本人ですら「分からないこと」はたくさんある
私は、本人ですら分からないことはたくさんあると思っています。
そう思う理由の一つが、私自身が長年経験した睡眠障害です。
今だからこそ話せますが、私は5年以上にわたって睡眠の不調に悩まされてきました。
夜、布団に入ってもなかなか寝付けない。ようやく眠れたと思っても途中で目が覚める。運良く朝まで眠れたとしても、熟睡した気がしない。
そんな状態がずっと続いていました。
本当につらかったのは昼間です。強烈な眠気が突然襲ってくるのです。
仕事中に集中力が続かないこともありました。パソコンに向かっていても頭がぼんやりする。おそらく、仕事にも少なからず影響が出ていたと思います。
当然ながら、このままでよいとは思いませんでした。
そこで原因を探そうと、ひたすらインターネットで調べました。睡眠改善に関する記事を読み、動画を見て、紹介されている方法も片っ端から試しました。寝る前の習慣を変えたり、部屋の環境を整えたり、カフェインを控えたり。
今振り返ると、一般的に良いと言われることはほとんど試した気がします。しかし、ほとんど効果はありませんでした。
夜になると、「今日も眠れないのではないか」と考えてしまう──。
そして実際に眠れない。そんな日々を繰り返していました。
ある時、この話を仕事の同僚にしたことがあります。すると、その人はこんなことを言いました。
「睡眠障害を含めて、不調というのは体が出しているアラートみたいなものじゃないかな。睡眠そのものではなくて、食生活や運動不足が原因かもしれないよ」
当時の私は、その発想を持っていませんでした。
睡眠の問題なのだから、睡眠に原因があるはずだと思い込んでいたのです。しかし、言われてみると確かにそうかもしれないとも思いました。
そこで私は、睡眠だけを改善しようとするのではなく、生活全体を見直してみることにしました。
その中で始めたことの一つがダイエットでした。もともと極端に太っていたわけではありません。ただ、食べる量を少し減らし、体重を落としてみようと思ったのです。
すると、不思議なことに少しずつ眠れるようになっていきました。
減食が直接の原因だったのかもしれません。もしくは、運動量が増えたからかもしれません。生活習慣全体が改善したことが影響したのかもしれません。
正直なところ、今でも何が決定的な要因だったのかは分かりません。
ただ、結果として現在は驚くほど眠れるようになりました。
朝までぐっすり眠り、目覚めた時にしっかり休めたと感じられる。以前の自分からすると、信じられないような状態です。
だから、今は睡眠障害は治ったと言ってよいのだろうと思っています。しかし、この経験を振り返っていて興味深いのは、「原因が結局分からなかった」ということです。
本人である私が、一番長くその症状と付き合ってきました。誰よりも自分の体を知っているはずでした。それなのに、何が原因だったのか、自分では最後まで分かりませんでした。
私は以前、自分のことは自分が一番分かっているものだと思っていました。しかし実際には、そうではないのかもしれません。
むしろ、自分自身のことだからこそ見えなくなるものもあるように思うのです。
これは健康だけの話ではないでしょう。人間関係についても同じようなことを感じます。振り返れば、私自身も人間関係でつまずいた経験があります。
その当時は相手に原因があると思っていたことでも、何年も経ってから振り返ると、自分にも見えていなかった部分があったことに気づきます。
当事者であるほど見えない──。これは、健康や人間関係以外の場面でも当てはまることがあるのかもしれませんね。
最後に。以前、不眠について健康診断の際に医師へ相談したことがありました。何か専門的な助言をもらえるのではないかと期待していたのです。
ところが返ってきた言葉は意外なものでした。
「いやー。私もなんですよね」
椅子から転げ落ちてしまいましたよ。医師であっても、自分自身の睡眠について悩むことがあるのだと。。。
田町 崎(たまち さき)

翻訳者。南山大学経済学部経済学科卒業後、人材派遣会社で日系ブラジル人たちとともに働く。これがきっかけとなりブラジルポルトガル語の勉強を始め、のち、市役所/警察/病院などで翻訳と通訳を経験。その後、京都外国語大学でブラジルポルトガル語を専攻し同大学院修士課程を修了。院生時には外務省留学プログラムに参加し、メキシコシティにあるメキシコ国立自治大学(UNAM)でスペイン語を約1年学ぶ。海外メディア報道を通じて主には中米/南米の情勢を研究している。TOEIC910点。
