日銀・利上げの終わり!
5/1日本銀行(日銀)の金融政策決定会合で政策金利の据え置きが発表され、同時に公表された『経済・物価情勢の展望(通称・展望レポート)』では、今年度・来年度の経済・物価見通しを大幅に引き下げ、経済・物価の下方リスクが大きいとの見方を示した。今後の金融情勢とドル円相場の行方を考察する。
1.想定以上にハト派の内容であった
トランプ関税の発動による景気や物価に対する悪影響を、日銀は想定以上に重く受け止めているとの印象が強く、2%の基調的物価目標達成も1年程度後ずれするとの判断が示されたことで、今年度並びに来年度の追加利上げの可能性が遠のいたとの感触を市場に与えることとなった。
2.トランプ関税の悪影響に鈍感な石破政権
民間エコノミスト調査で、今年第1四半期の日本のGDP成長率が、マイナス0.5%となるとの予測が出ている中、石破政権は、依然として景気支援としての財政支出に後ろ向きの姿勢を崩していない。また、米やエネルギー価格の高騰についても小出しの対策しか打ち出しておらず、効果的な物価高対策とはなっていない。
3.トランプ関税の金融・経済に与える影響
日本にとって基幹産業である自動車輸出に関する25%関税は、裾野の広い同産業に与える打撃が大きく、既に雇用削減の動きが出るなど、これまでの賃金と物価の好循環の動きに水を差しかねない状況が生じている。また、日本の対米輸出が減少すると、日本の貿易赤字が膨らみ、為替市場では大きな円安圧力となる。これは日本経済にとって、輸入インフレの上昇と景気下押しのダブルパンチとなり、日銀としては利上げもできない困難な状況を生み出しかねない。
4.利下げに慎重なFRB
パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長は、トランプ関税によるインフレ期待の高まりを考慮し、拙速な利下げは行わないスタンスを維持している。今後も景況感の悪化が、雇用の減速という実体経済の悪化に繋がるかどうか、慎重な見極めを行うと予想される。日米金融当局が政策金利を据え置く以上、現行のドル高圧力は続くことになる。
5.日米貿易交渉妥結の道筋
今後、日米貿易交渉が妥結に向かうとしても、内容は対米貿易不均衡是正で決着することは疑いようがない一方、自動車関税撤廃のハードルは相応に高いと想定される。また、日本企業の対米直接投資増を通じて、現地生産を拡大させる方向性は間違いなく、今後、米国からの自動車輸出相当分に関しては、日本からの対米自動車輸出関税を免除するなど、知恵を絞った細かい提案も必要となろう。
6.日米金利差縮小が円高に繋がらない背景
今後、米国の景気減速に合わせて、FRBが利下げに動いても、日本の対米貿易不均衡是正と対米直接投資増により、日本の年間国際収支赤字が、50兆円を超えて増大する事態も想定される。これは、ドルインデックスが下落しても、ドル円は下方硬直的となり、円が対主要通貨に対して軟調に推移することを意味する。いわゆるドル安・円安が共存する「隠れ円安」傾向が顕著となっていくことになろう。

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2025年5月2日執筆 チーフストラテジスト 林 哲久
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