見出し画像

副首都法への期待 -副首都から複首都へ-

副首都法は様々な課題が山積しているが、東京一極集中の弊害除去の第一歩として歓迎したい。戦後の我が国は、東京を極とする大都市集中と地方疲弊の解消を何度も試み、具体的な法律も作成されたが、全く成果を出せていない。今回の副首都法は、大阪の強い熱意が背景にあるが、これを奇貨として国土構造の大転換へ繋げていくべきである。


副首都法の目的は、首都のバックアップ機能と多極分散型経済圏の形成

「国家社会機能継続性確保施策及び副首都の整備に係る施策の推進に関する法律」、いわゆる「副首都法」が特別国会閉会間際の7月24日に成立した。具体的な副首都設置の実現には課題山積であるが、まずは法律成立を歓迎したい。
今回の「副首都法」は、自由民主党、日本維新の会の衆議院議員による議員立法であるが、昨年(2025年)11月21日に閣議決定された「『強い経済』を実現する総合経済対策~日本と日本人の底力で不安を希望に変える~」に「防災・減災・国土強靱化の推進」として「副首都機能の整備」という項目が入っており、内閣として正式に推進する分野の一つである(「総合経済対策」の本文及び資料は内閣府ウエブサイト「経済対策等」に掲載)。首都が大規模災害に見舞われて機能不全に陥った際のバックアップ機能の確保、多極分散型経済圏の形成を通じた経済成長が副首都法の目的である(同法第一条)。
なお、「多極分散型経済圏」という表現は、1987年(昭和62年)の「第四次全国総合開発計画(四全総)」で掲げられた「多極分散型国土」というキーワードを継承するものであろう。1962年(昭和37年)に最初の計画が策定された全国総合開発計画は、「地域間の均衡ある発展」を掲げている。つまり、60年以上前から東京一極集中の弊害が認識されていたが、一向に解決されないまま現在に至っているのである。「多極分散型国土形成促進法」(1988年)、「国会等の移転に関する法律」(1992年)等の法律も形骸化してしまった。
 
図:全国総合開発計画の概要

出所:国土交通省ウエブサイト「国土計画の歩みに関する資料」「全国総合開発計画(概要)の比較」より抜粋

副首都法のポイント


今回成立した副首都法では、具体的な指定条件や整備施策等については、内閣に設置予定の国家社会機能継続性確保施策・副首都整備推進本部(以下、「推進本部」)が実施する立て付けになっている。
副首都に指定される条件としては、東京圏と同時被災の可能性が低いことがまず求められるが、「国の行政機構の立地状況」「人口及び経済の集積状況」「地方行政体制」について政令で定めるとしている。
副首都の整備方針として、「産業競争力の強化、経済活動の拠点の形成等」「交通網の整備、都市基盤の整備」「国の機関等の拠点の整備、国の機関等の機能の強化」「副首都と当該圏域内の他の地方公共団体との連携」等を定めることになっている。
副首都の指定については、道府県からの申出に基づいて、内閣総理大臣が実施する。報道によると、副首都法成立時点で、法制定を積極的に推進した日本維新の会の地盤である大阪の他、北海道、愛知、福岡が副首都指定に意欲を示しているとの事である。なお、副首都は一つだけなのか、複数となるのかについては、副首都法では定めておらず、「推進本部」等で議論することになるであろう。

副首都から複首都へ


今回の副首都法は複数指定時の役割分担、巨額コストの財源等の様々な課題が指摘されており、それらは「推進本部」での議論などを通じてより良い制度への具体化を図っていく事になろう。ただし、コストについて筆者は抑えることが可能と考えている(後述)。
制度の具体化においては、東京一極集中の弊害解消を最優先目標とするのが望ましい。また、一つの副首都にこだわるよりも、複数の首都候補すなわち複首都の設置を目指すべきである。
最終的には、「リスク分散と新時代への離陸に向け首都移転を」(2023年12月14日)で述べたように「転都」を目指すのが望ましいと考える。「転都」は、現在の東京よりはコンパクトな首都機能を備えた都市を、各地域ブロックに建設し、それぞれを地域の政治、経済、文化の中心とし、情報発信機能を持たせ、それらの諸都市が輪番的に首都となるシステムである。既存都市を活かしてコンパクトな首都機能とすることによりコストも抑えられる。
関係各位には、こうした視点も含めて今後の議論を進めて欲しい。なお、歴代の東京都知事及び一部の都民は首都移転の根強い反対勢力となっているが、いい加減、我が国の将来を先細りにするような態度は改めて欲しいものである。地方が疲弊し消滅すれば、タイムラグはあるにせよ東京も滅亡する。


20260729 執筆 主席研究員 中里幸聖


前回レポート:
少子化解消は、企業にとっても有効な投資案件であり、全日本人の豊かな暮らしの基盤を形成する」(2026年7月23日)

いいなと思ったら応援しよう!