テニス上達メモ604.タイミングが10割――上田綺世のヘディングシュートが教えてくれたこと
W杯上田綺世選手のやわらかなゴール。
その決め手はフォームではなく、やはり「タイミング」でした。
テニスも同じ。
長年盲信されてきたフォーム原因説の誤解を解き、ミスの正体を明らかにする『ベースメソッド』の真髄に迫ります。
▶空間と時間を支配したヘディングシュート
FIFAワールドカップ 日本対チュニジア戦――。
上田綺世選手による4得点目のヘディングシュートは、「空間認知」のなせる技でした。
なおかつもちろん「タイミング」です。
0.1秒ズレていたら、軌道が変わり、コースが変わり、スピードも変わりました。
その結果、相手キーパーに取られていたかもしれないし、ゴール枠を外していたかもしれないし、はたまた、違うコースへ飛んで違う形で得点もできていたかもしれません。
▶突き詰めると「タイミングが10割」
このときの決め手はもう、どんな形でヘディングするかの「フォーム」などではないのです。
突き詰めると、やっぱり「タイミングが10割」(『テニス・ベースメソッド』P.106)。
コンマ数秒が、明暗を分けました。
▶クオリティを生む「やわらかさ」
そして勢いよく蹴り込むスピードシュートだけが得点ではありません。
テニスも同じ。
強打は確かに武器です。
しかしそればかりが得点源ではありません。
タイミングさえ整えば、強打も軟打も打ち分けられます(『ベースメソッド』P.121)。
もちろん、ゴールへ至るまでには佐野海舟選手のアシストをはじめ、さまざまなチームワークがあったわけですけれども、そのプロセスを細分化してみると、やはり光ったのは「個のクオリティ」(関連記事「本田圭佑氏が語る『個のクオリティ』」)。
上田選手のふわりと浮いたヘディングシュートは、タイミングが生んだ「やわらかさ」だったのです。
▶「当てるだけ」はミスを誘う
言い方を換えれば、柔らかく打ちさえすればテニスはミスをしない、というわけでもありません
もちろん強く打つほどタイミングの精度はシビアにはなります。
とはいえ、柔らかく打てば入るというほど、インパクトの「瞬間」は単純ではない。
むしろそのような恣意的なスイングこそ、タイミングを狂わせます。
その証拠に、ミスを忌避してちょこんと当てただけなのにバックアウトしたという経験も、きっと誰しもおありだと思います(関連記事「弱く打っても飛びすぎる、強く打っても入るテニスの不思議?」
)。
▶フォームの乱れは「結果」である
改めまして私から訴求すると、この話は長年に渡り盲信されてきた「ミスにまつわる誤解」を解く大発見だったのです。
今までは(そして今でも!)、ミスしたのは「ヒザを曲げていなかったからだ」「テイクバックが大きすぎたからだ」「フォロースルーを振り抜かなかったからだ」「ラケット面が下を向いていたからだ」などと、挙げればキリがありませんけれども、フォームのマズさに「原因」があると疑われてきました。
しかし、真実はまったくそうではなかったのです。
フォームの乱れはあくまでも、タイミングがズレた「結果」。
それはあたかも、転びそうになったら「おっとっと」と、軸が前折れして前傾姿勢になるような、体による優れた「対応」です。
なぜなら転びそうになってなお、正しいフォームだからといって「背筋ピン」を意識していたら、着地タイミングを誤って踏ん張れずに、頭から突っ込んで顔面を地面に痛打してしまいます。
この場合は「軸が前折れした前傾姿勢」こそ、あえて言えば正しいフォームです。
▶「今」に生きるためのメソッド
テニスのミスは「タイミングが10割」。
細分化すれば、「早すぎた」か「遅すぎた」かの2つにひとつです。
ですからミスしたときにも、「面が下向きだったかな?」「ヒザが棒立ちだったかも……」「軸が折れていたんだ」などと、挙げればキリがないフォームのマズさをいちいち顧みる必要がありません。
その過去への振り返りが雑念「セルフトーク」を生んでいます。
そして次はこうしようと、未来へ意識が飛ぶのです。
『ベースメソッド』ならすぐさま、ボールに集中し直せます(『ベースメソッド』P.69)。
それが、今に生きるということ――。
▼『テニス・ベースメソッド――フォームを直さない上達論』

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テニスゼロ代表 吉田無型(よしだ・むけい)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero