黒牢城(2026)
黒沢清監督初の時代劇「黒牢城」を観た。原作は、直木賞と山田風太郎賞をダブル受賞し、4つの主要年間ミステリランキング全てで第1位を獲得したという米澤穂信による同名ミステリー小説。これは、なかなか骨が折れる映画化だと思ったが、観てみると、しっかりと黒沢清映画に仕上がっていた。
荒木村重は暴虐な織田信長のやり方に反発し、籠城作戦を決行するも、城は織田軍に囲まれ孤立無援となった。城内の血気盛んな家臣たちを抑えながら、村重は妻・千代保を心の支えに、城と人々を守ろうと苦心する。
そんな時、城内である少年が殺される事件が発生。その後も怪事件が次々と起こる。容疑者は、密室と化した城内に居る家臣や身内の誰か。城外は敵軍。城内は裏切り者。誰もが疑心暗鬼になっていく中、村重は牢屋に囚えている天才軍師・黒田官兵衛と共に謎の解決に挑む。事件の驚きの真相とは!?
原作は謎の多い荒木村重という人物の行動の背景をも推理しながら、城という巨大な密室で起きた4つの怪事件に対峙する村重と官兵衛の推理戦を描いた見事な作品だが、この映画でも、この2人を「羊たちの沈黙」のクラリスとレクター博士のように描き、興味深い謎解きをしてみせる。
黒沢清監督が得意とする得体の知れない暗闇、得体の知れない人物の描写は本作でも遺憾無く発揮され、特に独房で村重と官兵衛が対峙する場面の緊張感や底知れぬ不気味さは見事だ。また、監督の腕だけでなく、とにかく豪華な役者陣の演技合戦も凄まじい。中でも、菅田将暉は圧巻!
季節ごとに起きる4つの事件をオムニバスのようにひとつひとつ解き明かした先に、その奥に潜むさらに大きな謎解きが待っていて、さらに全てを包み込む… と、後半の畳み掛けが凄い。
…のだが、全編にわたり暗闇が支配する映像と、美しい佇まいではあるが、決して派手に見せる演出に向かわないところが、映画全体を地味な印象にしている感も否めない。そこがちょっと残念。
とはいえ、素晴らしい原作の魅力をしっかり映画に落とし込み、これだけの(もったいないほどの)キャスト、セット、衣装、見事な演技を揃えたのだから、十分なのかな。
ラストの印象が、いつもの黒沢清監督作品らしい(ややホラーっぽくもある)ダークな感じで個人的には好きなんだけど、それなりの大作なんだから、もうちょっとメジャーな感じで終わらせても良かったんじゃないの?って思った。
