光明真言土砂加持霊験記

光明真言土砂加持霊験記


光明真言土砂加持霊験記

抑々真言陀羅尼の教法は、一切如来秘奥の教、如義真実の法門にして、顕の餘方に超過せり。是を以て六度経に云く、或は復有情諸悪業の四重八重五無間の罪を造り、方等経を謗する一闡提、種々の重罪をして消滅する事を得しめ、速疾に解脱し頓に涅槃を悟りて彼が為に諸陀羅尼蔵を説く云々。所謂陀羅尼蔵とは法身大毘盧遮那如来、秘宮に住して説きたまふ秘密曼荼羅の諸法なり。就中不空羂索大灌頂光明真言とは、大日如来五智の光明弥陀善逝心中秘密語、萬億無数の諸仏の秘蔵、四摂菩薩(金剛鉤・金剛索・金剛鎖・金剛鈴)の三摩地門也。若し信心の男女有りて、此の真言を持誦せば三毒の罪障忽ち滅し、二世の悉地を成ぜん。兼ねて以て先亡に廻向せば、霊魂速やかに無上の覚法に到らん。是即ち周遍光明の利益、神変加持の致す所なり。故に祖師、光徳この神呪を恃み、利済の要法となしたまふ。明恵上人には文殊菩薩、直に之を授けたまふ。仁海僧正には亡者来たりて親り之を授け、大御室性信は常に非人の重病を治し、官の僧正覚源は乃ち身後の霊託を作す。皆千本伝に見へたり。同体の大悲、弘誓の方便あり。謂く土砂を加持して尸陀林の中におき、或は墓の上に散じ、或は朽骨に触れば、他作自受の理無しと雖も縁起難思の力を以て、光明自然に受苦の依體を照觸して、永く三途の苦果を免かる。一巻の儀軌に云ふが如し。若し衆生有りて、此の大灌頂光明真言を二三七遍耳に経ることを得れば、此の人無量億劫生死の重罪を除滅することを得。具さに十悪五逆四重の諸罪を造ること、猶し微塵の世界に満てる如くして身壊し命終して諸の悪道に堕せんも、此の真言を以て土砂を加持すること一百八遍して尸陀林の中に於て亡者の死骸の上に散じ、或は墓の上に散じ遇ふごとに之を散ずれば、彼の所の亡者、若しは地獄の中、若しは餓鬼の中、若しは修羅の中、若しは傍生の中にもあれ、一切不空如来不空毘盧遮那真實本願大灌頂光明真言神通威力、土砂加持の威力を以て時に応じて即ち光明、体に及び、諸の罪報を除き、所苦の身を捨てて西方極楽国土に往き、蓮華に化生して及し菩提に至るまで、更に堕落せず。復衆生ありて年を連ね月を重ねて痿黄疾悩苦楚万端ならんに、是の病人は前世の業報なり。此の真言を以て病者の前に於て毎日高聲に一千八十遍を誦し、而も真言者の加持を被れば宿業病障を除くことを得。又云、若し知恵弁財を得、或は貴賤愛嬌を獲、乃至長寿福楽を得、若し死者の為に此の真言一遍を誦すれば必ず無量寿如来、死者の為に手を授け極楽浄土に引導す。況や七遍二十一遍誦せば功徳更に量るべからず。若し墓所に置きて四十九遍を誦せば、必ず無量寿如来、斯の霊を荷負して決定して極楽浄土に生ぜしむ。若し此の光明真言を誦持せば、法師の其の身を吹く風来たりて、一切衆生類の身に觸るれば、皆悉く苦果を解脱して人天の果を証得す云々。當に知るべし、無心の砂も此の真言を以て加持すれば即ち六道四生の亡者に悉く往生浄土の益を施し、速やかに見佛聞法の利を得せしむ。是即ち六大無礙の薫力、遍一切處難思の縁起なり。若し三密加持の妙用、大悲深重の秘術を蒙らざれば、何ぞ菩提の妙果に至ることを得んや。大悲無窮、長舌無誑、努々疑謗して永遠の誤りを引くこと莫れ。若し捨てて信用せざる者は、徒に高恩を負ひて、報ずる日、転た遠く、求めて信順する者は魂を華台に摂して孝順即ち立す。幸いに真言に逢ひ、土砂に逢ふこと難しからず。凢そ有心の君子、誰か奉行せざらんや。亦其、高野山は両所明神有応の法崛、三地大聖人入定無漏地なり。峯は八葉に聳へ華蔵荘厳を移し、道は両部に象って密厳国土を表し、大師結界の地、量七里佛法障礙の悪神は遥かに境外に去りて正法守護の善神は此の峯に影向したまふ。若し一たび此の地を踏む人は永く三途の悪趣に帰らず。苟も信を此の山に致す輩は、必ず慈尊下生の法会に遇ふこと、近くは是大師引摂の本誓頼みあり。遠くは則ち明神加護の神約疑ひ無し。良におもんみれば王臣兆民昔より以来此の勝境に於て菩提の種子を殖へて職として此の由なり。然れば則ち如是の勝地に於て、此れ是の秘法を厳修せば、依正(自分(正報)と環境(依報))相応し、人法相成じて疾く霊験を獲ること、佛語豈唐捐ならんや。庶幾くは諸の善男善女、斯の霊峰を仰ぎ斯の神呪に帰して、多少の財物を喜捨し、無二の大願を補助せば、平等大施の功徳を以て、現世には諸の災難を脱れて、自ら福寿増長の栄を重ね、當来には勝妙の快楽を受けて必ず大覚円明の臺に遊び、因って経軌の要文を撮って略ぼ鄙誠を述る爾。(終)

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