🙇 女将さんの独り言 長月
少々前のことでございますが、ねこターボさんとかつもさんが『見逃してもらった記録』について盛り上がっておられました
そういえばあたしも見逃してもらったことがございましてね
あれは数年前、両親と和歌山県の産直のお店へ行った日のことでございました
自動車専用道路を通りましてね
高速道路ではございませんが、インターチェンジもあり、片側1車線で制限速度は70キロの道路でございます
あたしは後部座席に座る両親にシートベルトをするように申しまして、2人がちゃんと着けたのを確認したのち車を走らせましてございます
2区間を走ったのち本線を外れ、出口の信号へと速度を緩めますと、木陰におまわりさんがおられます
珍しいね、と親子で話をしながら進みますと、もう1人おまわりさんがおられまして、あたしの車を右に寄せて停まるように合図をされましてございます
あたしがその通りおまわりさんの目の前で車を停め運転席の窓を開けますと、おまわりさんは車の中を覗きながら
「うしろの方もシートベルトしてますか?」
と仰せになります
あたしが「はい、しています」と言うより早く父が
「外しました」
もうあたしは
「えぇ〜!?」
と絶叫しましたよ
けれども両親は
「さっきまでしてましたけど」
「今、外しました」
と、あっけらかんとしたものにございます
おそらく本線を外れた際に外したのでございましょう
おまわりさんはまるで鬼の首でも取った如くに
「シートベルトはしてもらわないと困りますね!」
と、あたしを睨みつけます
あたしが外した訳でもないのに何という不条理
あたしは運転席で肩を落とし、全身全霊で絶望を醸し出しましてございます
あたしは運転免許を取ってしばらくはペーパードライバーでございましたが、両親が近くへ越してから運転するようになり、それからはおまわりさんのお咎めもなく無違反の金印でございました
けれど、こんなことであたしの金印人生が途切れるのかと思うと、それはそれは悲しゅうございました
打ちひしがれておりますと、思いがけないおまわりさんの声が致します
「もう、、、今回はいいからっ!これから気を付けてくださいねっ!」
おまわりさんにすれば、スッとぼけた年寄りと小芝居好きな娘の、面倒くさい親子に引っ掛かったと思われた由にございましょうか
あたしは星の瞬く瞳でおまわりさんを仰ぎ見て
「すいません」
と口では申しましたが、その実『ありがとうございます』と手を合わせる心持ちにございましたよ
おまわりさんのお顔は、さしずめ不動明王さまの如くにございましたが、あたしには後光が差すありがたいお姿に見えましてございます
おかげであたしの金印人生は、未だに続いてございます
これからも一層の安全運転と、小芝居に磨きをかけとう存じます
うふふ
それでは、本日はこれにて
ごめんくださいまし
おわり
