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写ルンですのレンズで岡本太郎記念館を撮りたくなった理由


1. 写ルンですのレンズを購入した

最近のカメラは描写力が高いので何でもかんでも写りすぎてしまう。そこが良さでもあるし、時にはそこがマイナスに感じることもある。

私は昨年、15年に発売された一眼レフからそれよりは新しいカメラに買い替えた。レンズも最新のものに総入れ替えした。くっきり、ぱっきりと写ること=自分のしたい表現の方向性とは遠いことに撮れば撮るほど気づいていった。(もちろん、くっきりと写したいときは何度も最新レンズに助けられている)

私たちの記憶は、新しいものほど鮮明で、時間が経つとおぼろげなものに変わっていく。詳細は覚えていなかったり、記憶が違っていたりする。
人間の記憶が曖昧なものなのだから、写真も最初からおぼろげなまま写したほうが記憶に近いのではないか、ということを最近は感じている。

そんなことを思っているときに、面白いレンズを見つけた。

GIZMON Wtulens
「Wtulens」は、「写ルンです」のレンズを2枚使ったミラーレスカメラ用のレンズです。17mm広角(※35mmフルサイズセンサー搭載カメラの場合)での撮影が楽しめます。強めの周辺減光、ダイナミックな広角描写でトンネル効果やドラマチックな雰囲気の写りを楽しめます。薄くて軽いパンケーキレンズですので、スナップ撮影をするのに最適です。

GIZMON ギズモショップより

写ルンですのレンズを活用して作られたレンズだから、ピントを合わせる必要はない。遠くはピントが合いやすいが、近くを撮りたいときはどう頑張ってもピントは合わない。その気軽さ、おぼろげさに惹かれて購入してみた。


2. なぜ岡本太郎記念館にこのレンズを持って行ったのか

東京都南青山にある岡本太郎のアトリエを改装して作られた岡本太郎記念館は私の大好きな場所であり、この一年間で6回は訪れたと思う。(年間パスポートも持っている)
岡本太郎記念館に飾ってある作品ももちろん好きなのだが、パッションや生命力を感じる庭が好きで季節によっても様相が変わっていくのでそこを何度も見に行っている。
しかし、作品の細部を捉えるためにくっきり、ぱっきりとしたレンズを何度も持って行っていたが、庭を写す時にはしっくり来ていなかった。

昨年、岡本太郎記念館の庭を写したときに敢えてピントを外したりしておぼろげな撮り方で撮ったことがある。

「座ることを拒否する椅子」 2025年9月撮影
岡本太郎記念館の庭木 2025年9月撮影

そんなおぼろげな撮り方に私はしっくりと来ていた。
だから写ルンですのレンズを利用したこの「不完全」とも言えるレンズを岡本太郎記念館に持って行きたいと思った。
「きれいに撮ること」よりも「感じた時の空気を持って帰ること」を優先したいと感じた。

そう、岡本太郎も「うまくあるな、きれいであるな、ここちよくあるな」と言っていたしね!(芸術の三原則)

3. 実際に撮ってみると


「月の顔」
「乙女」
威勢のいいシダ植物
「母の塔」
「太陽の塔」
「座ることを拒否する椅子」 with 虫
企画展「佐内正史 雷写」
岡本太郎お手製の椅子
みんながめくってべろんべろんになった図録 企画展開始時に見た時はとてもきれいな状態だった
2階から庭を見下ろす (ここまでの写真は2026年7月撮影)

岡本太郎記念館の庭にいると時間を忘れていく。太陽の塔の真上を飛行機が何度も通るのを何分も眺めていて、飛行機が通るたびにシャッターを何度も切った。その時、夏の湿度を含んだ空気が鼻を抜けるときすっと軽やかに抜けていくような気持ちになってとても心地が良かった。

私はこの写真を見たときに、軽やかに自分の体内に空気が通って行ったことを何度でも思い出すだろう。
解像度だけが正解ではない。自分の記憶の質感に近い写真が撮れて私はとても満足した。

岡本太郎記念館の夏の日の匂いは、このレンズが一番よく覚えている。だからまた記念館に行くときは、きっと私はまた写りが不完全なレンズをバッグに入れてしまうだろう。