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メモ 軍事労働力分析(military workforce analytics)とは何か

組織論の観点から見ると、軍隊は閉鎖的かつ階層的な構造を持つ組織であるといえます。業務遂行に使用する知識や技能を持つ人材が民間にほとんど存在しない上に、その教育訓練に時間がかかるため、安定して部隊、機関に人員を供給し続けるために計画的、長期的に人材を育成しなければなりません。このため、軍隊の人事行政では軍事労働力分析(military workforce analytics)を用いて実績を把握し、要員計画に反映してきました。

軍事労働力分析の前提となるのは、軍隊が業務のために作製する人事統計の品質です。ほとんどの軍隊は人事行政のために構成員の人事情報を収集し、それを管理に活かしていますが、人事組織が体系化されていない場合、組織内部でデータが散在している場合があります。人事行政の合理化にとって人事情報の一元的な管理体制を構築することは基本的な課題であるといえます(Straver 2023)。

軍事労働力分析の最も代表的な形式は損耗分析(attrition analysis)です。軍隊はその任務を遂行するために定員を決めており、その範囲で部隊を編成しますが、定員を満たす人員が常に確保できるとは限りません。軍事労働力分析では作戦行動に起因する戦闘損耗だけでなく、健康状態の悪化、軍事犯罪による懲戒免職、そして自主的な退職のような管理上の人的損耗も分析の対象とします。一般に軍事行政で問題となることが多いのはこの管理上の損耗でした。

人事管理上の損耗を従属変数として、これを説明するための独立変数を探すとき、研究者が注目してきたのは勤続年数(years of service: YOS)でした。勤続年数が1年未満の軍人の離職率は非常に高いことが知られています。カナダ軍の研究では、この時期の損耗率は25%以上にもなるとされています(Fang & Okazawa 2009: 2)。また、軍人年金の受給資格が発生する勤続年数として20年という要件があるため、これに達した軍人の損耗率も高くなる傾向があり、20%を超えます(Ibid.)。その後、いったん損耗率は落ち着きますが、勤続年数が30年になると再び損耗率は20%を超え、それからは35年に近づくにつれて損耗率は上昇し続けることになります(Ibid.)。このようなパターンがあるため、軍事行政では年間の離職者の総数に加えて、勤続年数別に区分した損耗率を管理指標とすることが一般的です。

軍事労働力分析の専門家は、こうした知見を踏まえ、1年という単位時間ごとに時間間隔を区切り、その間に軍隊に入る、あるいは出ていく個人の人数をフローとして、軍隊に残留した人員のストックがどのように変動するかを数学的モデルを用いて分析してきました(e.g. Vajda 1978; Haley & Williams 1998)。

軍事行政では、ある時間内に所望の人員ストックの水準に到達できる可能性を保持性(mainteinability)といいますが、これを高めようとすると、高度な訓練を積んだ人材を大量に要求する作戦の要求と対立する場合があります。例えば、予備役制度の拡充や民間軍事警備会社の利用などは保持性を改善する取り組みとして近年注目されていますが、即応性の低下など作戦運用に一定の制約を課す側面があるため、組み合わせ方が問題となっています(Soeters 2024)。

参考文献

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