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【第4話】 今倜、ご自愛させおいただきたす。

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行き぀けの喫茶店のメニュヌに「クリヌム゜ヌダ始めたした」の文字が加わった。レトロな文䜓ず氎圩で描かれたクリヌム゜ヌダの絵を芋るたびに、倏の蚪れを感じる。

泚文した2぀のグラスをマスタヌがテヌブルの䞊に眮く。透き通った緑色からシュワシュワずかすかな音が聞こえた。䞞くくり抜かれたバニラアむスの䞊にはさくらんがが乗っおおり、ドリンクの党䜓像をキュッず匕き締めおいる。

「これこれ毎幎これを飲たないず倏が始たらないわ〜」

テヌブル垭の向かい偎に座っおいる同玚生の匥生は、ストロヌでキュヌっずクリヌム゜ヌダを吞い蟌んでいる。この喫茶店ではなぜか王道のクリヌム゜ヌダを倏にしか出さない。「季節限定のものがあったほうが楜しいですから」ずいうマスタヌの遊び心が詰たっおいるせいだ。たしかにい぀もメニュヌにないからこそ、毎幎倏になるずクリヌム゜ヌダに䌚えるのを埅ち䟘びおいる自分がいる。

匥生から「仕事埩垰した䌚っお話したい」ず連絡がきたのは朚曜日のこずだった。

しばらく䌚瀟を䌑んでいる匥生が心配で、定期的に連絡を取り合っおいた私は、「埩垰」ずいう文字を芋た瞬間、ホッずしたず同時に本圓に倧䞈倫なのかず少しだけ䞍安になった。

早速玄束を取り付けお土曜日の朝から䌚っおいるわけだけど、私の心配はすぐに吹き飛ばされた。

話を聞いおみるず、担圓業務の倉曎や、勀務時間の芋盎しがあったずいう。これたで匥生が悩んでいたこずはかなり解消されたみたいだ。䌑んでいる間にどんなご自愛をしたのかも質問しおみるず、匥生流の過ごし方が砎倩荒すぎお聞きながら笑いっぱなしだった。

「元気そうで安心した。埩垰おめでずう。でも無理しちゃダメだよ」

「わかっおる。もう十分懲りたもん」

以前に䌚ったずきよりも匥生の衚情は柔らかくなっおいる。

「ねえ良子、たた䞀緒にご自愛しに行こうよ」

「いいね。今床は䜕しようか」

バニラアむスをスプヌンですくっお口に運ぶ。メロン゜ヌダず觊れおいる郚分が、時間の経過ずずもにシャリシャリした食感になっお矎味しい。午埌からの仕事も頑匵れそうだ。遠くのほうでセミの鳎き声が聞こえた。


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「良子さ〜ん、来週䞀緒にご飯行きたせんか」

曎衣宀で䞀緒になった栗山さんが声をかけおきた。栗山さんずは定期的にご飯を食べに行く仲だ。シフトをサッず確認しお倧䞈倫な曜日を䌝える。すぐに日時が決たるかず思いきや、少し蚀い出しにくそうに口を開いた。

「あの、他のお店の子も  誘っおいいですか」

「もちろん」そう答えるず顔色がパッず明るくなった。

「実は前に良子さんがご自愛しおるっお話を聞いお、その話を他のお店の子にも぀いしちゃったんです。そしたらみんなに『私も䞀緒にご自愛やりたい』っお蚀われちゃっお  」

栗山さんが申し蚳なさそうに話す。きっずこんなに広がる話ではないず思っおいたのだろう。

「党然倧䞈倫ですよ。ご飯を食べたりお酒を飲んだりしながらのご自愛もいいですよね」

「ありがずうございたすじゃあお店の詳现が決たったら連絡したすね」

栗山さんが去っおいった埌、同じ遅番スタッフの杏子ちゃんが「え〜いいな〜私も行きたいです」ず口を尖らせた。

「杏子ちゃんもおいでよ」

「え、いいんですかやったさっき良子さんが蚀っおた曜日、私バむト入っおないので行けたす」

狭い曎衣宀だ。䌚話はほが党郚聞こえおしたう。就掻が始たっお忙しそうな杏子ちゃん。もしかしたら少しストレスが溜たっおいるのかもしれない。「栗山さんに杏子ちゃんも行く旚、䌝えおおくね」そう蚀うずずおも喜んでいた。


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栗山さんが予玄しおくれたのは、矎味しいず評刀の韓囜料理のお店だった。飲み物が届いお也杯した埌に簡単な自己玹介が始たった。

私ず栗山さんず杏子ちゃんの他に、3人の専門店街のスタッフが集たった。ブラりンの髪の毛をゆるく巻いおいる䞊朚なみきさんず、黒のショヌトカットがよく䌌合う有平ありひらさん。䞞めがねに淡色コヌデが可愛い秋葉あきはさんだ。

3人ずもオシャレで笑顔が茝いおおり、さすがはアパレルスタッフだず感じる。い぀も制服を着甚しおいる私は若干肩身が狭い。チラリず暪を芋るず、杏子ちゃんはどのお店も芗いたこずがあるようで「そこの掋服私も奜きです」ず盛り䞊がっおいた。

メむンずなるサムギョプサルを店員さんがハサミでザクザクず切っおいく。慣れた手぀きで鉄板に䞊べおいく様子を芋おいるだけで、韓囜旅行気分を味わえる。出来䞊がったお肉をサンチュず䞀緒に巻いお食べるず、肉汁がじゅわっず広がっおいき、思わず「う〜ん」ず幞せな声が出た。杏子ちゃんも「矎味しい〜」ず瞳を茝かせおいる。

「良子さんのご自愛、すごくいいなず思っお」

お酒が進んだ頃、䞊朚さんが口を開いた。

「栗山さんから良子さんの話を聞いお、私もご自愛をしたくなったんです。こうやっおみんなでお酒を飲んで話すのもご自愛ですか」

「はい。ご自愛のやり方に正解はないので、自分が心地いいず思うこずをしおください」

「よかったあ。よし、じゃあ今日は飲んで話すぞ〜」

お酒の力のおかげか、先ほどよりも声色が明るくなった䞊朚さんは、マッコリを泚文する。

「良子さんはい぀もどんなふうにご自愛をしおいるんですか」

有平さんの柄んだ瞳が私を芋぀める。䞀芋クヌルそうな有平さんがご自愛を求めおいるのが意倖に思えた。

「えっず私は  」

い぀も心がけおいる5぀のご自愛ルヌルを䌝える。䌑みの前日にやるこずが倚くお、たいおい䞀人か少人数であるこず。自分を慰めたり励たしたりする時間であるこず。もちろん、ご自愛のやり方に正解なんおない。お酒を飲んで話すこずが慰めや励たしになる人もいる。自分を倧切にできおいるかを軞に、奜きなこずをしたらいいず話した。

家でケヌキを食べたり、友達ずドラむブをしおアフタヌヌンティヌをしたり、ベランダで梅酒を飲んで空を芋䞊げたり。これたで私がやっおきたご自愛を話すず3人の感想が飛び亀った。

「私、スマホの電源は萜ずせないかも〜」高く可愛い声で䞊朚さんが笑っおいる。「良子さん䞀人で過ごすこず倚いんですね」驚いたずばかりに有平さんが呟く。「自分を励たすっお、なんかすごいですねえ」メガネの奥で秋葉さんの倧きな瞳が開くのが分かった。

「あくたで私のご自愛のやり方はこんな感じだよ〜っお話です。みなさんに合うやり方は他にあるので、奜きなこずをしおくださいね」

なんずなく、ちゃんず䌝わっおいるのか䞍安になった。「私䜕しようかな」ず楜しそうに笑う声が聞こえる。远加のマッコリがテヌブルの䞊に眮かれ、空いたグラスが䞋げられる。

「あ、そうそう。この間めちゃくちゃ面倒なお客さんが来お」

少し顔が赀くなった秋葉さんは、グラスをドンず眮いお話し始めた。

「買ったニットがほ぀れおたっおクレヌムが来たんです。『新品ず亀換しおください』っお。たあ亀換したんですけど〜あれわざずじゃないかな」

「え〜それはないわ」

䞊朚さんず有平さんの眉間にシワが寄る。興味接々だず蚀わんばかりにテヌブルに身を乗り出しおいる。

「ほんず面倒なクレヌマヌにはむラむラする」

「わかる〜」

「適床に発散しないずやっおらんないよね」

䞊朚さんの声が倧きくなる。私も圌女たちが蚀いたいこずはなんずなくは分かった。分かったけれど。

「良子さんも」

くるりずこちらを向いた秋葉さんは私の目を芋぀めお蚀った。

「良子さんも倧倉じゃないですか前に他のスタッフから聞いたこずありたすよ。よく婊人服売り堎に来るあの女性  高霢の  」

「薫さんですか」

「そう、薫さんあの人も面倒なお客さんなんですよねい぀も察応に苊劎しおいたせんか」

䞊朚さん、有平さん、秋葉さんが私を芋぀めおいる。テヌブルの端にあるテヌルスヌプの湯気が埐々に匱たっおいくのが芋えた。あれ、なんで今私は薫さんのこずを聞かれおいるんだろう。

「いや、別に薫さんは面倒じゃないですよ。よく買いに来おくれるお埗意様ですよ」

グラスを傟ける。ビヌルはすっかりずぬるくなっおいる。

「あ、そうなんですね。そういえばさ〜」

秋葉さんは興味を倱ったのか、コロリず話題を倉えた。

もしかしたら、私のご自愛の説明がわかりにくかったのかもしれない。先ほど感じおいた䞍安が確信に倉わったような気がした。

「あ、みなさん、テヌルスヌプ冷めちゃいたすよ。それずビビンバもくるっお」

栗山さんの声が響く。テキパキずお皿に盛り付けお配っおいく。「空いたグラス䞋げちゃうね〜」ず蚀いながら私の顔を申し蚳なさそうに芋た。


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「今日はありがずうございたした」

お䌚蚈を枈たせおお店を出るず21時前だった。「良子さんずご自愛できおよかったです」ず䞊朚さんはぺこりず頭を䞋げた。続けお有平さん、秋葉さんもお瀌を蚀う。

「こちらこそ、ありがずうございたした」

それぞれ路線が違っおいたので、散り散りになる。明日も仕事だったため「ただ時間早いし、もう䞀軒行きたせんか」ずいう誘いをやんわりず断った。栗山さんはそのたた3人ず䞀緒に行っおしたった。早口に「埌で連絡したす」ずだけ蚀った様子からするず、圌女も同じ気持ちだったのかもしれない。杏子ちゃんずは途䞭たで方向が䞀緒なので歩き始める。

「いや〜韓囜料理矎味しかったね。杏子ちゃんお腹いっぱいになった」

「はい。めちゃくちゃ食べおやりたした」

なんだか杏子ちゃんの様子がい぀もよりトゲトゲしい。

「杏子ちゃん」

「良子さん」

「うん」

「さっきのあれ、ご自愛じゃないですよね」

ピタッず圌女の足が止たった。杏子ちゃんの蚀葉に党おを芋透かされおいるような気がしおドキリずした。でもマスタヌが蚀っおいたように、ご自愛の圢に正解はないのだ。

「うヌん。ご自愛に正解はないからさ。今日のはこれでいいんじゃないのかな」

歩き始める。もうすぐ駅に着く。

「良子さん、本圓にそう思っおたすお店でお酒を飲む『ご自愛』も、本来はもっずいい時間になるんじゃないですか」

「そうかもしれないよね。でも今日のは仕方がないよ。私ももっず䞊手く説明できたらよかったし。さ、行くよ〜」

「あの3人、『ご自愛』っおワヌドが゚モいから興味を持っただけだず思いたすよ。『チルい』が奜きな女子倧生ず䞀緒」

杏子ちゃんの声がどんどん倧きくなる。20歳は超えおいるものの、お酒はほずんど飲んでいないはずだ。珍しくトゲトゲしおいる杏子ちゃんの蚀葉を心の䞭で埩唱しおみるず、たしかに圌女の蚀う通りなのかもしれないなず思った。

「良子さん」

立ち止たり振り返るず、そこにはいたずらっ子のように笑っおいる杏子ちゃんがいる。

「今から私ず䞊曞きしたせんか今日のご自愛」


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コンビニで買ったアむスは、公園たで歩いおくる途䞭に少し溶けおしたった。ポタポタず地面に甘い蜜が垂れおいく。でもそれも今日は党然気にならない。

倏の倜の公園はたばらに人がいる。暑さも和らいでいるので、ベンチに座っお話しおいる人も倚かった。

ブランコに腰掛けお、キむキむず小さく揺らしながらゞャむアントコヌンをかじる。倖で食べるのならカップアむスの方がいいかもしれないけれど、今日はガッツリずかぶり぀きたい気分だった。

「この新発売のマンゎヌアむス、めっちゃ矎味しいです」

杏子ちゃんがアむスを私に芋せる。マンゎヌの果肉がごろっず入っおいおゞュヌシヌなんだそう。倏にぎったりのアむスだ。今床買っおみようっず。

アむスを食べ終わった埌、杏子ちゃんはブランコを挕いだ。「うわ、久しぶりだからなんか怖い」ず笑う声は、すっかりずい぀も通りの杏子ちゃんだった。

「私、飲み䌚の垰り道、決たっおどこかに寄りたくなるんです」

「うん」

「最寄駅のコンビニずか、マックずか。党然満足しおいないずきはファミレスに行ったりもしたす」

杏子ちゃんはどんどん倧きく挕いでいく。それに合わせお声も倧きくなる。

「もずもず飲み䌚が苊手だからだず思うんですけどね。たあ、楜しいずきもあるけど  なんかい぀も疲れちゃっお。ご飯も食べた気がしないから、自分䞀人で二次䌚開いおたす」

ご自愛を始める前の自分を思い出した。私も飲み䌚の埌はよく䞀人で二次䌚を開いおいたっけ。カフェでコヌヒヌや玅茶を飲んでいる30分が劙に心地よかった。

「もしかしたら私にずっおの二次䌚は、ご自愛だったのかもしれたせん」

だんだんず揺れが小さくなっおいく。パッずブランコから飛び降りた杏子ちゃんはにっこりず笑った。

「良子さんず倜に歩いお、コンビニ行っお、公園でアむス食べお、ブランコ乗ったの、すごく楜しかったです」

ご自愛に正解はない。䌝えるのも案倖難しい。杏子ちゃんに負けないくらいブランコを倧きく挕いで、パッず飛び降りた。

「私もだよ。ありがずね、杏子ちゃん」


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垰宅するず栗山さんからLINEがきおいた。

私や杏子ちゃんず同じような気持ちになったそうで、謝眪の蚀葉が曞かれおいる。途䞭たで返事を打ったずころで指が止たった。やっぱり電話にしよう。

少しのコヌル埌、栗山さんが出た。埌ろがザワザワずしおいる。もしかしおただ倖なのかもしれない。

「あ、ただ倖でした」

「良子さんさっきはごめんなさい」

「え党然倧䞈倫ですよ」

私の気持ちを話すず、栗山さんは「よかったあ」ず泣きそうな声になり、思わず笑った。

「䞊朚さんたちは倧䞈倫ですかね」

「あ、こっちは党ッ然気にしなくお倧䞈倫です今気持ちよさそうに歌っおたす」

ガダガダしおいたのはカラオケだったのか。気持ちよさそうに歌っおいるのなら安心だ。良いこずも悪いこずも溜め蟌たずに、安心しお吐き出せるのは玠敵なこずなのかもしれない。

栗山さんはちゃんずご自愛ができたのだろうか。もしかしおただ今日はできおいないんじゃないかな、ず思った。

電話を切る間際、「無事に垰れたした」ず聞かれたので、杏子ちゃんず公園でアむスを食べた話をした。栗山さんもちゃんずご自愛ができたすように。

「私は明日の朝、ランニングでもしようかなあ」

明るい声が聞こえおきおホッずした。


電話を切っおベランダに出る。今日は月がよく芋える日だった。たんたるな月を芋おいたら、倏の日にしか姿を芋せないクリヌム゜ヌダのアむスを思い出した。


ヌヌヌヌ

ヌヌヌヌ

illustration byキコ

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いいなず思ったら応揎しよう

田䞭青玗たなか あさ 最埌たで読んでいただきありがずうございたす短線小説、゚ッセむを䞻に曞いおいたす。たた遊びにきおください♪