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【14-11前編】ジークアクス全12話真相考察⑪-1 全力をぶつけて解放されるエグザベVSシャリアとマチュが師弟の関係を越えた瞬間あと時間凍結の仮説


 第11話は、ゼクノヴァに呑み込まれるアバオアクーと、イオマグヌッソ内部に侵入したジークアクス対ジフレドの戦闘から始まる。
 しかし、これは後にまとめ、11~12話にまたがって外縁部でぶつかるシャリアとエグザベの戦闘を先に見ていこう。

マチュにオールレンジ攻撃の攻略法を伝授した上でエグザベには「それくらいわかってるよね」ともう一段ギアをあげるシャリア


「気がついたときにはやられる。これがオールレンジ攻撃」

 ターゲット側になってはじめて腹の底から理解できるシャリアとキケロガの凄まじき戦闘能力。敵に回すとこれほど恐ろしい相手だったとは。いまさら実感してエグザベが歯を食いしばる。

 このシーンの直前で、シャリアがマチュに「オールレンジ攻撃回避の秘伝」を教えている。
 「どれほど予測不可能に見えても、それを動かしているのは人の意思です。有限の武器、有限の攻撃回数。その組み合わせに過ぎません。それを操るニュータイプも、しょせん人なんですから」
 能力の高いニュータイプならこれができるという前提の教授だ。
 エグザベにも分かっている。対戦しながら、その「人の意思」を(気配として)とらえようと、してはいるのだ。

 ところが、シャリアのそれが全く読めない。
 「攻撃の気配が読めない」とエグザベが泣きそうな声で驚愕している。
 「コントロールを読みあう」というニュータイプ戦で、さらに「そのコントロールする気配を消す」という神業を、シャリアはやっているのだ。

 もう一段、別次元から仕掛けてくるシャリアが、エグザベには本当に灰色の幽霊に思える。この二つ名は伊達でなかった。

 近衛のギャン部隊は、あっという間に壊滅する。
「キシリア様のニュータイプ部隊、君たちは強い」
「ゆえに手加減して勝つことは難しい」
 この戦闘中に、シャリアは余裕で赦しを乞うている。

 第7話で、連邦の巨大最新鋭機を据え物斬りにしたキケロガが、まったく油断せず、気配を消して全力で襲ってくる。完全に本気だ。エグザベは、この信じられないほど強い敵と、真っ向から戦わなければならない。

ミゲル事件以前のエグザベは信頼関係を理想化する傾向があった

 しかし、エグザベとて迷いながらサイド6を這い回っていたときとは違う。特に、ミゲル事件を経て、いまの彼はシャリアの謀反を「戦争ならありうる裏切り」として割り切れている。

 吶喊するマチュのジークアクスを囲んだときも、エグザベは「そういうこともある」と軍人の仮面をかぶって対応した。

 しかし、真の成長はその割り切りでも仮面でもない。
 シャリアがエグザベの部下を全滅させたとき、この仮面は剥がれたはずだ。(演出上、そのために彼の部下は死んだと言っていい)

 エグザベの本心は剥き出しになる。
 だが彼は「信頼を裏切られた!」とか「上司として尊敬していたのに!」と、相手を理想化して一方的に恨みをぶつけたりはしない。
 ミゲル事件を足場に、エグザベは互いの哲学を開示する場へ飛び込んだ。
 彼は対話を選んだのだ。
 だがそれは、自己欺瞞を剥ぎ取られる苦行であった。

ジオンと同化した肉の仮面を血まみれで引き剥がすときがきたエグザベ

「キシリア様は、ニュータイプの未来を考えておられる」
「あなただってわかっているはずだ」

 叫ぶエグザベに、シャリアは淡々と返す。

「そのために、地球に住む人々を滅ぼしてもかまわないと?」

「そんなことできるわけない」

「このイオマグヌッソなら、できるかもしれないのです」

 エグザベはかつて、理由と証拠がないと事実を認めない人間だった。
 彼は戦争難民という立場から、必死にジオンと同化しようと堅実に歩み、実際に近衛部隊の隊長という地位を掴んだ。成功している。だが、キシリアの最終的な「理想」を理解できていない。

 彼にとってキシリアは「冷徹で現実的な指導者」という認識だ。
 野心家だとしても、地球人類の根絶などというトンデモぶりを理解できない。

 彼は、ルウム戦役という大災害に焼け出された。
 身を寄せて同化を目指しているジオンが、そんな頭のおかしい所だったと理解したくない逃避もある。
 その誤魔化しが、シャリアによって追及される。

「キシリア様なら、躊躇うことなく、それを行うでしょう」

 そうだ。ついさっき目の前で、アバオアクーの大破壊を目撃した。
 発令者がキシリアであることも理解している。

 しかし、これを「はい、そうですね」と呑むのは、故郷を滅ぼした鬼畜にへつらって同化しながら、水と酸素と居室にありついた自分を全否定することになるのだ。

 衝突する二人が小爆発の灯を曳光しながら宇宙を駆ける。

シャリアと対等に理想をぶつけ合う成長したエグザベの姿だが

「キシリア様を亡き者にすれば、さらに混乱が広がってしまう」

 ギレンが死に、キシリアまで死ねば、ジオンは統率者を失いバラバラになる。やっとのことで拾った一年戦争の勝ちを、また連邦に奪われるだろう。

「いまジオンが崩壊すれば、ニュータイプも道連れとなります」

 サイド6で、連邦の非人道的なニュータイプ(強化人間)の使い道を、彼らは目撃した。ギレンの「クローン強化人間計画」が進められたら、数に平押しされ、自分たちニュータイプ部隊は滅びただろう。
 しかし、ギレンを倒し、ニュータイプ推進派のキシリアが決着をつけてくださった。エグザベたちの未来は、政治的には安泰となりそうだったのだ。せっかく勝ち馬に乗れたのに。

 物語のはじまりの頃、電車でもバーでも、何も言い返せなかった青年が、いまやこうしてシャリアと対等に理想をぶつけ合っている。我々視聴者も「成長したものだなあ」と思う。

 しかし、彼の哲学は個人の事情を出ていない。
 難民生活を思えば無理もないが、ただ自分の立場を守りたい言い訳だ。

 エグザベは「ここから先」「ニュータイプの未来」「人類の革新」が見えていない。彼は、地に足をつけて歩むことを望みすぎていて、新時代への飛躍が、まだできていないのだ。

余談:シャリア対エグザベ戦でアルテイシアのことを発言できないシャリア

 エグザベには、もう一つ迷いがある。
 シャリアを単なる総帥のスパイだと考えられないのだ。
 エグザベから見れば、シャリアは、誰の命令もなく、独断でテロを仕掛ける、所属不明の危険人物にしか見えない。だが、そんなわけがないのだ。

「キシリア様を殺害して、その後どうするんだよ」という当然の疑問が、ニュータイプ空間で、エグザベから何度も飛んでくる。
 だが、シャリアは、即位前の王女アルテイシアに血の臭いをつけるわけにいかない。彼女の下に就いて行動しているとは語れないのだ。

「独裁のもとでは、人の革新など起こるはずもない」

 従って、理想を語るしかない。
 シャリアがシャアから継承した未来を、より純粋に、自分の手で開こうとしているのは本当である。

 したがってこの場は、シャアの理想VSキシリアの理想という構図だ。
 じっくり話せば、迷いのあるエグザベを説得できそうな気もするが、いまは時間がない。

 遠く、イオマグヌッソ内でゼクノヴァの反応があった。その影響で極大化した認知能力を利用して、シャリアはキシリアの現在位置をつかむ。

 暗殺危機に怯え、最高レベルのセキュリティで現在地を隠しながら生きてきたギレンとキシリアの所在地を同時に把握するには、これしかなかった。
 ゼクノヴァによってブーストされたニュータイプ能力を利用する。
 そのために「確実に起こるゼクノヴァ(人為による発射)」を用意するため、シャロンの薔薇を捧げてイオマグヌッソを完成させたのだ。
(ただ、それだと「一回くらいはゼクノヴァ砲を撃たせるつもりだった」という話になるので、マチュに薔薇の少女救出を願ったり、ニュータイプの未来について案じていた点と矛盾する)(まだ考察の必要があるね)

 シャリアの思惑は見事に当たって、ターゲット位置は確定された。
 エグザベがその意を理解して唸る。

「そういうことか」
 暗殺対策に常に居場所を隠しているキシリア様の現在位置を、ミノフスキー粒子散布下でどうやって特定するのかと思っていた。
「中佐、あなたの狙い通りにはさせない」

 結局、ニュータイプは戦闘でしか、自分の理想を貫き通せない。
 誰かを犠牲にしなければ、理想は実現しないのか。
 シャリアはそれが悲しい。
 だが、仕方がない。
 実力で、キシリアの代理である彼を打ち倒す。

 このときの映像演出に注目したい。キシリアの搭乗したチベを追いながら、シャリアとエグザベの二人は画面左側を向いて突き進みながら戦闘する。二人ともだ。
「映像の原則」によると、左を向いて突き進むのは主人公の姿。
 つまり、シャリアもエグザベも、同じく主人公としての正義を持っている。

 これが「できれば、あなたのようなニュータイプを殺したくはないのですが」とシャリアが迷いを吐露するシーンで、彼のみ逆転して右を向いていた。
 エグザベに非があるならわかる。先述のように、彼は独裁を手に入れ粛正に狂っていくキシリアの手先で、それに迷いを抱いている。でも彼は左向きのまま、主人公の位置を保持している。迷いながらも全力をぶつけようとしているからだ。

 では、シャリアが迷いを抱いて右を向くのはなぜか。
 左から右を見るのは「強者の演出」だ。これはわかる。
 しかし、物語のテーマ上、シャリアには、実は大きな非がある。

 途中で右を向いて迷いを語るシャリアは、自分の正統性に疑問があるのだ。その答えは、ソドンのシムスとコモリが教えてくれるのだが、ここはまず戦闘の決着までを追おう。

 シャリアは、姿勢のみ反転してフリップマニューバに入る。背中向きに慣性で飛び、キシリアのいるチベに急接近を続けながら、エグザベに正対してこれを迎え撃つ。

 メガ粒子砲二門による強力な斉射。
 一門は直線。これを旋回回避したエグザベめがけて、もう一門。
 ビームはスイープして、空間を薙ぎ斬る。
 回避可能な角度を絞った場所が自然にできる。
 その罠にはめられたエグザベのギャンに、もう一射。

 これを、前方加速で「突撃しながら回避」するという、実力に支えられたエグザベのクソ度胸がかわす。いったん距離をとろうなどと考えない。死ぬ気で、この二段も三段も上の、伝説でありながら現役最強のニュータイプに食らいついていく。

 エグザベは、左右に広がった二本の有線ビーム砲の懐に飛び込んだ。つまり左右には逃げるスペースが無い。それを狙い澄ましたシャリアが、縦薙ぎのビームで一閃。エグザベ機をサジタル面で真っ二つに叩き割った。

 しかし、エグザベはその上を読む。進行方向に背を向けて戦うとき、人間は瞬間瞬間、その見えない死角に精神を走らせる。ミゲルがニャアンへ銃を向けながら、エグザベに弁明しようと意識を割いたとき、ニャアンは机を蹴って射線から脱出した。同様の間隙をついて、エグザベは、ブースターランスの背後から離脱していたのだ。

 エグザベ迎撃のため慣性飛行中のキケロガは、ここでトドメを刺すつもりで加速を緩めている。しかしギャンの最強武器を捨てる気でエグザベは加速を押し込んだ。その速度を借りて軌道を変更、斜め上の死角からビームサーベルを構え、彼は全力チャージの突進突きを仕掛ける。

 全天周囲モニターのキケロガには、基本的に死角はない。ただ、人間はどうしても高速戦闘中に視野が狭くなる。それをついた見事なエグザベのランスチャージだ。

 ところが相手は段違いに強いニュータイプである。
 シャリアの「ひらめき」が、一瞬だけ早かった。全身を一本の槍にしてぶつけるように突っ込んでくるエグザベを、背部ブースターから接続ケーブルを無理矢理に延長してシャリアは回避した。

 サイコガンダム戦で花を持たせてやった少尉が、これほどできる男だったとは。

 つい、

「彼は、そう言っていました」

 と、自分の背景を話したくなってしまったシャリアが、なんとか「彼」の名前だけは我慢に成功している。

「彼?」

 ソロモンで消えたシャア・アズナブルの意思を、シャリアは継承している。だが、ここで名前は出さなくていい。戦争犯罪人は自分一人でいいとシャリアは覚悟しているからだ。

 この後に及んで、おそらくシャリアは四門ある有線メガ粒子砲を巻き取っている。エグザベに勝てたら終わりではないからだ。常に次の戦闘動作を織り込みながら戦っている彼が、四門そろえての一斉射を撃ち込む。モビルアーマーの大火力まかせの力技だ。とっさに構えたギャンのパルムラ型の円盾ごと、エグザベは吹っ飛ばされる。

 ランス、シールド、左腕と、エグザベとギャンの戦闘力は削られつくした。シャリアは、チベに向かって、再び加速する。

 エグザベは、ここで一時的に戦闘から切り離された。
 ブースターランスを失って半壊した機体では、もうキケロガには追いつけない。宇宙空間で(それでもキケロガを追いながら)、エグザベはシャリアの強さを回想する。

 キシリア様のやったことを、自分は受け止められない。
 しかし、自分がこれまで積み上げてきたものも手放せない。

 この迷いを抱いたまま、持てる技能を全部ぶつけてシャリアに挑んだのだ。そして全部を破壊された。

 彼の迷いは、執着を象徴する左腕とともに、シャリアに打ち砕かれた。

 全力だった。
 ハクジを囮にした大技もかわされた。
 完敗だ。

 エグザベはここで、ひょっとすると、笑ったかも知れない。
 ジークアクス全編を通じて、ついに笑顔を見せなかったエグザベ。この演出がためてきたものが解放されるタイミングは、ここしかない。
 その理由が「ジオンに就くことの矛盾」による憂悶なら、それが解消されたのが、今なのだ。

 彼はここで、笑ったと思う。

 爆笑か、自嘲か。
 吹っ切れた顔になったエグザベは「それはそれで、平和を守らなきゃいけないだろ」と、(自分で決めた)新たな動機を抱いてシャリアを追う。

シャリア・ブルと心中するつもりで話す古めかしい軍服のシムス

 時間を戻そう。
 キシリア近衛のギャン部隊を壊滅させ、エグザベ機も撃墜せんとシャリアが仕掛ける。それを見ながらラシット艦長が呻く。

「いったい中佐は、どっちの味方なんだ」

 この船の中ではまだ「シャリアはギレン派のスパイで、表向きキシリアに従っている振りをしているのでは」と思われている。
 そしてキシリアがギレンを暗殺したことも(直前にイオマグヌッソ管制との通信が回復していない報告が入っているので)知られていない。
 ソドン内部では、いまだにギレンが生きていて、キシリアが政争を頑張っているので、その支援のつもりだ。

 しかし、シャリアとエグザベの戦闘を見て「ついにシッポを出しやがったか」にならないあたり、シャリアへの信用がわかる。
 それほど圧倒的に、彼は強く、そしてジオンの英雄なのだ。

 ただ、それだけに意図が分からない。

「シムス大尉は把握しているのか」

 ここでシムスは「休め」の体勢を解いて姿勢を正し、告げている。

「中佐はキシリア様を排除しようとしているのです。来たるべきニュータイプの時代のために」

 これは、間違いなくシャリアの考えだ。
 出撃前、シムスに「自分の本意を問われたら話して構わない」と言い含められていたのだろう。
 シャリア本人は、この戦いが終わったら軍事法廷にて裁かれ処刑される予定で、ここに帰っては来ない(あるいは自由な面会は不可能になる)からだ。

 それとも正史機動戦士ガンダムのように、シムスには「逃げろ」と指示していたかもしれない。
 後者なら、その指示に逆らってシムスは付き合っていることになる。

 いずれにせよ、彼女は「ここで謀反の罪を問われて殺されても構わない」という覚悟で、シャリアに並んでいるのだ。
 シムス大尉は、命懸けで喋っている。

 ただ、ソドン内部の空気は「なにを言ってるんだこいつは」で流される。
 それは、本当にシャリアが歩むべき道ではないからだ。

「シムス大尉」

 もともとからララ音を聞いたり、最近だとゼクノヴァ光に炙(あぶ)られて「わからないけど、なんかわかった」状態になっていたコモリが理解を示して、否定する。

「本物のニュータイプなら、そんなことはしないよ」

 規律の人であったコモリ少尉が、二階級上のシムス大尉に対し、敬語を使わず話す。「マチュ」が移って彼女寄りになっているのだ。
 そして、このときの顔が、怒っている。

 思い出そう。
 このときの話題は「シャリアはどういうつもりなんだ」という問いだ。

 シムスは「来たるべきニュータイプの時代のためにキシリアを排除しようとしている」と答えている。シャリアの代理として。

 なのでコモリはその代理に向かって、これを否定しているのだ。
 本物のニュータイプなら、誰かを排除してまでニュータイプの時代を実現しようとはしない、と。

 シャリアとエグザベの戦闘中、シャリアの向きが変わって迷いを吐露するシーンがあった。エグザベを排除してニュータイプの時代を作るという間違いに、シャリアも気がついているのだ。

 この後、シャリアはマチュの「(誰かの)自由のために(自分が)傷つくことを怖れない」姿を見た。
 本物のニュータイプは、自分(たち)の自由のために、誰かを傷つけはしないのだ。
 シャリアにも、薄々わかっていた。
 マチュの姿を目撃して、シャリアは自分たちの進む未来を見たのだ。
(マチュが巨大ガンダムの首を切り落とす瞬間に、どんな心情を通過していたか、シャリアには分かった。それについては、また最終回のシーン考察で語ろう)

 このまま死んでもいいと思っていたシャリア。
 それを生かしたのは、このマチュの姿であり、そしてエグザベの絶叫だった。後者についても、また最終回あたりで語ろう。

 シャアのセリフ「洞察に満ちた優しさを持つものがニュータイプ」と重なるように、コモリもマチュとの交流を通じて学んだ「優しさや理解を基盤としたニュータイプ像」を基準にしている。

 そして、同時にシャリアを本物だとも思っている。
 だから、その本物が排除に走ってしまったことが悲しく、怒っているのだ。

以後ニュータイプ現象やゼクノヴァについてはコモリが解説を担う

 ソドンのブリッジで戦士の帰還を待つ女二人。
 ニュータイプ理解者たちは、それぞれ古い時代と新しい時代の象徴である。
 ニュータイプについて説明できる人間は「古い軍服を着たシムス」と「新しい軍服を着て(私服をマチュと共有している)コモリ」の二人だ。

 シャリアを挟んでこの二人が立場を入れ替えたのが、このシーンである。
 物語でニュータイプやゼクノヴァについて語る役目は、マチュを通じて「本物のニュータイプ」を理解したコモリに移っていく。

 そして、シャリアは一直線に、チベを目指して再加速をかけた。

ゼクノヴァ砲の二射目で地球の文明はほとんど滅んでしまう

 一射目の反動で、ニャアンは吐き気に苦しむ。
 その耳に、薔薇ララアの悲鳴が届いて脳裏に刺さった。

 シャロンの薔薇に、寄生虫のように食い込み、養分を吸い取り、殺人兵器に転換して宿主を破裂させようとするシステムに、ニャアンは直結している。

「誰? 私の邪魔をしないで」

 いまのニャアンは、キシリア思想の手先となって、今後のニュータイプ世界を血と暗闇に塗りつぶす大殺戮を実行した直後だ。
 そして「シュウちゃんを取り戻すには、もっと大きなキラキラが要るんだ」と動機は個人の域を出ず、二射目を設定している。

 座標が地球のどの地区を指定しているのか、文字情報はない。
 しかし、月の自転軸と地球の自転軸はほぼ並行だ。ワイヤーフレームが自転軸に合わせて描かれており、イオマグヌッソも自転軸準拠の座標データを作っていると考えると、二度目の発射で選択された地域は、北極圏から下がった中緯度の温帯である。

 シミュレーションは、ここを中心に大都市がいくつも入るような面積を、丸くえぐり取っている。

 被害予想の赤い円盤が広がるのを、人口または都市の位置だと考えるなら、右の飛び地はロシア、左の飛び地がアイスランドあたりで、北ヨーロッパを狙っているように思える。

「ガルマを排除しておく」という恐い方針なら北米大陸もありうるが、アメリカは人口が東側に集中しているので、人類の粛清目的なら被害評価値は都市人口を目安にしているはずだ。
 キシリアの行動は「旧体制の破壊」にあるので、その狙いは象徴的なヨーロッパかもしれない。

 直前に示されている「ダマスクローズ」という香水は、東欧ブルガリアで採れるものだ。イオマグヌッソが欧州を丸かじりする位置に、歯形のように座標がフィックスされていく。

 ただ、ソロモンが丸くえぐられ、アバオアクーも護衛艦隊ごと立体的に転移した点から、ゼクノヴァは真球状に空間をえぐり取ると思われる。
 この規模で地球の大地をえぐると、地殻に大穴があくことになり、マントルにまで到達するだろう。
 地球の地殻変動はアクシズ落下の比ではない。
 マグマが噴出し、開いた穴に地球中の海水が流れ込み、水深の浅い世界の海はほとんど干上がってしまう。
 周辺の気圧どころか、広範囲の空気そのものが無くなる可能性もあるだろう。

 ダマスクローズどころではない。
 キシリアは、地球そのものを干乾しにしようとしている。

 そして、約34kmの全長があるアバオアクーを先端まで丸呑みした一射目で、あれだけシャロンの薔薇は苦しんだ。
 二射目が選択している範囲を北ヨーロッパとして、レイキャビクからモスクワまでカバーしていると考えると、単純に直径3400kmの大穴があく。

 一射目の直径にして100倍。
 球の体積は100万倍だ。

 先の考察⑩で述べた「バクテリオファージ型の端末が宿主を利用している」という描写がそのとおりの意味なら、これで一気にシャロンの薔薇は破裂する。
 それを察したララアが絶叫しているのだ。

計画ではここで送還される予定だった

 シャアの「アルファ殺し」は基本的に送還計画だ。
 ジフレドがここで二射目を実行し、計画通りにシャロンの薔薇が破裂ダメージを負いそうになったら、緊急避難でゼクノヴァが発生する。

 しかし周囲をサイコフレーム製の外壁が封鎖しているため、イオマグヌッソから薔薇は出られず、ゼクノヴァのエネルギーはそのまま反転し、ゲートを逆にたどって送還される予定だった。
 しかし、これは二射目を邪魔されたことで失敗に終わっている。

二つの思想を背負ってマチュとニャアンが衝突する

 シャリアの思想とひとつになっているマチュには「シャロンの薔薇が泣いている」と理解できることが、キシリアの手の延長であるニャアンには、作業の邪魔をするうるさい泣き声にしか聞こえない。

 両者のニュータイプ能力は互角としても、立ち位置の違いが明確だ。
 この現場は、シャリアとキシリアの思想的な代理戦争となっている。

 二射目は「冷却中のため再稼働には時間がかかる」旨がコントロール画面に表示され、ニャアンは手を止めた。

 ところで、座標設定中の画面左下には「砲身冷却:正常」みたいな感じの表示がちいさく英語で出ている。「正常に冷却中ですよ」ならその通りの意味だが、ひょっとすると絶叫する薔薇ララアのために、高次元ララアが死に物狂いで電子的に干渉してエラーを吐かせているのかもしれない。(でなければ、ニャアンに頭痛を起こすほどの信号に演出的理由が無い)

 ニャアンの「邪魔」をしているのが薔薇ララアの悲鳴。
 電子的干渉で砲身冷却エラーを出しているのが高次元ララア。
 その分身であるマチュが実体でこれを止めに来る。
 この三者はひとつになっていて、ニャアンもそれが直感でわかるから「あいつも邪魔するのか」とジークアクスを振り向いた。

 これを見てシロウズが呟く。

「アルファ殺しが二機揃ったか」

 アルファとは、アルファサイコミュであり、この世界を作った「第一原因者」を指す。そして「人間だけがアルファを殺す」という予告編の言葉は、明確な人間による神への反攻だ。

 エルメスがこの世界の第一原因であり、それを「殺す」、ここでは「強制的にもとの世界に返して、以後の干渉手段を抹殺する」ことを計画して、この二機のモビルスーツは開発されたのだ。

 シャアの計画は収束しはじめた。
 パイロットに、ララアの二側面を象徴した二人を乗せて。

対オールレンジ攻撃の奥義伝授

 二機が衝突する。
 ニャアンの攻撃は、ビームライフルとエスビットによるオールレンジ攻撃だ。

 シャリアから教わった攻略法を、マチュは思い出す。
 宇宙空間で、接触回線を用いてシャリアは語った。
 ソドンの食堂でコピー用紙に図説しながらでもいいし、いい感じにキラキラ空間が開いた時にぱーっと教えてもよかったかもしれない。しかし、ミノフスキー粒子下で、誰も聞けない話を彼女にだけ語るのは、奥義伝授の構図だ。

 ビット・ライフル併用攻撃の肝は、ビームの檻に閉じ込めて、とどめの一撃をそこに命中させることにある。なので、戦闘の組み立てが必要であり、そこには「何らかの癖」が出る。

 何度か亜光速で飛来するビームをかわして(この段階で通常のパイロットは死ぬ)、マチュは相手のコントロールを読んだ。彼女が殺意なくゆるやかに放ったライフル本体がぶつかるのを嫌って、ビットがフラつく。それを掴んで、ジークアクスはジフレドに投げつけた。

 これは、第一話でエグザベが赤いガンダムのビットをつかんでブン投げ、破壊したシーンに重なる。
 このときのマチュは、オメガサイコミュを起動していない。
 すでに「あの頃のエグザベ」と同じくらいのマニュアル戦闘能力があるということだ。彼女はもう、ただの女学生ではない。

 距離をとるジフレド。
 マチュがニャアンのコントロールを読めたように、ニャアンもこの操縦にマチュを感じ取る。ライフルを手放したので、ビームサーベルを抜いて突っ込んでくるマチュ。切り結ぶ二機。

 接触回線で会話が始まる前から、二人は対面するモビルスーツに誰が乗っているか直感した。

「マチュなの?」
「なんでニャアンが?」

ニャアンの戦闘動機を確認しながら自分の過去のやらかしと重ね理解が深まるマチュ

「なんで何も言わずにいなくなった」
「なんでジオンのパイロットになんかなって戦争してんだよ」

 サイド6で集合場所に二人ともいなくなった理由、そして、ニュータイプの未来を闇に堕とす兵器を使っている理由。

 これはニャアンの意思なのか。

 それを確認したくて、マチュは叫ぶ。

「私だってわかんないよ」
「しょうがないじゃない、こうなっちゃったんだから」

 義憤に燃えていたマチュの顔が、怒りを抑えて冷静になる。

「さっきの悲鳴、聞こえなかったの?」

 ジフレドが行った発射シークエンスによって、ララアは凄まじい悲鳴を上げていた。てっきり、誰かがわざとララアを苦しめているのだと思った。しかし違うらしい。

「ただ気持ち悪いだけ。知らない誰かが頭のなかで邪魔をして」

 ニャアンは、訳も分からずこの大殺戮をやっているのだ。
 言われるままにクランバトルに出て、間違った道だと分かりながら、それでも分け入るしかなかった過去の自分。他責的だった自分とニャアンが重なる。

「マチュが言ったんでしょ、シュウちゃんを守るためだって!」

 それで私はあのときジークアクスに乗ったんじゃないか。マチュが乗れって必死に言うから。でも酷いことになっちゃって、シュウちゃんも赤いガンダムといっしょに消えちゃった。私は恐くなってその場から逃げ出して、それでジオンに拾われたんだ。必死に生きて、いまここにいる。

 マチュが言ったせいじゃんか! シュウちゃんを守るためだって、マチュが言うからやったんだ!

 アンキーにブチ切れた過去の自分が、姉妹機のビーム刃越しに泣いている。

「シュウジのため」

 そうだ。シャロンの薔薇からララアを救い出す。そして悪夢のループを断ち切る。それが、精神の悲鳴を静かにグラフティで叫んでいたシュウジの、彼の苦しみを、きっと救えるのだ。

 そして、ニャアンも救う。
 三者同時の救済。
 いまの自分にはそれができる。そのために──。

「シャロンの薔薇から、ララアを救い出す」

これは同時に、イオマグヌッソを使えなくすることでニャアンも救うことになる。知らずに大罪の片棒を担いでいる彼女を止められるのだ。

その柔道技は誰から

 ララアという言葉に反応したニャアンが、逆シャアのアムロよろしく豪快な投げ技(巴投げ?)で吹っ飛ばされる。

 なお、ここまでマチュはオメガサイコミュを起動していない。完全にマニュアルでこの技を繰り出している。
 アムロの影響がないとすれば、ソドンでの訓練中に誰かから柔道を習って、それをモビルスーツ格闘に応用しているのだろうか。

 タンギ(坊主頭の無口な操舵士)あたりが、静かな交流の上で教えてくれていると、ちょっと嬉しい。(なお、体育の時間に柔道を習う女子校も、少数ながら存在はする)

 何にしても、ジフレドは吹っ飛ばされただけだ。またすぐ戦闘になる。
 時間がない中で、コクピットからララアを連れ出すには、ガードシステム「時間凍結」を解除しなければならない。

リミッターデバイスを拳銃で破壊する理由とマチュシャリの最高潮

 オメガサイコミュのリミッターデバイス(第1話で、エグザベがはめ込んだアダプターカード型の起動キーだが、安全装置も兼ねている)を、起動状態で破壊すれば、制限が解かれてジークアクスは「起動状態」から「覚醒状態」に進む。

 この状態でこそ、ジークアクスはシャロンの薔薇の時間凍結に干渉できる。シャリアはそう言う。では、リミッターデバイスは誰によって、何のために取り付けられたのだろう。

 デバイスの目的は、時間凍結を解除するほどの強力な干渉機能を押さえ込むことだった。

 そもそも、ジークアクス本体は、シャロンの薔薇の時間凍結を解くために作られた。グラナダでは、凍結解除の手段として、本機の中心核であるエンディミオンユニットがフル回転して力場を形成しさえすれば(理論上は)干渉可能という研究結果が出ている。

 問題は、エンディミオンユニットに気に入られる(起動可能な)パイロットがいなかったことだ。

 見つからないうちは、この危険すぎる干渉機能にはリミッターデバイスをつけて封印。グラナダで施された措置のまま、本機はソドンに貸し出されている。

 さて、パイロットは見つかって「起動状態」には達したが、マチュの存在は(シャリアの作戦上)秘密にしたいので、グラナダに連れて行って開封する──というわけにはいかない。キシリアに奪われてしまうからだ。

 したがって、この解除には破壊しかない。
 頑丈なので銃を使う。
 このシーンで拳銃射撃が行われたのは、そんな理由だ。

 さて、ここにもう一つ、象徴的な意味がある。

 このロックが、マチュの股間に位置するスリットで、それを男(シャリア)からもらった「ガン」で撃ち抜くことで解放される演出があった。
 これは明確に性交のメタファーである。

 時間凍結の説明を、シャリアはソドン艦内でマチュに伝えている。
 このときの壁ドンじみたポーズや、マチュのヒゲマン呼びなど、二人は師弟以上に精神的に結びついていることが演出されてきた。
 しかし、二人は決して男女の関係ではない。

 この壁ドンシーンが位置する構成は、シャリアの「遺すもの」を受け継ぎ、マチュが「大人になる儀式」を一人で遂行するという組み立てだ。

 愛や信頼によって通じると、人間はお互いの要素を受け継ぐようになる。
 マチュはシャリアから様々なものを受け継ぎ、自分一人でそれを結実させていくのだ。
 リミッターの破壊による解除は、そんな意味を持つ。

「そのときが来たら、オメガサイコミュのリミッターデバイスを破壊してください。あなたとガンダムクァックスなら、シャロンの薔薇の時間凍結に干渉できる」

 この指示を受けているときのマチュは、まったく話を聞いていないような顔で、ただただ目を見開いて驚いている。

 最初、シャリアはマチュとマヴを組んで、ギレン・キシリア同時排除の戦闘をしかけようと考えていた。しかし、ギレン暗殺が先行し、イオマグヌッソはアバオアクーを飲み込み、続いて二射目のゼクノヴァ砲を撃とうとしている。自分はキシリアを排除しなければならない。マチュにはイオマグヌッソを止めてもらわねばならない。

 そんな業務連絡の向こうから、言外に伝わってくるのだ。

 ここでお別れです、マチュ君。
 いままで、楽しかったですよ。
 実に楽しかった。
 せっかく一緒に訓練してきましたが、ここで私たちのマヴは解散です。
 さよならマチュ君。

 マチュはジト目で思う。

 ふざけんな。

「で、あんたはどうすんの」

 勘のいいマチュが「(訓練の上で)二人でやろうと思ってたことがあるのに、あたしに単独で行かせようとしてるよね? ひとりきりで、かなりヤバいことやろうとしていない? もうここには帰ってきませんみたいな顔してるよ、ヒゲマン」という目で見返す。

 ヒゲマン、死ぬ気なの?

「軍人には軍人の、責任の取り方があります」

 たぶん、この後でマチュはそれなりに暴れたりイヤイヤしたと思う。
 でも、もう彼女は子供ではない。
 どこかで聞き分けて、こうしてイオマグヌッソの心臓部に来た。

 シャリアの教えてくれた秘伝のオールレンジ攻略法も成功した。
 この大舞台で成功したのを、見せてあげられなかったのが残念だけど。

戦う女は信じる男に何を賭けるのか何を残すのか死にゆく男は守るべき女に何を賭けるのか何を残すのか

 マチュは今生の別れの後で、自分の女性性の象徴を彼のガンで撃ち抜く。
 それは、マチュがシャリアに敬愛以上の感情をもっていたことを、ひっそりと演出している。
(シュウジという恋する人がいる以上、ひっそりとしか描けないのだが)

 これは、象徴的にシャリアの理想を受け入れる行為だ。
 マチュが自ら引き金を引くのは、シャリアの遺志(ガン)を自分の一部に取り込むという、象徴的な性交である。
 死ぬ覚悟を悟った直後だからこそ、この行動は「それでもいいよ(あなたの道を認めて、受け入れるよ)」というマチュの無言の返事になっている。

 シャリアの覚悟は軍人らしい矜持だが、マチュにとっては、師匠の死を動かしようもなく予感する瞬間だ。

 シュウジには恋、シャリアとの絆は父性や導き手への尊敬。
 だが、敬愛以上が確かにあって、マチュは苦しんだと思う。
 最終的にマチュは、シャリアの死を受け入れて、出撃したのだ。

 機動戦士ガンダム劇場版「哀戦士」の主題歌歌詞に
「戦う女たちは、信じる男たちに」
「何を賭けるのか、何を残すのか」
「死にゆく男たちは、守るべき女たちに」
「何を賭けるのか、何を残すのか」
「I pray, pray to bring near the New Day.」
 という部分(抜粋)がある。

 マチュ(戦う女)が、シャリア(信じる男)に自分の未来と成長を賭ける。そしてシャリアの理想を受け継いで残す覚悟をしている。

 シャリア(死にゆく男)が、マチュ(守るべき女)のために、自分の命と軍人の責任を賭けている。そしてジークアクスの真の力(拳銃とリミッター解除の秘密)を託しているのだ。

 私は祈る、祈る、新しい朝(新しい時代)を近づけるために。

 戦争が終わり、ニュータイプが自由に生きられる新しい時代のために、シャリアは命を賭け、マチュはシャリアの遺志を引き継ぎ実現しようと出撃する。

余談:「カラー」らしさ

「女性の体臭を嗅ぐ」という、この制作会社の癖がある。
 悪癖かどうかはこの際は捨て置く。

 エヴァにも、シンゴジラにもシンウルトラマンにもシン仮面ライダーにもあった。きっとシンヤマトにもあるだろう。
 もちろん本作は総尺の長いテレビシリーズだけあって、随所に見られる。

 ガイナックスらしさと呼ぶべきかもしれないが、いま一つ作品傾向がある。
 ナディアのエレクトラさんしかり、エヴァの赤木リツコ博士しかり「父親くらいの男性と関係を結ぶ女性」がたびたび描かれるのだ。

 本作においては象徴的にすぎないし、事実関係は存在しないが、このマチュの拳銃描写には、その側面もあると思う。

イオマグヌッソのコアチャンバー構造と時間凍結の正体

 シャリアの言った通り、リミッター解除後に、ジークアクスの四肢には四つの力場が展開した。これが力場なのは、後にハイパー化ガンダムのビームサーベルを無効化した点からも間違いない。(くわしくは該当シーンにて)

「この時間凍結のせいで誰もシャロンの薔薇の内部には干渉できなかった」

 マチュが、シャリアに話してもらった説明を反復する。

「でも、ジークアクスなら」

 そう、シャリアは信じてくれた。
 マチュは「時間凍結」の力場に手を突っ込む。
 差し伸べるのは、未来をつかむ右腕だ。

 力場同士のせめぎ合いの果てに、ついに解除は成功した。
 マチュは、ジークアクスを覚醒状態にして時間凍結を打ち破ったのだ。

 これで薔薇の少女は凍結を解かれて目を醒ます。
 そして、コクピットに乗り込み、彼女を連れ出す。
 これがマチュの予定だ。

 シャリアの遺志(「薔薇を救え」)とシュウジの願い(ララァを守りたい)を尊重しつつ、シャアの考える排除でなく「救出」を選ぶのがマチュである。

 イオマグヌッソの内部コアチャンバーは、(機動戦士ガンダム最終回の)アバオアクーのように内部に空気が充満した環境が維持されている。作業員やパイロットの移動、モビルスーツの格納・整備を考慮した設計だからだろう。
 なので、エルメスからララアを救出することは、ノーヘルのマチュでも可能だ。

余談:時間凍結とはなんだったのか

 時間を停止している存在には、基本的に干渉することはできない。原因→結果という時間を要するメカニズムが働かず、この因果律が適用されないからだ。すべての運動がゼロになる状態では、粒子も場も反応しない。

 だが「時間が停止して見えるだけで、実際には光速空間転移」であれば、空間転移の力場で干渉できるはずである。ジークアクスは、そういう力場を形成して干渉したのではないだろうか。

 シャロンの薔薇は「見かけ上の時間停止」状態だと考えてみる。
 このオブジェクトは、光速に限りなく近い速度でゼクノヴァを繰り返すことによって、特殊相対性理論の範囲内で内部の時間を見かけ上は停止して見せているとするのはどうだろう。(ローレンツ因子が膨張し、時間の進み方が遅くなる)

 これに似た状態を、ジークアクスでも引き起こす。小規模ゼクノヴァの繰り返しによって歪みが重なると、エネルギー密度がブラックホール並みになって光の脱出速度が光速を越える領域がつくれる──と仮定してみる。これが両肩と両膝に光を吸い込む力場を作れた理屈(仮説)である。
 そして、これなら「見かけ上は時間凍結してみえるエルメス」に干渉できる。(と思う)(詳しい人おしえて)

 シャロンの薔薇は、連続してゼクノヴァを起こしており、それがほぼ無限に繰り返されているために時間が凍結して見えている。(時間の概念上に生きている我々には「表面が不安定にゆらいでいる」ようにしか観測できないが)

 実際には時間を凍結しているわけではなく、外部から何を与えても因果律が進行しないように見える錯覚だ。
「空中にいながらテレポートを連続させることで空中浮遊しているように見える」のに似ている。(例えが変ですまない)

 テレポートは瞬間移動なので、連続使用で「超光速級の移動」を擬似的に実現できる。例えば、1秒間に数万回のテレポートを繰り返せば、使用者は周囲の空間を瞬時に横断し、観察者からは「一瞬で移動した」ように見える。これをさらに極限まで高速化(プランク時間スケールで連発)すると、使用者の視点から周囲の時間が「相対的に遅くなる」効果が生じる。相対性理論のタイムディレーション(時間膨張)を借用して考えると、光速に近い速度で移動する物体は時間が遅れるのだ。
 テレポートは「距離をゼロ時間で縮めるため、連続使用で速度無限大を近似できる。つまり、使用者が高速テレポートを繰り返す間、周囲の物体(人や物)の運動が「止まって見える」状態になる。これが、時間凍結の正体だ。(書いてる本人もよく分かっておりません)(この説はなんかおかしいなというところは、チョットワカル)

 もっと単純に「時間凍結は超高速の転移現象」と考えてみよう。
 エルメスは、もともと「向こう側」の宇宙から来た。
 そして、過去にララアが作って破壊してきた様々な「向こう側」と、このエルメスはいまだに繋がっており、いまでも超高速で転移現象を続けている。

 エルメスに何かがちょっかいを出したとする。何かをぶつけたり、破壊しようと干渉したとする。しかし、どんなエネルギーやベクトルも、瞬時に向こう側に転移させられてしまうのだ。このため「何をやっても変化が起きない」ように見えるこの現象を「原因が結果に結びつかない」「因果律が働かない」という観点から、仮に「時間凍結」としたのではないだろうか。

 ゼクノヴァでできるのは、空間転移と次元転移だ。時間そのものを操ることは、現時点ではできていない。
 0093から来たという時間転移を本解説で採用しているが、本編中に時間に干渉する理屈は登場していないから、まず無いだろう。

 ここまで理屈をこねたように「ゼクノヴァによる超高速での空間転移の連続」で、理論上は疑似的な時間停止は可能だ。しかし、これも公式資料に基づかないので、妄想や考察の類いである。

アムロがララアの心を解きほぐした湖畔の出会い

 ただ、オメガサイコミュ(エンディミオンユニット=アムロ)が、凍結していたララアを溶かす構図は、最初の「機動戦士ガンダム」そのままの流れだ。

 娼館で生き、シャアに買われ、フラナガン機関で研究され、サイド6でララアはシャアを待つ。
「身請けされた自分はシャアのものだ」という意識に強く拘束されすぎていたララアが、はじめて同年代の純粋な異性に出会った。

 それがアムロだ。

「外にはこんな純粋な人がいるのね。素敵な出会いがあるのね」と、アムロと出会った彼女は嬉しくて駆け出す。17歳の少女らしい青春の衝動と解放。

 ララアの心が解けて湖畔へ向かって駆け出したように、アムロはここでもララアを解放させた。

 しかし、その後でシャアは死に、彼女は深い絶望に落ちていく。

 そして、彼女を救おうと歩んできたシュウジ(幽体)が、この後でついにマチュたちの前に現れるのだ。



第11話の解説後半は、幽体のシュウジがマチュ(ついでにニャアン)を導いて、シャアとキシリアが劇場で「ダイクン派とザビ派の討論会」をやっている場所に突っ込ませるシーンの解説を。

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