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資料紹介 ビドルが用いている戦役分析のモデルを解説する(2026年7月25日)

ビドルの著作『軍事力』では、戦力運用の違いが戦闘の結果に与える影響を説明するために、独自の戦役分析の数理モデルを使用しており、その内容は補論(Biddle, S. (2004). Military Power. Princeton University Press, Appendix. A Formal Model of Capability.)で詳しく説明されています。

このようなモデルを理解するためには、大学レベルのオペレーションズ・リサーチの予備知識が必要ですが、現在の日本では中学校で「数学的活動」、高校数学で「数学的モデリング」を段階的に教えてきているので、その考え方を思い出せば、大学レベルのオペレーションズ・リサーチの思考過程を辿ることが容易になります。

軍事学で作戦レベルの戦役分析に応用するモデルでは、部隊規模や使用装備、さらに部隊行動を条件とし、前進距離や戦闘損耗などを結果とする関係式を立てることが基本となります。ビドルは、この方法を用いて現代システムの説明を行っていますが、多くの方にとってはその内容がかなり難解だと感じられるかもしれません。ここではビドル自身の説明を基本的には踏襲しつつも、私自身がそのモデルを理解する過程で得た気づきも交えて補足的な解説を行います。

定義

  • $${R}$$ 攻撃部隊の規模(人員数)。Rはレッド、赤軍のことを表します。(軍事オペレーションズ・リサーチの用語法として、敵対する二つの部隊については赤軍と青軍として区別することが一般的です。赤軍を攻撃部隊とすることも慣例であり、以下では混乱を避けるために赤軍と青軍ではなく、攻撃部隊と防御部隊と言い換えています)

  • $${B}$$ 防御部隊の規模(人員数)。Bはブルー、青軍のことを表します。

  • $${\tau_R}$$ 攻撃部隊が使用する主要装備の配備年。

  • $${\tau_B}$$ 防御部隊が使用する主要装備の配備年。

  • $${d}$$ 近接地域における防御部隊の陣地縦深を距離で表します(km)。

  • $${f_r}$$ 防御部隊全体に占める予備部隊(reserve)の比率。作戦レベルの予備は近接地域から少し離れた後方地域に拘置され、不測の事態に備えている部隊です。

  • $${f_e}$$ 防御部隊で前進配備される部隊の比率。これは上述した予備に含まれない部隊のことを指しています。ビドルは明確に説明していませんが、f(r)とf(e)の和は必ず1とならなければなりません。なお、eは敵に対して露出されていることを意味するexposureの頭文字です。

  • $${V_r}$$ 防御部隊の後方地域における移動速度(km/d)。これは防御部隊を構成する予備部隊が後方地域から近接地域に向けて移動するときの速さを表しているパラメータです。

  • $${V_a}$$ 攻撃部隊の攻撃地点(point of attack)における移動速度(km/d)。一般論として、攻撃部隊の1日当たりの移動速度が速くなるほど近接地域を突破しやすくなるといえます。したがって、それだけ防御部隊の予備部隊も迅速に移動する必要が強まります。

  • $${w_a}$$ 攻撃部隊の攻撃正面(km)。

  • $${w_{th}}$$ 戦域全体の正面(km)。先に述べた$${w_a}$$より必ず大きな値をとります。攻撃部隊は基本的に任意の正面に対して部隊を投入可能と想定しています。

  • $${k_1}$$ 定数:完全な来援を受け、かつ完全に掩蔽された防御部隊1名が阻止可能な攻撃部隊の人数(人員数)。

  • $${k_2}$$ 定数:A.5の方程式のフィット・パラメータ。防御部隊の予備部隊がどれだけ残存した状態で戦闘に加入できるかを表す$${P_S}$$を求めるために使用します。

  • $${k_3}$$ 定数:攻撃地点から離れた陣地に1名の防御部隊の兵士を留めるために必要な攻撃部隊の規模(人員数)

  • $${k_4}$$ 定数:A.7の方程式のフィット・パラメータ。この値が大きくなるほど、技術的優位に応じて側面の掩護に必要な部隊が減少します。反対にこの値が小さくなるほど側面の掩護に必要な部隊は大きいまま維持されます。

  • $${k_5}$$ 定数:攻撃部隊の前進軸外の損耗(戦死・戦傷など)の大きさ(人員数)

  • $${k_6}$$ 定数:防御部隊の軸外における損耗の大きさ(人員数)

  • $${k_7}$$ 定数:A.11の方程式のフィット・パラメータ。この値が大きいと、同一の条件でも攻撃部隊の損耗が拡大しやすくなりますが、小さいと攻撃部隊の損耗が少なくなります。ビドルはこのパラメータの挙動についてあまり詳しく説明してませんが、このモデルで想定する損耗メカニズムを踏まえると、影響が大きいパラメータです。

  • $${k_8}$$ 定数:進撃の速度がゼロにおける攻撃部隊の1日ごとに対防御部隊1名当たりから被る損耗(人員数)

  • $${k_9}$$ 定数:防御部隊の予備部隊1名あたり1kmの側面を掩護するために必要な攻撃部隊の掩護部隊の規模($${R/B}$$攻撃部隊の規模/防御部隊の規模×距離(km)を単位)

初期条件の定式

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私は2010年から政治・外交・軍事に関する論文紹介を行う活動を続けてきましたが、昨今の世界情勢の推移…

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