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日本らしさとしての「海の日」「山の日」

今年の「海の日」は7月21日、「山の日」は原則8月11日である。海、山をテーマとした祝日は世界的に珍しい。しかし、我が国の来し方行く末を照らす時、海、山に関する祝日は日本に相応しいと考える。日本文化と産業は、海に囲まれ山に抱かれた日本列島が育んできた。食料・エネルギー問題の今後も海と山に負うところが多いであろう。


祝日として30回目を迎えた「海の日」


今年(2025年)の「海の日」は、祝日として制定されてから30回目だったそうである。
「海の日」は、「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う。」日である(内閣府サイト「『国民の祝日』について」)。1995年の「国民の祝日に関する法律」(以下、祝日法)の一部改正により1996年から7月20日が「海の日」として設けられた。2001年の法改正により、2003年からは7月の第三月曜日が「海の日」と改められ、今日に至る。
なお、祝日としての「海の日」の前身は1941年に次官会議で制定を決定した「海の記念日」である。「『7月20日』は、明治天皇が明治9年東北ご巡幸の帰途、灯台視察船 明治丸で、青森から函館を経て横浜にご安着された日に由来」とのことである(公益財団法人日本海事広報協会サイト「海の日について」より)。
国土交通省サイト「海事」「海に親しむ」によると、「四方を海に囲まれた日本にとって、海は古くから物資の輸送や豊かな食を得る場として欠かせない存在であり、私たちは海を利用して産業を興し、近代化を遂げてきました。」「『海の日』を国民の祝日としている国は他に例がなく、四方を海に囲まれ、海と共に文化や歴史を紡いできた日本ならではの祝日といえます。」とある。「津々浦々」という表現で国中隅々までを意味し、交易の主体は船運で、食卓が魚介類に恵まれてきた日本らしい祝日であると言えよう。

祝日としては新しい「山の日」


一方、「山の日」は「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する。」日である(前掲、内閣府サイト)。2014年の祝日法の一部改正により制定され、2016年から8月11日が「山の日」として、最も新しい「国民の祝日」となっている。ただし、2020年、2021年に限り東京オリンピック・パラリンピックの特例措置で日付が移動された。
「『山の日』は、政府や行政が一方的に作った祝日ではありません。その始まりは、1961年、富山県・立山での登山者による『山の日をつくろう』宣言にまでさかのぼります」とのことである(公益財団法人全国山の日協議会サイト「山の日はなぜつくられたのか?」より)。
環境省サイト「自然環境・生物多様性」「自然大好きクラブ」「山にでかけよう」によると、「日本は国土の7割近くを山地がしめる山の国です。日本人は、古くから山に畏敬の念を抱き、森林の恵みに感謝し、自然とともに生きてきました。」「山の恵みは清流を生み、田畑を潤してわが国を囲む海へと流れ、深く日常生活とかかわりながら、豊かな心をも育んできました。」とある。林野庁サイト「『山の日』:山や森林・山村に親しむ」によると、「世界で初めての『山』に関する祝日である『山の日』制定」とあり、「海の日」と同様に世界に類例のない日本独特の祝日であることが示されている。環境省のサイトに「山の恵みは清流を生み、田畑を潤してわが国を囲む海へと流れ」とあるように、我が国の田畑は脊梁山脈をはじめとする山々が湛える豊富な水資源により成り立っている。また、山の豊富な栄養素が河川を経て海に流れ込むことにより、日本近海は世界有数の漁業資源の宝庫となっている。
 
写真:海と山(左:厳島神社から臨む瀬戸内海、中:下灘駅から臨む瀬戸内海、右:富士山)

出所:筆者撮影

神話から見ても海と山は日本の起源


古来我が国は海、山と密接に暮らしてきており、現代文明においても、海、山と切り離して日本は存在し得ない。そもそも日本神話は海や山に関わる話が多い。
日向(宮崎県)の鵜戸神宮に祀られている鵜葺草葺不合命(ウガヤフキアエズノミコト)は、初代天皇の神倭伊波礼毘古命(カムヤマトイワレビコノミコト:神武天皇)の父神である。そのウガヤフキアエズノミコトの父神が火遠理命(ホオリノミコト)あるいは彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト)で、いわゆる「山幸彦」である。日本神話にあまりなじみのない方でも日本で生まれ育ったのであれば、海幸彦と山幸彦の物語は聞いたことがあるのではないだろうか。海幸彦・山幸彦の物語についてご存知ない方はネットなどで検索してもらうとして、山の幸を体現する山幸彦(ホオリノミコト)と海の神である綿津見神(ワタツミ)の娘の豊玉毘売命(トヨタマヒメノミコト)が結婚して生まれたのがウガヤフキアエズノミコトである。前記したように、その子供が神武天皇であり、神武天皇から見れば山幸彦は祖父ということになる。今風に言えば、海の勢力と山の勢力の結合の結晶が、初代・神武天皇として建国したという神話を持つのが日本である。個人的には、シーパワーとランドパワーの結合と言いたいところであるが、言い過ぎだろうか。
なお、神話時代の御神名等の漢字表記については、古事記と日本書紀、その他の文献などで違いがあるが、本稿ではなるべく環境依存文字とならない漢字を採用している。

海と山は日本の今後も照らす


日本が今後とも生き残るためには、食料とエネルギーの二つの自給率向上が鍵となる。その鍵はいずれも海と山が関わっている。
二つの自給率向上が生き残りの鍵(3) -農業の企業組織化・大規模化-」(2023年2月22日)で「現存する全ての耕地を効率良くフル稼働させれば自給率を87%にできる計算になる」と書いたが、日本の山々が湛える豊富な淡水の存在が前提である。
二つの自給率向上が生き残りの鍵(4) -分散型エネルギーの推進-」(2023年3月6日)で「我が国は降水量が潤沢で急峻な地形が多いので、水力発電に向いている」と書いたが、これは山の恵みに数えられるであろう。「小規模な村落に、近隣の山中の小川に設置した数基の小水力発電施設」を設けて、村内電力を賄うことが可能なところも多いと思われるが、これも山の恵みである。
核融合の燃料となる重水素及び三重水素は海水中から取り出せるし、水素自動車をはじめとする水素エネルギーも海水から取り出せ、海に囲まれた我が国は将来のエネルギー源は豊富と考えることができる(「EVか?水素自動車か?-戦略的合従連衡-」(2024年6月7日)も参照)。日本近海に大量に存在していることが確認されているメタンハイドレートも海の恵みに数えて良いであろう。
海洋国家日本の復権に向けた造船新機軸」(2024年9月20日)では、世界初の電気運搬船や潜水貨物船等について触れた。これらはエネルギーや食料の運搬を含め我が国が海洋を通じて、今後とも持続可能な社会経済を続けていくための基盤となる。
今改めて、日本の来し方行く末に思いをはせ、「海の日」「山の日」の祝日を噛み締めたい。


20250729 執筆 主席研究員 中里幸聖


前回レポート:
自由貿易を基調とする国際経済秩序は終焉へ?」(2025年7月10日)

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