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集めて、凝縮し、未来へと生み落とす。主席研究員が語る、TANAKA未来研究所のシンボルマーク誕生秘話

こんにちは、TANAKA未来研究所 公式note編集部です。

創業200年となる2085年に向けて「新パラダイムの創発から具現化まで」を掲げるTANAKA未来研究所(以下、未来研)では、「貴少価値」(貴重にして希少な価値)の探究とその実体化に向けて、さまざまな研究プロジェクトが進んでいます。

そんな未来研のシンボルマークには、以下、私たちがステートメントとして掲げている思想がギュッと凝縮されています。

未来を想像する好奇心と、未来を創造する才能を、グループ内外・世界中から引き寄せ、好奇心・才能の共創、相互リスペクト、繋がり、刺激し合いと反応し合いにより、誰も見たことがない未来の夢・可能性を、具現化する幸福の果実(Precious Things)を隠れた次元を拓き、高次元の解を導出する如く生み出す

今回は、立ち上げ当初から未来研を牽引してきた主席研究員の伊東 正浩と石橋 毅之に、この象徴的なシンボルマーク誕生の経緯や、そこに込められた思いなどについて、じっくりと語ってもらいました。


出会った翌日から始まった「“未来”とは何か」の対話

--まずは、未来研設立当初のことを教えてください。

伊東:私と石橋さんは、2022年に未来研の設立担当者として着任した日に初めて会ったのですが、その翌日から早速、「未来研の“未来”って、具体的にどんなものなのだろうか」「まずはコンセプトから固めていきたいよね」という話をしていました。この時点では、シンボルマークのコンセプトというよりかは、未来研そのもののコンセプト策定を始めた段階でした。

コンセプト設計の中で特に印象的だったのは、出会って2日目の時点で石橋さんが出してきた「核融合」というイメージです。いろいろなモノや情報、それから興味を持ってくれる人達が自分たちのところに集まってきて、超高圧の状態になり、そこから一滴の金(Au)のような価値あるものを生み出すという。集めて、一点に凝縮して、クリスタライズされたものをすっと引き出すような、そんな存在になりたいよね、といった話を最初に二人でしていましたね。

石橋:金や白金などの貴金属の原子を、ほかの元素から新たにつくるには、原子核そのものを変化させる核融合が必要です。新しい価値を生み出すということは、そういう世界の話なんだとイメージして話をしていました。

私たち未来研がやりたいのは、「無から有を生み出すこと」です。まだ誰も見たことのないものを生み出すところへと集中的に挑みたいと考えました。

伊東:お互いのイメージが最初からピッタリと合っていたので、驚きましたね。

--お二人は、今までお仕事をご一緒されていたわけではないんですよね?

伊東:初めて会いました。相性がいいのは、運が良かったとしか言いようがありません。相手が石橋さんでなければこういった方向性で話はまとまらなかった気がしますし、仮に他にもう一人いたとしても、もっと現実的な意見が出てきて、同じくこうはならなかった気がします。バディとして二人で走り切ってきたからこそ、今の形になっているんだと思います。

石橋:お互い「やるからには、きちんと自分たちの考えでやりたい」という思いが強いことで一致しており、その認識を最初に共有できたのは大きかったですね。

コンセプトの核となったのは「宇宙ジェット」

--そこから、未来研のコンセプトはどのように形になっていったのでしょうか?

伊東:まずは、頭の中にあるイメージを、思いつくまま絵や図にして出し合いました。私たちは二人とも、最初から言葉で整理するよりも、いったん目に見える形にしてから共通点を見つけ、最後に言葉へまとめていく方が考えやすいんです。当時は、インターネットで見つけたさまざまな資料を見せ合いながらイメージをすり合わせていきました。フィボナッチ数列や黄金螺旋について話したことも覚えています。

立ち上げ初期の検討資料の一部

--「不変」「スパイラル」「求心」といったキーワードは、すでにこの頃から出ていたんですね。

石橋:ここから議論がさらに広がり、東西の文明がどのように移り変わってきたのか、過去の知恵をどう未来へつなげていくのか、といったテーマについても自由に話し合いました。振り返ると、あの時に思考を大きく広げたからこそ、後に形になったコンセプトにも奥行きが生まれたのだと思います。

--議論を重ねる中で、コンセプトが固まった瞬間はあったのでしょうか?

伊東:この絵ですね。この絵に尽きると思います。

コンセプトの核となった「宇宙ジェット(Astrophysical Jet)」の図

--宇宙ジェットですか。

石橋:ブラックホールに伴う宇宙ジェットは、ブラックホール周辺の高温のプラズマが、強い磁場などの作用によって、回転軸に沿って光速に近い速度で噴き出す現象です。この図は、伊東さんと私の動き方が対になっていて、互いに逆向きの動きをしているように見える、という話から生まれました。

石橋:私の役割は、一見すると価値があるか分からないものも含め、幅広い分野から材料を集め、それらを一つの方向へ収束させていくことです。最終的には一点を目指していますが、集める範囲が広いため、活動そのものは発散しているように見えます。

一方、伊東さんは、まず技術やアイデアを一点に絞り込み、深く掘り下げながら本質へと近づけていきます。そこから生まれた成果は、社会に出た後、さまざまな方向へ大きく広がっていく。つまり、私は「広く集めて一点に収束させる」、伊東さんは「一点に収束させてから広く発散させる」。この二つの動きが同時に起こることで、新しいエネルギーが生まれる。未来研は、そういう場所だというイメージです。目指す先は同じでも、そこへと向かうアプローチは対照的で、その関係性を表す題材として宇宙ジェットが分かりやすいと考えました。

--図には「好奇心を集結し、幸福を拡張する。」という言葉が添えられていますが、今のお話が、この一文に凝縮されているように感じます。一方で、未来研について「一見すると外からは理解不能」とも書かれていますね。

石橋:実は、そこがこの図で最も大切なポイントです。私たちが考えているのは、3年後、5年後といった近い未来だけではありません。すぐに答えが見えるテーマではなく、現時点では簡単に理解されないほど遠い未来のテーマと向き合うことに、未来研の役割があると考えています。

外から見ると、何をしているのか分かりにくい。しかし内側では、さまざまな好奇心やアイデアが集まり、非常に高いエネルギーが生まれている。そして、それが社会に姿を現すときには、黒が白へ反転するように、当初とはまったく異なる価値になって現れる。そんなイメージを込めています。

ブラックホール、ワームホール、そしてホワイトホール

--ここまでの流れから、現在のシンボルマークとステートメントへとつながっていった流れも教えてください。

伊東:コンセプトのイメージ絵まではできていたのですが、それを完璧な文章として引き出してもらうために、外部のプランナーの方に協力をお願いしました。それまでの膨大で、正直かなり散らかっていた資料を全部お渡しして「私たちはこういうことを考えています。ステートメントを作ってください」と。あれだけ雑多なものを渡したのに、どんどん組み上がっていくのを見て、ただただすごいなと思っていました(笑)

石橋:3カ月ほどかけて、何度もやり取りを重ねながら作り上げていきました。その中で大きな転換点になったのが「ホワイトホール」という概念です。宇宙ジェットは、ブラックホールに入りきらなかった物質が放出される現象なので、「集めたものを、きちんと価値あるものとして生み落とす」という私たちの思想を表すには、実は少し違います。そこで、ブラックホールで集めて凝縮したものを、ワームホールを介してホワイトホールから現実世界に生み落とす、という構造へと昇華されていきました。

ブラックホールからワームホールを介してホワイトホールへとつながる、ステートメントのイメージ図

●      好奇心と才能を世界中から引き寄せる「ブラックホール」

●      好奇心と好奇心、才能と才能が刺激し合い、反応し合うことで、いままで誰も観たことがない高次元の解(=幸福の果実)を具現化する「ワームホール」

●      その幸福の果実を現実の世界に生み落とす「ホワイトホール」

石橋:宇宙ジェットから始まった二人のイメージは、こうして一つの物語として結実し、現在の未来研のステートメントへとつながっていきました。

TANAKA未来研究所の公式サイトに記載されているステートメント

--ステートメントの中に出てくる「幸福の果実」という言葉も印象的ですね。

石橋:未来研として探求していきたい「幸せな未来を考える」というテーマに対して、それを具現化した成果物を何と表現するか。かなり苦労したフレーズです。もともと英語の「Precious things」という言葉が先にできていて、それをどう日本語にするか、という順番でした。

--Precious things。いい響きですね。

石橋:貴少(貴重にして希少な)価値を指す “Precious” は、田中貴金属の重要な企業価値であり、不変かつ普遍のコアバリューと認識しています。これまでは貴金属という「Precious metals」のスペシャリストとして事業を営んできましたが、未来研としては、そこから “Precious” の軸が少しずつ増えていき、それぞれの軸から生まれてくるもの一つひとつが「Precious things」であり「幸福の果実」なのだ、という未来ストーリーを描いています。あくまで未来研の中だけの解釈ではありますが、個人的にはとても気に入っているフレーズですね。

伊東:もう一つ、私がステートメントイメージでこだわったのが「勢い」です。イメージの下半分であるホワイトホールの真ん中には、幸福の果実がいくつも生まれてくるのと同時に、一本のストリームが伸びています。

ステートメントイメージにおけるホワイトホール部分のイメージ

伊東:未来研が起こしていくアクションによって、こうした勢いある流れができてくる。その勢いよく放たれていくようなイメージを、どうしても入れたいと考えました。

白と黒に込められた「相補的」な世界観

--最後に、完成したシンボルマークへの思いをお聞かせください。

伊東:完成したシンボルマークを初めて見た時のことは、今でもよく覚えています。私たちが考えてきたコンセプトを、これほど美しく形にしてもらえたことが本当に嬉しく、誇らしく思いました。あれだけ多くの思考や思いを、ここまで凝縮し、シンプルな形に落とし込めるのかと、デザイナーの力にも驚かされました。私たちの思いが詰まったシンボルマークですから、これからも変えることなく、長く使い続けていくと思います。

石橋:このシンボルマークとステートメントを作る過程で、私がよく使うようになったのが「相補的」という言葉です。異なるもの同士が互いに補い合うことで、より良い方向へ発展していく関係を指します。このシンボルマークは、まさにそうした世界観を表していると思います。

特に気に入っているのが、白と黒の使い方です。一見しただけでは、白い円と黒い円のどちらが基準なのか、どちらがブラックホールで、どちらがホワイトホールなのか分かりません。私と伊東さんの考え方や動き方は対照的ですが、それらが交わり、互いに影響し合いながら変化していく。その様子を見事に表現してくれたシンボルマークだと思います。

プロフィール

伊東 正浩(Masahiro Ito)
株式会社田中貴金属グループ TANAKA未来研究所 主席研究員

2005年大学院修了後、化学メーカーでの研究開発を経て、2006年に日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース(現EEJA)に入社。技術部および研究開発部にてめっきの新技術開発等に従事した後、産官学連携プロジェクトに参画し、「革新的高性能有機トランジスタを用いたプラスティック電子タグ」の開発に従事。帰任後の2017年には、基板上に直接めっきパターンを形成する革新的な技術「DPP(ダイレクトパターニングめっき)」プロセスを立ち上げ、外部機関より高く評価され賞を受賞。その後、2022年の社内公募を経て「TANAKA未来研究所」主席研究員に就任。組織の立ち上げから各種研究プロジェクトの牽引まで、主に「実行・推進」のロールで全方位に活動している。

石橋 毅之(Takeshi Ishibashi)
株式会社田中貴金属グループ TANAKA未来研究所 主席研究員
博士(工学)
JJA(ジュエリーコーディネーター)

2010年大学院博士課程を修了後、田中貴金属工業に入社。筑波工場での技術開発や、大学への出向を通じた次世代技術の共同開発、技術開発部でのバイオケミカル領域における新技術探索、市場探索部におけるマーケティング調査など、多岐にわたる業務領域を横断的に経験。その後、2022年の社内公募を経て「TANAKA未来研究所」主席研究員に就任。組織の立ち上げから各種研究プロジェクトの牽引まで、主に「探索・推進」のロールで全方位に活動している。

 


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文:TANAKA未来研究所 公式note 編集部

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