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【TEALABO channel_36】「川辺の茶は、しぶとい」 20代で組合を背負った25年の想い-農事組合法人 グリーン工房かわなべ 古市健太郎さん-

鹿児島のブランド茶である「知覧茶」の作り手を直接訪ねて、その秘めたる想いを若者に届けるプロジェクト「Tealabo Channel」。

日本茶は全国各地に産地があり、各産地で気候や品種、育て方が違います。そんな違いがあるから「知覧茶」が存在します。一年を通して温暖な気候がもたらす深い緑色と甘みが特徴である知覧茶の作り手の話を皆さんにおすそ分けします。

第36回目は、農事組合法人 グリーン工房かわなべ の古市健太郎さんにお話をお伺いしました。

鹿児島県知覧茶の産地の中でも、一番端っこで、一番芽吹きが遅いと言われる南九州市川辺(かわなべ)地区 。市場が初競りのニュースで盛り上がっている頃、川辺の茶畑はようやく静かに動き出します 。

この「奥手(おくて)」という土地の宿命を「流れだった」と受け入れながら 、25年以上も現場を守り続けてきたのが、農事組合法人「グリーン工房かわなべ」の代表理事組合長の古市健太郎さんです 。

広大な茶畑に立つ古市さんは、一見すると非常に物静かで職人気質。でも、お話を伺うと、若くして組織を背負うことになった経緯や、川辺のお茶を生き残らせるための地に足のついた戦略が見えてきました。

 「誰もやらないなら、僕がやるか」という始まり

古市さんの人生は、常にお茶のそばにありました。お父様も茶農家で、組合長を務めた人物 。

古市さん自身も「継ぐのが当たり前」という空気の中で育ち 、加世田農業高校から静岡の国立試験場へ進みました 。

「鹿児島しか知らないとつまらないと思って、外を見に行きたかったんです」

と語る古市さん 。卒業後はJAで4年間お茶の指導員として働き 、平成9年に地元へ戻ってきました 。

そんな彼に大きな転機が訪れたのは、30歳を目前にした頃です 。当時の組合では、責任の重い組合長という役職を、誰もが「2年で交代なら……」と敬遠しがちな空気があったといいます 。

「それじゃあ方向性も決まらないし、取引先だって困るだろう」

そう思った古市さんは、若手ながら自ら組合長を引き受けました 。

「やりたい人がいなかったからなっちゃっただけですよ」と謙遜しますが、多くのベテランがいる中で組織をまとめるのは、相当な覚悟が必要だったはずです。 

「川辺スタイル」は、低コストと水色(すいしょく)勝負

川辺のお茶が抱える最大の悩みは、市場の値段が落ち着いた頃に出荷が始まることです 。早出しで高値を狙う知覧の南部と同じ土俵で戦っても、なかなか太刀打ちできません。

そこで古市さんが考えたのが、いかにコストを抑えて、選ばれる品質を作るかという戦略です。

  • 「強蒸し」で色を出す
    深蒸しにすると茶葉の色が悪くなってしまうため 、あえて「強蒸し」という独自のラインを狙います 。これで、川辺らしい透明感のある綺麗な水色(すいしょく)を作ります 。

  • 「待つ」ことで色を乗せる
    肥料や資材に過度にお金をかけるのではなく、被覆(お茶の木にシートを被せること)を10日ほどと長めに行い 、自然にお茶の葉の色が良くなるのをじっくり待ちます 。

  • 「しぶとい」経営
    売上の数字だけを追うのではなく、出ていくお金を最小限にして 、しっかり利益を残すスタイル 。

「うちは意外としぶといと思うんですよ」と笑う古市さん 。その言葉には、土地の条件を言い訳にせず、工夫で乗り切ってきた自負が滲みます。

現場は「話し合い」がすべて

古市さんの大切な仕事の一つが、工場とマーケットをつなぐ調整役です 。グリーン工房かわなべでは、取引先との連携をとても大切にしています 。

古市さんの製茶工場

「取引先さんがお客さんを連れてきてくれる。そのニーズに現場がどう応えられるか 。結局は、話し合いでやっていくしかないんです」

最近は衛生管理も厳しくなり、現場のやるべきことは増える一方です 。古市さんは、こまめに電話をしたり、集まったりして、組合員さんの統率を図っています 。

時には「嫌なこと」も言わなきゃいけない立場ですが 、それもすべては「今年は良かったね」とみんなで笑うためです 。

これからのこと、メンバーのこと

そんな古市さんが今、一番頭を悩ませているのが「人」の問題です 。

「工場を回せる人間がいなくなれば、どんなに良い畑があってもお茶は作れない」

製茶工場内の様子

現在、工場には古市さんの甥っ子さんも入っていますが 、彼ら次世代が「お茶をやってて良かった」と思える環境をどう作っていくか。それが今の大きなテーマです 。

取材の最後に、これからの組織のあり方について伺うと、こんな答えが返ってきました。

「今のメンバーが元気なうちに、より良いあり方に変えていきたい。それが効率化にも繋がり、みんなの幸せに繋がるのではないかと思っています」

それは、20代からずっと責任を背負い続けてきた彼だからこそ辿り着いた、仲間への思いやりが詰まった本音でした。

取材を終えて

古市様は、お会いした瞬間は少し緊張されているようにも見えましたが、お話しすると、一つ一つの質問に本当に丁寧に答えてくださいました。

決して「怖い」なんてことはなく、むしろ実直そのものなお人柄です。

「普通のことを、普通にやり続ける」

言葉にするのは簡単ですが、それを25年間、不安定な農業の世界で継続してきた重みは計り知れません。

そんな古市さんの「しぶとさ」が、今日も私たちの手元に届く一杯の「川辺のお茶」を支えている。そう確信した取材でした。

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【プロフィール】
古市 健太郎(ふるいち けんたろう)

農事組合法人 グリーン工房かわなべ 代表理事組合長
1973年川辺町生まれ 。静岡の国立試験場での研鑽やJAでの茶業指導員を経て 、家業に戻り30歳手前という若さで組合長に就任 。現在は、甥をはじめとする次世代が誇りを持って働けるよう 、「みんなの幸せ」に繋がる組織づくりに注力している 。

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