むこうみず 半年無職し 離島ゆき
今年の三月末、仕事を辞めた。
今日は九月の十日であり、相も変わらず無職であり、気づけば半年も経つ。
本当は、退職してひと月ほど無職でぶらりしたあとは、アルバイトで週30時間ほど働き、少々のんびりと生活するつもりだった。フルタイム労働に疲れてしまったためである。
技術は拙いけども革小物を作ってみたり、趣味で切り抜き動画の編集もしていたため、アルバイトの傍ら、そうした自分の活動で副収入を得てゆけたらという考えを持っていた(いずれにしても自己流で半年やっていた程度であり、収益を得た実績もなく、甘い考えだった)。
そうして実際に無職でぶらりしてひと月が経ったので、アルバイトに応募しようと思ってはみたものの、できなかった。恥を忍んで言えば、怖かった。
今年27にもなるのに高校生と肩を並べて同じ給料で働くのか。学生たちから見れば私は落ちこぼれだろう。「学生大歓迎!」「主婦•主夫活躍中!」など書いてあるところばかりで、肩身せまそう。
面接で週に三十時間だけ働きたいと申し出れば、「その他の時間は何をするんですか」など突っ込まれ、答えに窮しそうだし、恥の感覚に飲まれそう。育児、介護、学業、副業、そうした尤もらしい理由がなく短時間労働というのは、変なヤツ認定されそう。
根が気にしいであり偏屈にもできてる私は、大した職歴もない高卒の身で、不安や意地や見栄のせいで、アルバイトの応募すらできない。
二三ヶ月目には何個かアルバイトに応募してはみたものの、応募したあとに「やはり私に接客は無理だ」「いらっしゃいませが言える気しない」「人と接しない仕事はそれはそれで寂しい」「この仕事じゃスキルは身につかない」「思ったより家から遠い」などと節操の欠片もない屁理屈で自ら八方を塞ぎ、面接前にキャンセルしたり、採用の連絡をもらったのち、逃げるように辞退メールを送った(返事が来ないところも多かったが、返事をもらっても内容を見るのが怖く、読まずに削除していた)。
一方で、根が向こう見ずでもあり欲に従順な私は、無職で無収入にも関わらず、自己投資だとか言って34インチのでっかいモニターを買ってみたり、ノートパソコンを性能の良いものに買い替えたり、腕時計を買ったりもする。
働いていたときは自炊もしていたくせに、無職になってから出来合いの惣菜や弁当をよく買うようになった。さらには、時間があるから朝晩風呂に浸かったり、一回分が二百円もする入浴剤を毎日使ったりする始末。
流石にもう貯蓄もなくなってきて、前々から少しずつ積み立てていた投資信託もほぼ切り崩しつつあり、残高の減ってゆく不安を常に抱えていたため、支払いはすべてクレジットカードで済ませる癖がついた。
四ヶ月目にはついにオフィスビルの清掃で働き始めたが、一日で辞めた。五ヶ月目、つまり先月にはマンション型ホテルの客室清掃を始めたが、これまた一日で辞めた。
そんな折に届いた前月分のクレジットカード請求額には愕然とした。三十万を超えていた。当時の全財産は十数万だったのでどうあがいても足りない。
あとから分割払い制度を利用して急場をしのごうと思ったが、先々月にも先先々月にも同じようなことをしていたので、あとから分割に変更できる額が限られており、結局は全財産以上の請求額を避けられなかった。
それでもあとからリボ払いの機能は使えたため、泣く泣く全額リボ払いにしたことで、なんとか生き延びている現在。自己投資とか言って買ったあれこれも、某フリマアプリで売っぱらった。そのうえで、積もり積もって総額四十万円のリボ払い残高。支払いは今月から開始する。
そんなこんなで今日まで半年も無職であったが、さっきやっと仕事の決定連絡を受けた。その安堵から、こんなnoteを始めてみようと思う余裕ができた。
就業場所は詳しくは言えないが、とある離島で、向こう四ヶ月、住み込みで働く。いわゆる"リゾートバイト"なる派遣型の仕事である。
なんでまた離島に、などと自分でもびっくらこいたものの、見知らぬ土地で見知らぬ人に囲まれていれば、なんとなく気楽そうというだけの理由である。
飲食店でフルタイムで働くこととなり、もともと描いていた週三十時間のアルバイト生活などというものは、しばらく遠のいた。まず先にリボ払いの完済をしないといけない。
何百万何千万の借金だとか、自己破産だとか、そんな情報も蔓延っている現在で、たかだか四十万円のリボ払いで泣いてもいられないわな、と。
自業自得を悔やむ気持ちはあるが、結果的に離島に住み込みで働くなどということは半年前の自分からは考えられなかったことでもあり、なんだかんだわくわくもしている。
