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届かないメッセージは、私を優しく照らす 8

第7章 愛されるために頑張ってきた私


人には、それぞれ心の癖がある。

それは、
無意識のうちに身につけた、自分を守るための方法。

私の場合、それは「頑張ること」だった。

子どもの頃から、人に迷惑をかけないようにしてきた。

泣きたい時も笑った。

寂しい時も「大丈夫」と言った。

誰かに頼るより、自分が支える側にいるほうが楽だった。

褒められることより、必要とされることに安心していた。

「真央がいてくれて助かる。」

「川野さんは頼りになる。」

その言葉が、私にとって何より嬉しかった。

だから、いつしか私は勘違いしていたのかもしれない。

人から必要とされることが、愛されることなのだと。

頑張っていれば、離れていかない。

我慢していれば、嫌われない。

相手に合わせていれば、ずっと一緒にいられる。

そんなふうに思っていた。


でも、本当は違った。


人と人が深くつながるために必要なのは、完璧な自分を見せることではない。

弱いところも、不器用なところも、ありのままの自分を見せることだった。

彼と出会うまで、私はそのことに気づかなかった。

彼は、私の強さを好きになってくれた。

仕事に向き合う姿勢も。

誰かのために言葉を紡ぐところも。

いつも前向きでいようとするところも。

でも、きっと
本当の私はそれだけではなかった。

疲れている日もあった。

不安になる夜もあった。

誰かに「大丈夫だよ」と言ってほしい日もあった。

なのに私は、
彼の前でも強い自分でいようとした。

「大丈夫。」

「忙しくても平気。」

「私はひとりでも大丈夫だから。」

そう言うたびに、彼との距離は少しずつ遠くなっていたのかもしれない。

そして彼は、
私の言葉を信じていた。

私が大丈夫と言ったから、本当に大丈夫なのだと思っていた。

それは彼の優しさだった。

そして、私の不器用さだった。

人は、相手に分かってほしいと思う。

でも、
伝えないまま分かってもらうことはできない。

心の中でどれだけ叫んでも、相手に届くのは、口にした言葉だけなのだ。

あの頃の私は、それを知らなかった。

いや、
本当は知っていたのかもしれない。

知っていたけれど、

怖かった。

「寂しい」と言って、もし離れていったら。

「会いたい」と言って、もし重いと思われたら。

「好き」と伝えて、それを受け取ってもらえなかったら。

だから私は、

傷つかないために、自分から少しずつ心の扉を閉めていた。

でも、

閉めた扉の向こう側には、本当の私がずっといた。

誰かに愛されたい私。

大切にされたい私。

素直に甘えたい私。

そして、
誰かを思いきり愛したい私。

古いスマートフォンに残っていたメッセージを見つけた時、私は過去の自分を責めることができなかった。

むしろ、抱きしめてあげたいと思った。

「怖かったんだよね。」

「失いたくなかったんだよね。」

「だから、一生懸命だったんだよね。」

不器用だったけれど、
あの頃の私は、あの頃の私なりに愛していた。

精一杯だった。

それでよかったのだと思う。

人生は、後悔を消すためにあるのではない。

過去の自分を許して、今の自分を少しずつ変えていくためにある。

私は、ようやく分かった。

愛されるために頑張る人生から、

愛していることを素直に伝えられる人生へ。

その一歩を踏み出す時が来たのだと。

窓辺に置いた花が、朝の光を浴びていた。

以前の私なら、枯らさないように必死に世話をしていたかもしれない。

でも今は違う。

花は、必要な水と光があれば、自分の力で咲いていく。

人の心も、きっと同じなのだ。

誰かに認めてもらうためではなく、

自分自身を大切にすることで、自然と輝いていく。

私は、もう一度言葉を取り戻そうとしていた。

今度こそ、自分の心から生まれた言葉を。



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