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人はお金を出してでも広告を避けたがる

最近はうっかりウェブメディアを開くとバナー広告がどんどん出てくるようになりました。消したくてもどこに「閉じる」ボタンがあるかわからない。「close」という文字がグレーでちっちゃく書かれていたり「✕」ボタンもものすごく小さかったりする。「✕」を押したつもりがズレて広告先のページに飛んでしまったり。

ああ、イライラする。

これは多くの人が体験していることだと思います。こうした体験が積み重なって、広告はどんどん嫌われていってしまいます。

YouTubeにせよ、ネットフリックスにせよ、無料でコンテンツを楽しむためにはCMを「見なければならない」というのが現状です。それほど広告は嫌われている。

人はお金を出してでも広告を見たくない。

それが現状であり、それを企業の人たちは事実として受け止めなければいけない段階に入っている気がします。

企業のコミュニケーションはどうあるべきか

じゃあ、企業はどうやって情報を伝えればいいのか?

僕の答えはシンプルです。素直に伝えることです。

「私たちはこういうものです。こんな思いがあります。こういう商品ができました。こんなに素敵なものです。ぜひ買ってください!」

このようにピュアに思いを届けることができた企業が生き残っていくのではないか。ピュアなコミュニケーションをできたところだけが、きちんとユーザー消費者に届く。そういう時代になってきているのではないか。

理想主義すぎるかもしれませんが、そんなことを思っています。

広告や広報の原点は「売り声」

メディアが発達する前まで、お店の店主や会社の社長は、自ら「これはいい商品だよ!」「これはいいサービスですよ!」と言っていたはずです。江戸時代に至っては店頭で店主が「これはいいよ〜」「いらんかね〜」などと言っていたわけです。見たことはないですが。

そういった声かけは「売り声」と言われるそうですが、まさに「売り声」というのが、時代を経て複雑化して、いわゆる「広告」や「広報」「PR」というものになっていったのだと思います。

時代を遡っていくと、広告や広報の原点は「売り声」に行き着きます。

江戸時代は商品をカゴなんかに入れて練り歩きながら「いらんかね〜」とやっていた。昔はそうやって店主が直接お客さんに声をかけて商売をしていました。

しかし戦後、会社ができて、社長や店主自身が売るようなことは少なくなっていきました。

大量のモノを作って、それを商品として市場に流す。その商品を知ってもらうために、広告を出す。多くの人の目に留まる。例えば新聞や雑誌、テレビなどにCM、広告を出す。それによって知ってもらう。好きになってもらう。そして買ってもらう。そういう流れになっていきました。

新聞、雑誌、テレビ、ラジオ……そういったメディアがどんどん発達して、多くの人に情報を瞬時に届けられるようになったのです。

広告が届かない時代とインターネット

転換点は、やはりインターネットの登場でしょう。

インターネットによって、いわゆる「マスメディア」というものが機能しづらくなったのは既に指摘されている通りです。

テレビ、ラジオ、新聞などのマスメディアを通さなくても、SNSやインターネットのメディアを通じて、あらゆる情報を届けることができるようになりました。

動画の世界では、テレビ全盛の時代から、YouTubeが登場し、YouTuberたちが面白いコンテンツを作るようになりました。さらに今はネットフリックスやアマゾンプライムのようなものもあります。インターネットの登場によって、マスメディアの威力はどんどん失われていきました。

それに伴って企業の広告も同じように影響力が下がっていきました。

どれだけCMを打っても、なかなか売り上げに繋がらない。そもそも多くの人がテレビを見なくなった。たくさんのお金をかけてもなかなか効果に繋がらない。そんなことが起きてきたのです。

新聞や雑誌の世界においてその傾向は顕著です。

そもそも新聞や雑誌自体が売れていないわけですから、そこにいくら広告を出しても、なかなか届かない。そういうことが頻発してきました。

これまではただ広告を打っていればよかった。イベントをやればよかった。CMを流していればよかった。しかし、それが届かなくなった――。

一方で伸びてきたのが、インターネットでありSNSです。

SNSというのは人が人に対して直接、情報伝達できるツールです。人の想い、人の声、人の考え方、情報……そういったものを「1対1」で届けることができるツール。それがSNSです。うまく「バズる」ことができれば「1対1」を超え「1対1万」「1対10万」という図式だって実現します。

「売り声2.0」という提案

少し飛躍的に感じるかもしれませんが、そこで重要になってくるのが経営者の言葉、社長の言葉なのではないかと僕は思うわけです!

会社を代表するのは、当たり前の話ですが、やはり「社長」です。

ユニクロといったら柳井さん。ニデックといったら永守さん。ソフトバンクといったら孫さんが真っ先に思い浮かびます。広報の方の顔が真っ先に出てくることはほぼありません。

広報の方が情報発信する、お話しすることももちろん重要です。それももちろん価値のあるものだとは思いますが、多くの消費者・ユーザーに刺さるのは、やはり社長の声ではないかと思うのです。ユニクロであれば柳井さん、ソフトバンクなら孫さんの声が聞きたい。

各マスメディアが力を失うなかで台頭しているネットのメディアやSNS。それらに乗せて伝えるときに、最も効果があるのが「社長が自らの言葉で伝える」ということなのではないかと思うわけです。

江戸時代に発展した「売り声」が、時代を経て広告・広報・PRといった手法に成り代わっていきました。しかし、広告・広報・PRを下支えしていたマスメディアというものが瓦解してきている。そういうなかで、出てきたのがSNSという個をエンパワーメントするツールです。

提案したいのは、SNSを使って経営者自身が声を届ける「売り声2.0」。これが令和の情報発信のあり方なのではないかと思うわけです。

ソフトバンクの孫さんは決算報告の発表会や経営の説明会に自ら出てきて「今がどういう時代であり、ソフトバンクはどういうビジョンを描いており、いまどちらに向かっているのか?」を熱っぽく語ります。

経営トップが自分の言葉で熱く語る。

それによってお金も集まってくるし、ソフトバンクの商品・サービスを使ってみようかなと思う人も増える。孫さんは、これを一番うまくやっているのではないかと思います。

孫正義、イーロン・マスク、雷軍

ユニクロも柳井さんの言葉が直接売り上げに繋がっているかどうか定かではありませんが、「ファーストリテイリング」という会社への信頼は柳井さんが形づくっているのではないかと思います。

ユニクロの服を買う人は、チラシを見て買うかもしれません。しかし「ファーストリテイリング」という会社への信頼は、やはり柳井さんが作っている。なぜ信頼が生まれるかというと、柳井さんがことあるごとに自らメディアに出て言葉を尽くすからです。

海外に目を向けると、2人の人物が思い浮かびます。

1人はやはり、イーロン・マスクです。

イーロン・マスクの情報発信は賛否両論ありますし、ちょっとやりすぎな面もあるとは思います。諸刃の剣ではありますが、やはり自分の言葉で伝えるからこそ、あれほどの影響力を持つことができている。

イーロン・マスクの思想を多くの人が受け止めることによって、テスラやXなどへの信頼度が上がり、ユーザーが増えていくということが起きているのだと思います。

もう1人が「シャオミ」という中国の会社の雷軍(レイ・ジュン)という経営者です。

彼は創業期に中国のSNS「微博(ウェイボ)」を最大限使っていたそうです。自ら「今度はこういう商品が出たよ!」と告知をしたり「この商品の改善策を教えてくれないか?」などとユーザーと密にコミュニケーションして、売上を伸ばしてきたと言います。

経営者の発信が「ブランド」になる

今後、こういったケースは増えていくと思います。

つまり経営者が前に出て言葉を尽くすことで、会社のブランドになっていくケースが増えていくということです。

むしろ経営者が見えない、社長の顔が見えない会社に溜まっていくのは「不信感」です。そういう会社はちょっとした不祥事が起きたときも社長が顔を出しません。そこでますます信頼度が下がっていく。

これからは社長が前に出て自ら営業する。その姿勢が、社内外に好影響を与えていくと思うわけです。

経営者は別に「インフルエンサー」になる必要はないのです。毎回バズったり、何か面白いことを言って賑やかしをしたりしなくてもいい。

経営者は企業の最も強力な「スポークスマン」になるべきです。企業を代表して発信する存在です。企業の公式な情報やリリースも、社長のアカウントで発信する。そうすることで信頼に繋がり、より多くの人に届くようになるのではないかと思います。

すべての広告が「売り声2.0」に置き換わるというのは非現実的ではあると思います。当然、今後も広告が果たす役割は大きいでしょう。

ただ、お金を出してでも広告を避けたがる時代に、取り戻すべきは企業への信頼ではないかと思うのです。そのためにも経営者自らが前に出て、言葉を尽くす。これほど効果的なことはないと思います。

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