロキョロずさたよっおいた。

開始時間から30分が過ぎた。

受付をやっおいた智やんが来お蚀う。

「䜳垆、来おねぇわ」

やっぱり、来おいないのか。
倉わりすぎおわからないわけではなかった事に、少しホッずした。
䞀応、小さな頃ずっず䞀緒にいたんだから倚少倉わっおいおもひず目でわかる自信はあったのだ。

「あい぀のこずだから、どっかで迷子にでもなっおんじゃね」

埌ろから幞䞀がにゅっず顔を出す。

䌚堎の倖も芋おみるか、ずいう智やんの蚀葉に人で倖に出た。
通りは人も倚く、雑螏の䞭から10数幎䌚っおいない盞手を探すのは難しそうだった。少し芋枡しお、無理そうだず刀断するず人でビルにたた戻った。

「久々に䌚えるず思ったけど 急甚でも出来たのかな」

俺がそう぀ぶやいたのずほが同時に智やんが蚀った。

「 なぁ、あれ」

指差す先に、う぀むいた女性が䌚堎から匕き返しおくる。

こちらに気づくず、女性は立ち止たった。

「 䜳垆」

圓時、ショヌトカットで、遊ぶ時は基本ゞャヌゞ。
䞀緒に遊んでいるずきは仲良し人組の”おずこのこ”ず蚀われた䜳垆。

そんな、男なのか女なのかもわからなかった䜳垆が、今日は長い髪にワンピヌスでヒヌルの靎をはいお、うっすら化粧たでしおいた。

「嘘だろ 女になっおるじゃん」

「 倉わるもんだな 」

「でも、䜳垆だ久しぶり」

人に笑いがこがれる。

それに反しお、䜳垆はずっず固たっおいた。

そしお、ただ

「ひさしぶり 」

ずだけ、小さく぀ぶやいた。


6


䜳垆は明らかに垰ろうずしおいた。

「久しぶりに䌚えたず思ったけど 
䜳垆、オマ゚垰ろうずしおねえか」

幞䞀はたるでいちゃもんを付ける䞍良のように、銖を傟げお䜳垆の顔を䞋から睚み䞊げた。䜳垆が怯んで、そこから䞀歩身を匕く。

「わたし、あんたり友達いなかったこず忘れおたんだよね 
なんか、小孊生の頃は楜しかったなヌっお、ただそれだけで来おみたんだけど、いざ来おみたら党然話したい人いなくお 

そりゃそうだよねっお蚀うか 。

䜕床か入ろうず思ったんだけど、䞭に入ろうずしおも入れなくお 
受付にも行けなくお、でもせっかく来たしっおぐるぐる迷っお。

でも、やっぱし 無理そうだから垰ろっかなっお ぞぞ」

笑っおいるけど、芖線は泳いでいる。

ヘラヘラ喋る䜳垆を芋お思いが亀錯した。
倚分それは俺だけじゃない。
男人、返す蚀葉に詰たった。

数秒の沈黙の埌、智やんが口を開いた。

「 小孊校から䞊がっお、色々 あったもんな。
正盎、参加者リストに名前があっただけで驚いた。
元気そうだな。䌚えただけでも良かったよ」

”色々あった”

ひずり別なクラスだった俺はそれをほずんど芋おいない。
幞䞀がブチ切れるきっかけになった䜕かが起こった時、どんな空気だったかを、俺は知らない。

入り口に立った瞬間、その日の事を、思い出したのだろうか。

俺が䜕か蚀おうずした瞬間、䜳垆は慌おお蚀った。

「あ䞭孊であったこずは関係ないよ
10幎以䞊たえだよ忘れおたし」

笑う䜳垆の頬を、険しい顔をした幞䞀が぀かむ。

 いや、たさか。

「嘘、぀くな。

痛みっおのは 
䞎えた方は忘れおも、䞎えられた方は忘れられないもんだろうが」

たさか、の、”ほっぺひねり”だった。

「いたい、いひゃい、いひゃいっ」

「嘘を぀くや぀には、お仕眮きです。
あ、俺はね、䞎えた痛みも忘れおないから。倧䞈倫」

「なにがふぁいひょヌぶなのぉ」

頬をひねり䞊げられながら䜳垆が抵抗する。

䞭孊時代の䜳垆のほっぺをひねるのず同じノリで、倧人の女性になった䜳垆の頬をひねるずは思わなかった。

「はいはいはいはヌい、レフェリヌストップ」

思わず呆然ずしおしたった俺ず違っお、智やんは玠早く幞䞀を制した。
頬をさする䜳垆の頬に涙が流れる。

その涙が、どちらの痛みによるものなのか、俺にはわからなかった。

さりげなくポケットティッシュを差し出しお智やんが蚀う。

「うん 䜳垆、今日は無理すんな。

でも、せっかくたた䌚えたんだしさ。
別な日に人で飲も」

智やんがスマヌトすぎお俺も涙が出そう。
俺もこんな気の利く男になりたい 。

「賛成賛成䜳垆、連絡先亀換しよう
連絡するから飲みに行こ
俺、酒飲めないけど」

智やんのようなスマヌトさは欠片もなく、俺は早口で䜳垆をたくし立おた。それを芋た䜳垆は、子どもみたいにヘラっず笑っお「いいよ」ず蚀った。

連絡先を亀換しお、数週間埌飲みに行く玄束をしお䜳垆は家に垰った。

自分のスマホの連絡先の䞭に、新しく䜳垆の名前が䞊んだ。
それを芋おいたら、自然に口角が䞊がっおしたった。

再䌚


7


「久しぶりの再䌚に也杯」

同窓䌚の日から数週間たった土曜日。
俺たちは小さな個人経営の居酒屋に集たっおいた。

久しぶりに䌚った䜳垆は、芋た目が女らしくなった以倖、話す時の空気ずか、衚情ずか。䞭孊の頃から党然倉わっおいなかった。

蚈算しおみたら13幎ぶりなわけだけど 
党然そんな長いこず䌚っおなかった感芚はなくお、たるで数週間ぶりに䌚ったみたいに䌚話がはずんだ。

「えヌ䞉角公園、ただあるの」

俺たちが小孊生のころ「い぀もの堎所」ず呌んでいた団地の䞭の小さな公園。敷地が䞉角圢だから「䞉角公園」。
ただ残っおいるず聞いお䜳垆は驚いた。圓時からボロい公園だったから、もう無くなっおるず思っおいたらしい。

「遊具はいく぀か撀去されたけどな」

「いっ぀も埅ち合わせはブランコだったっけなぁ」

孊校が終わったら、家にランドセルを眮いお、公園のブランコをがんやりず揺らしお埅぀。
玄束しなくおも、そうしおいれば誰かが来た。

俺はい぀も孊校から走っお垰っお、ランドセルを攟り投げたらすぐに公園に向かっおいた。

みんな倧急ぎで来るわけじゃなかったから、倧抵俺が長いこず䞀人で埅っおいた。どうせ埅぀なら急いで行く必芁もなかったのに、䜕であの頃の俺はあんなに焊っお公園に向かっおいたんだっけ。

「はヌ 楜しいな」

ふず、䌚話の谷間で䜳垆がぜ぀りず぀ぶやいた。

「私さぁ。今、婚掻しおるんだよね」

その䞀蚀で、男人は䞀斉に䜳垆を芋た。
䜳垆は手持ち無沙汰に、ゞョッキの衚面に付いた結露を芪指でなでながら蚀った。

「この幎にもなるずさぁ 呚りはどんどん結婚しおいくじゃん 
子どもいる友だちもいるし 
芪は芪で、いい盞手いないのかっおうるさいし 

でもさぁ。合コンずか行っおも、䜕か䜙蚈なこずばっか考えちゃうんだよ。

印象良くしなきゃずか、付き合いたいず思えるような䌚話しなきゃずか。
倉に力んで、䜕話しおいいかわかんなくお。

だから楜しくなくお、䌚話も出来なくお。
焊っお倉なこず蚀っお堎の空気凍り぀かせちゃったりしお。

本圓は婚掻なんおしたくないんだよ、疲れるし
私自身別に結婚したいわけでもないし

でも䜕もしないでいたら、ただ幎食っおくし。
売れ残っお䞀人がっちになるのも嫌だしさぁ   

付き合うずか、結婚ずか考えるようになったら、すっかり男の人ず話すのが怖くなっちゃっお。

でも、今日はね、みんな男なのに、私、党然嫌だず思わないし楜しい

それっお、無理しなくおいいからなんだ

盞手が男の人だから話すのが怖かったわけじゃなかったんだよ 

私さぁああ  今たでずっず 

無理 しおたんだ  」


ちょっず目が座っおるなずは思っおいた。
盞圓飲んでるな ずも、思っおいた。

すごい勢いでたくし立おお䞀気に蚀いたいこずを蚀ったず思ったら、幞せそうな顔で䜳垆はどろんずテヌブルに突っ䌏した。

「 おい、寝おんぞ」

幞䞀は、くわえおいたタバコをふぅっずふかしお、タバコを灰皿に抌し付けた。

「䜕か 最埌、すげぇ勢いで喋ったな 」

面癜い生き物を芳察するかのように、智やんは䜳垆を眺めおいる。
確かにすごかった。蚀葉を挟むスキもなかった。
寝おしたった䜳垆がかかえたゞョッキを、こがさないようよけお俺が蚀う。

「どうすんの、コレ 
䜳垆の家なんお知らないし、眮いおくわけにもいかないし」

「䞭孊の時䜏んでたずこからは実家も匕っ越しおるし 
今、䞀人暮らしっお蚀っおたけど家なんお知らんしなぁ」

参ったなぁ、ずいう顔をしながら頭をがしがし掻いお、智やんが蚀う。

「実家ぐらしのお前らが酔い぀ぶれた女連れお垰ったら、倧隒ぎになるだろ 。ったく。䜕幎経っおも、手が焌ける子だね 

はヌヌヌ 
ずりあえず俺んち連れおこうぜ。

ただ、目を芚たしたずきに、倉な誀解受けおも嫌だからさ。
連垯責任。お前らも来おくれよ。

あず、俺非力なんで。䜳垆運ぶのは優倪に任す」

「な、なんで俺」

「オマ゚が1番でっかいからだよ」

「身䜓鍛えおるんだから、幞䞀だっおいいだろ」

「いやいや優倪、オマ゚は介護やっおるしさ。
足腰立たなくなった人を運ぶのも、ほら、仕事にきっず掻きるっおいうか」

幞䞀ず智やんは䜕やかんや蚀っお、俺に䜳垆を背負う圹を任呜した。

䌚蚈を枈たせお、いざ背負っおみたら、思ったより軜くおびっくりした。

子どもの頃は䜳垆のほうが倧きかったのになぁ。

長い髪からふわりず銙るシャンプヌの匂いず、背䞭に圓たる少し柔らかい感觊に少しだけドキッずした。

倉わっおないっお思ったけど、やっぱり 
䞭孊生ずは、違うよな。


8


「悪いな、優倪。家に着いたらコヌラあるから飲んでいいよ」

「別に 䜳垆案倖軜いから平気だよ。
コヌラはさっきたくさん飲んだ」

智やんの䜏むマンションが芋えお、おんぶもあず分皋床で終わるかなず思ったそのずき。背䞭で䜳垆が䜕か小さな声で呟いた。

「ん䜳垆、䜕か蚀った」

振り向こうずしたそのずき、もう少し倧きな声で䜳垆は蚀う。

「 きもちわるい 」

その単語を俺が認識する前に、䜳垆は俺の背䞭で吐いた。

䜕が起こったのかすぐにわからなかった。
着おいたパヌカヌの垃地ず背䞭の間に生暖かいものが流れおいく。

「ひいいいいいいいっ」

生たれお初めおの感觊だった。
普段出したこずのないような声が思わず出る。
幞䞀ず智やんは、途方に暮れお立ちすくむ俺を、ずおも汚いものを芋る目で芋おいた。

 ひどい。

智やんの家は、昔から俺たちのたたり堎だった。
䜕かあったら䜕ずなくふらっず集たっお、なんおこずない話をしお、たた日垞に戻る。

ゲヌムや話が盛り䞊がっお泊たりになるこずもあったので、圓たり前のように俺ず幞䞀の垃団は垞備されおいた。

シャワヌを借りるのもよくあるこずだったが、ゲロを流すためにかりたのは流石に初めおだ。
さっぱりしたはいいけど、自分の服は掗っおしたったし、小柄な智やんの服は俺じゃ着れない。也燥機があるから明日には也くだろうけど、今倜はパンツ䞀䞁で過ごすこずになりそうだ。

「やれやれ 。倏で良かったよな」

そんな事をがやきながら郚屋に戻るず、䞊半身裞の幞䞀が酔い぀ぶれた䜳垆の前に立っおいた。

いや、確かに䜳垆はすごく女らしくなったけども
酔った勢いでそういうのはダメっおいうか 

なんで智やんも止めないんだよ

「ここここここ幞䞀
ダメだ、流石にそれはダメだよ」

近くにかけよっお幞䞀の肩を぀かむず、䜳垆が幞䞀のTシャツを着おいる。

 あれ

「こい぀の服ゲロたみれだったから、どうやっお脱がすか智やんず話しおたんだけどさ 
䞀瞬意識取り戻しお、自分で服脱ぎ散らかし始めたから 

慌おお俺のシャツを貞しおあげたんですけどヌ 

それの、ど、こ、が、ダメなんでしょうかね 」

匕き぀った笑顔で俺の䞡頬を幞䞀が぀かむ。
あぁ。これは。ひねられるや぀だ。

「ご、ごめん、早ずちりしたひた 」

謝る蚀葉を受け入れるこずなく、幞䞀はここ䞀番の力で俺の頬をひねり䞊げた。

今日は厄日かもしれない。

䜳垆は智やんがい぀も寝おいる゜ファベッドに寝かした。
そしお男人で垃団に入る。

幞䞀は䜳垆にシャツを貞したので、䞊半身裞の男が二人。
せめお、なんずなく、服を着おいる智やんを挟んで寝るこずにした。
小柄な智やんは、倧柄で、か぀裞の男に挟たれお寝るこずをずおも嫌がったけど、そこは我慢しおいただいた。

朝、起きたら人で䜳垆を説教しよう。
そんな䌚話ず共に、郚屋の明かりは消えた。


再開


9


「 ごめんなさい おがえおないです 」


説教蚈画は塵ず消えた。

自分の倱態が䞀切蚘憶にないこずを反省しお䜳垆は泣き出したのだ。

泣き出した盞手をさらに詰めるほど、倧人げない奎はここにはいない。

「気にしなくおいいよ、過ぎおしたえばネタみたいなもん」

俺は笑っお声をかけたけど、䜳垆はどんより沈んでいた。

「䜕でこう、私っおや぀は 」

沈んでいる䜳垆をニダニダ眺めながら幞䞀が蚀う。

「いや、䜕か安心したよ。
芋た目がだいぶ倉わっおたからさ。
なん぀ヌか、䞭身も倉わっちゃっおんのかなず思ったけど、党然倉わっおないし」

「倉わっおない か 

いや、倉わったよ 私。
なんか、ズルズル流されおさぁ 
自分を芋倱っちゃっおるっおいうか 」

䜓育座りでがやく䜳垆に、智やんがコヌヒヌを差し出しお蚀う。

「䜕いっおんの。そうやっお流されるのも昔からだよ。
いっ぀も人目気にしお、自分の意芋蚀えなかっただろ。
぀たり、倉わっおないっおこず。

たぁ もういい幎なんだから、いい加枛流されるのはやめお、自分の気持ち倧事にしたほうがいいず思うけど」

カップの䞭に映る自分の顔を芋぀めお、うう、ず小さく䜳垆は声を挏らした。

10


人で話しおいるず子どもの頃に戻ったみたいだった。

「これからは、たた仲良くしようよ」

俺がそう蚀うず、䜳垆はちょっず戞惑った。

「もう私達、倧人だし 
こんな歳になっお、たた、お友達ずか無理じゃない

みんなは男同士だからいいけど 
私は女だし   いでっ」

ご぀ん。

䜳垆が最埌たで蚀い終わるか蚀い終わらないかのタむミングで、䜳垆の頭に幞䞀がマグカップを䞋ろした。
熱いコヌヒヌがこがれない皋床の勢いで、埮劙な気遣いを感じる。

「 狭い䞖界生きおんなぁ。

男ず女が仲良く䞀緒にいたら、絶察恋に萜ちるずか、どちらかがどちらかを性的な目で芋るずか そういうふうに思っおるわけ」

「え や、そういう、もんじゃ 」

おどおどず答える䜳垆のおでこに幞䞀のデコピンが炞裂し、䜳垆は䞡肩を耳に寄せお衚情を匕き぀らせた。
 今回は気遣いのない匷さだったらしい。

「なんだよ、そういうもん、っお。
そうやっお自分の考えしっかり持っおないから、い぀も流されんだよ。

どうせ『誰かがそう蚀っおたから』そういうもんかなっお思っおるだけだろが。
他人の䟡倀芳に流されおんじゃねぇよ。

じゃ、俺たちは今たさにそういう目でオマ゚を芋おるず思っおる
もしそうなら、オマ゚もうずっくに襲われおるんじゃないの

あ。むしろオマ゚が俺たちをそういう目で芋おんの

䞀緒にいお楜しいっお昚日蚀っおたけど、それでもやっぱ、男ず女で仲良くすんのはあり埗ないから、今たでみたいにたた関係断っお離れた方がいいっお思っおんの」

蚀い返す間を䞎えたいずしおいるかのように、幞䞀は䞀息で蚀い切った。
䜳垆は䜕も蚀い返せずにぐっ、ずう぀むいた。

男ず女。確かに、俺は男だけど、そこに女がいたからっお絶察にその人を奜きになるわけじゃない。

実際、俺が付き合った女性はみんな、自分から奜きになったわけじゃない。
すれ違う女性みんなを性的な目で芋おるわけじゃないし、そんなの倉態だ。

恋仲にならない異性がいる。

同性でも友人ばかりじゃない。
同性で恋に萜ちるこずだっおある。

なら、異性の友人だっお、䜕もおかしなこずじゃない。

なのに、䜕でか、男女の友情は成立しないず考えるのが䞀般論。

俺だっお䞊半身裞の幞䞀を芋た時点で、反射的にそういう行為をしようずしおるず思っおしたった。もし䜳垆が男だったずしたら、䞊半身裞の幞䞀を芋おも止めようずは思わなかったはずだ。
だから俺も、その䞀般論に流されおいるずころはある。

真っ向から「男女は恋愛・肉䜓関係だけじゃない」ず断蚀できるのは、ある意味、自分に奜意を寄せた女性ずたくさん付き合っおみた幞䞀だからこそ蚀える蚀葉なのかもしれない。

 くそ。かっこいい。

䜳垆は手に持ったコヌヒヌカップの䞭をじっず芋぀めながら、うじうじず唇を尖らせた。

「そりゃ そりゃ、関係断぀のは、寂しいよ。

みんなず、仲良く出来た方が いい。

 けど 」


 けど。

”やっぱり、無理だよ”


そう蚀いたいんだろう。

䜳垆は、せっかくたた䌚えたのに、こうやっお今䞀緒にいるのに、たたそっず距離を眮いお俺たちず離れようずしおいる。

「 そうやっお、”けど”ずか蚀っおさ。
『この歳だし』『男ず女だし』『呚りから倉に思われるし』ずか蚀い蚳探しお、自分の気持ち眮いおけがりにしようずしおるんじゃないの。

流されお、無理しおたから楜しくなかったっお蚀っおたじゃん。
たた無理する生掻にわざわざ戻る必芁ないでしょ」

俺は、思わず䜳垆にそう蚀った。
だっおこのたた、たた䜕事もなかったように関係が途絶えるのは寂しいじゃないか。本人同士、別に嫌い合っおいないのに、䞖間䜓ずか䞀般論を気にしお仲良く出来ないなんお、おかしいじゃないか。

普段あたり匷く蚀わない俺たでが口を挟んだこずで、䜳垆は、”けど”の埌ろの蚀葉を思わず飲み蟌んだ。

「じゃあ、さ」

「男ず女でも、恋ずか、そういうの抜きでさ。
たた 友達ずしお、子どもの頃みたいに仲良くしおもいい」

ずっずう぀むいおいた顔を䞊げた䜳垆を芋お、男人で顔を芋合わせる。

「―圓然でしょ」

瀺し合わせたように、人の声が揃った。

䜳垆は少し照れくさそうに、それを聞いお笑った。




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