世界が忘れる前に、声を書くーー映画『撃たれた自由の声を撮れ』
映画『撃たれた自由の声を撮れ』を観ました。
2021年、タリバンが再び政権を掌握したアフガニスタンで、自由を求めて声を上げる女性たちを映したドキュメンタリーです。
ラシュミンとナスタランの姉妹は、女性たちと連帯し、街頭で抗議活動を続けます。
催涙弾や銃撃を浴び、仲間が傷つき、逮捕されても、声を上げることをやめない。
そして、タリバンの暴力を世界へ伝えるため、スカーフの下にスマートフォンを隠し、映像を撮り続けます。
こういう巨大な問題を知ってしまったとき、いつも僕は「自分に何ができるんだ…」と立ち尽くしていました。
だけど、この映画は、僕でも「声を書く」ことはできると、気づかせてくれました。
アフガン女性の声
アフガニスタンでは、2021年8月、アメリカ軍の撤退とともにタリバンが国土のほぼ全域を掌握し、20年間続いた民主政権が崩壊しました。
タリバンの復権後、女性たちは働く場所を奪われ、女の子は中学校へ通えなくなりました。
外出や移動、服装、公共の場で声を発することまで厳しく制限されました。
学ぶこと。働くこと。街を歩くこと。
自分の人生を、自分で選ぶこと。
人権が、一つずつ奪われていきました。
その中で、ラシュミンたちはデモを行い、その様子を撮影していました。
銃を装備したタリバン兵たちの前で、命の危険を承知で。
その理由を、ラシュミンたちはこう語ります。
「みんなが口を噤んだままだと、不満はない、幸せなんだと勘違いされる」
「新政府ができてよかったと、世界は信じてる。静かだから、満足しているんだって」
ロヒンギャの声
映画館を出て、僕は少数民族ロヒンギャを描いた絵本を、思い出していました。
ロヒンギャは、古くからミャンマーに住んできたにも関わらず、隣国バングラシデシュから来た不法移民」とされ、国籍を奪われてきました。
そして2017年、ミャンマー国軍による大規模なジェノサイドが起きました。
村を焼かれ、多くのロヒンギャがバングラデシュの難民キャンプへ逃れました。
現在もおよそ100万人が、テントのような家で、夜は武装集団に怯えながら、その難民キャンプで暮らしています。
絵本の主人公ハールンくんは、読者に語りかけます。
「キャンプでの せいかつは いまも つづいている。」
「どうか、どうか、ぼくたちのことを わすれないで……!」
沖縄の声
また、琉球大学教授 上間陽子さんの書籍『海をあげる』も浮かんできました。
上間さんと幼い娘さんの日々の生活を通じて、沖縄の基地問題の現実が、痛切に綴られます。
米軍機の音に、親子の会話を遮られること。
娘がガブガブ飲んでいた水道水が、汚染されていたこと。
米軍人による性暴力や殺人が起きても、本土で忘れられていくこと。
辺野古の新基地建設が決定され、沖縄の海で埋め立て工事が始まる。
ウミガメや珊瑚は死んでしまうことを、娘に言えない。
そして、上間さんは静かに綴ります。
「この海をひとりで抱えることはもうできない。」
「だからあなたに、海をあげる。」
「この本を読んでくださる方に、私は私の絶望を託しました。だからあとに残ったのはただの海、どこまでも広がる青い海です。」
「声を書く」
いつも僕は「自分に何ができるんだ…」と立ち尽くしていました。
それでも、
アフガニスタンのラシュミンが、
ロヒンギャのハールンくんが、
沖縄の上間さんが、
僕らに求めているのは、まず声を受け取ることではないか。
見なかったことにしない。
忘れない。
絶望を引き受け、全員で抱える。
世界の問題を、僕が解決することは、多分できない。
それでも、声を受け取り、繋ぐことならできる。
だから僕は、声を書きます。
【関連記事】

