メモ 対反乱作戦の計画作業において軍人と文官が協力することの重要性
米陸軍のハーバート・マクマスター(Herbert McMaster)はイラク、アフガニスタンで実戦を経験しており、2010年にはアフガニスタンの治安維持に当たっていた北大西洋条約機構(NATO)の国際治安支援部隊司令部で計画部(J-5)副部長に任命されたこともあります。
彼は作戦計画に関する考察で、文民と軍人が作戦レベルで協力しながら計画作業を進める意義について説いており、今回はその議論を紹介したいと思います。
McMaster, H. R. (2010). Effective Civilian-Military Planning at the Operational Level: The Foundation of Operational Planning, in Miklaucic, M., ed. Commanding heights: Strategic lessons from complex operations. National Defense University Press, pp. 105-114.
イラクやアフガニスタンの作戦遂行においては、軍事的アプローチだけで任務を達成することが困難な場面が数多く生じていました。対峙する脅威が非国家主体であったため、これに対処する反乱作戦(counterinsurgency operation)の計画を立案しなければならなかったのですが、その際に現地の社会経済のダイナミクスを考慮する司令部の体制に不備があったためです。
マクマスターは、対反乱作戦の司令部では軍人と文官が計画作業で協力しなければならず、その地域で暴力が発生している原因が何であるかを調査し、特定し、記述するところから計画作業を始めることが重要だったと論じています(McMaster 2010: 107)。その暴力の根本的な原因に対してアプローチできる作戦設計を支援できるように情報活動を展開し、時間の経過によって文脈が変化した場合に対応していきました。「作戦レベルの情報活動は、軍事的状況を、形作る政治的、社会的、経済的ダイナミクスの文脈に位置付けなければならない」と述べています(Ibid.: 108)。
司令部において情報部と計画部は絶えず連絡を保っていましたが、計画部は現地の地域の歴史的、文化的な背景を理解している文民を伴って現地訪問を実施し、地方の政府関係者、部族、コミュニティの指導者、治安部隊の指揮官と接触することで独自に情報を集めていました(Ibid.: 108)。そして、情報部が提供する情報評価を参照した上で、計画部では指揮官の目標達成を可能にする作戦構想(operational concept)を練り上げました。
この作戦構想は、任務達成のための自軍の努力をいかに組み合わせるべきか、友好国の政府の努力といかに調整を図るべきかを説明する重要な構想です。マクマスターは、作戦構想が作戦計画のプロセス全体の中で最も重要な部分となるので、どのような行動をとり、それが時間の経過に従ってどのように展開していくのかを明確にする意味があったと説明しています。これが司令部で共有されると、計画部は作戦部隊がそれぞれの努力をどのような下位目標に向かって指向すべきかを示す努力線(lines of effort)を明確にし、そこから部隊の行動方針を案出していきます。
対反乱作戦では、地域社会が反乱軍に支援を提供する動機を完全に取り除くことが絶えず大きな課題となります。つまり、地域社会は政府軍と反乱軍の支配領域がせめぎ合う中で困難な立場に置かれているので、作戦構想がこれを無視すると対反乱作戦としての効果が劣化します。司令部に文官を配置し、ある行動方針が地域社会の理解が得られるものであるのかリスクを評価することで計画部のパフォーマンスを向上させることが可能となります。
「計画部員は、敵の組織の性質と構造、そのイデオロギーや政治哲学、追求している戦略、優位の源泉、そして劣位について理解していなければならない。大まかに言えば、作戦は、物理的、政治的、情報的、心理的な領域において敵の弱点を打撃しながら、敵の組織を優位の源泉から切り離すことを目標とすべきである。効果的な治安維持を通じて、反乱軍の脅しと強制を打ち破ることは、政治的な進展を達成し、効果的な攻勢作戦に必要とされる情報を獲得するための必要条件である。軍隊は「和解が不可能な勢力」を追跡することによって、最も強硬で危険な敵の組織を打倒するだけでなく、「和解が可能な勢力」を説得し、紛争の政治的な解決に同意させることも目的としている」
軍隊では、敵と味方が厳密に分けられた状況で戦闘力を発揮する場面を想定することが多いため、対反乱作戦レベルで敵対の度合いがさまざまな勢力と渡り合う際に武力の行使が過剰になる場合があります。対反乱作戦では戦闘力の抑制を弾力的に考える必要があり、また抑制の仕方は恣意的に調整されてはなりません。それは法の支配の確立に向けて適用される必要があるとされています。文官は治安組織と司法部門との連携も担うことで、法の支配に基づく秩序の形成を支援します(Ibid.: 112)。
一般に作戦レベルでは、国家の戦略方針と作戦部隊の役割を踏まえ、達成すべき任務と目標を特定し、行動方針を決めていく作業で文官の知識や技能を用いませんが、作戦の内容によっては必要とされる知識や技能が変化する可能性があることをマクマスターの議論は示しています。
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