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メモ 2010年代の米軍はどのように人間中心視点で戦争を捉え直したのか

戦いとは本来、人間の意思と意思との衝突です。そのため、戦争を認識するには、その物質的な側面だけでなく、社会的・文化的な側面を考慮して交戦者の意思を理解することが必要です。それにもかかわらず、米軍は科学技術の進歩や新しい装備品の開発に注力する傾向にあり、軍事理論の分野でも人間的要素を軽視する傾向がありました。

2013年にアメリカの陸軍参謀総長、海兵隊総司令官、特殊作戦軍司令官が共同で発表した『戦略的ランドパワー:意志の衝突に勝つ(Strategic Landpower: Winning the Clash of Wills)』は、アフガニスタンとイラクの戦いを通じて、従来の戦争認識を見直し、人間領域(human domain)のドクトリンを構築する意義を打ち出した文書です。

なぜ戦いの人間的領域に注目する必要があるのでしょうか。この根本的な問いに対しては、国家、企業、非政府組織など、すべての組織は人間によって構成され、管理され、指揮されているためだと説明されています(Odierno, et al. 2013: 2)。先の文書でも「戦争は最も過酷な物質的な問題であることは間違いないが、それゆえ我々は衝突に焦点を当て、意思を見過ごしがちである。実際、アメリカの戦略的思考では、人間中心的(population-centric)な考慮事項が軽視されることや、あるいは誤認されてきたことは、これまでにも何度も記録されている」と述べられています(Ibid.)。

ベトナム、ボスニア・コソボ、ソマリア、イラク、アフガニスタンにおける戦いでは、アメリカ軍の首脳部では敵対する指導者の価値観、あるいは社会を構成する人々の文化や思想に対する基本的な認識に欠陥があり、それが任務達成を妨げてきたとされています(Ibid.)。このような反省の上に立ち、アメリカ軍は任務遂行のために、より多様な文化を理解し、人間的領域で優位に立つ能力を獲得しなければならないと考えられています(Ibid.: 2-3)。特に陸上戦を遂行する陸軍、海兵隊、特殊作戦部隊は、戦闘において敵を撃破するために武器を使用する能力を持つ能力と、現地で人々と緊密な関係を構築する能力の両方を持つ必要があるため、これらの能力をいずれも戦略的ランドパワーとして位置づける必要があると考えています。

「陸上作戦は、平時においても、紛争時においても、人間的要因に対処する上で固有の重要な役割を担っている。この主張は、以下の認識から導き出されたものである。(1)陸軍、海兵隊、特殊作戦部隊は、平和維持活動、包括的な軍事的連携、安全保障部隊の支援、友好国の能力構築、安定化作戦など、戦争未満の「人間的領域」に影響を与える上で中心となる活動に大きく貢献している。(2)紛争時には「人間的領域」を構成する人的ネットワーク(味方、敵、中立)に最も頻繁かつ密接に関与するのは、陸上部隊である。(3)戦略の成否は、陸上領域、特に人間の存在と陸上の領域が重なる空間、そして潜在的に人間の存在とサイバー領域が重なる空間で決まることが最も多い」

(Ibid.: 3)

引用箇所でランドパワーが従来から活動していた陸上領域に加えてサイバー領域の関係に言及しています。別の箇所を読むと、現在の戦略環境が複雑化している理由として、インターネット、特にソーシャル・メディア・サービスが人間の相互作用の速度を大幅に増加させていることが指摘されています。こうした環境で人間的要素が軍事情勢に与える影響を認識するためには、結局、人間と人間との接触を保つことが「唯一の信頼できる手段」だと述べられています(Ibid.: 6)。平素から人的ネットワークを形成し、緊密にコミュニケーションをとることが、軍事的に重要であることを示唆する議論です。

2010年代に陸軍、海兵隊、特殊作戦軍がこうした人間中心の立場でドクトリンの見直しを進めていたとき、アメリカ海軍・空軍では長射程の精密打撃能力を駆使して敵と交戦するエアシー・バトル(AirSea Battle)の構想を検討していました。同一国の軍隊でも作戦領域、ドメインが違うだけで、これほど異なった発想になるのは軍事思想の研究者にとって興味深い現象だと思います。現在のアメリカ軍では統合ドクトリンの開発も進めていますが、軍種ごとの視点の違いを乗り越えるために、意識的な努力を払う必要があることが分かる事例でもあります。

参考文献

  • Odierno, R. T., Amos, J. F., & McRaven, W. H. (2013). Strategic landpower: Winning the clash of wills. Washington, D.C.

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