洗面台の水は、昨日を流していた。
朝。
眠たいまま、
洗面台の前に立つ。
蛇口をひねる。
冷たい水が、
手のひらを通り過ぎる。
顔を洗う。
それだけのこと。
毎朝、
何も考えずに繰り返している。
でもある日、
ふと思った。
毎朝、
同じことをしているはずなのに。
その朝は、
少し立ち止まった。
私は、
顔だけを洗っているんじゃなかった。
昨日うまくいかなかったこと。
言いすぎた言葉。
なんとなく残っていた疲れ。
そんなものまで、
少しずつ、
水と一緒に流れていた。
誰かに励まされたわけでもない。
何かが解決したわけでもない。
それでも、
毎朝同じ冷たさの水は、
「昨日」を抱えたままの私を、
今日へ戻してくれていた。
だから私は、
朝の支度を
「準備」だと思っていたけれど、
本当は、
心を少し軽くする時間でも
あったのかもしれない。
毎朝の水は、
今日を始める前に、
昨日を少しだけ、
流してくれていた。
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何気ない日常は、
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