「半導体に回路を描く」技術 ~露光とドライエッチング~
〜露光とドライエッチング〜
半導体では、
非常に細かい回路を作る必要があります。
そのため、単に「削る」のではなく、
どこを
どの方向に
どれくらい深く
削るかを、ナノレベルで制御する必要があります。
そこで使われるのが
「露光」と「ドライエッチング」です。
① 薄膜を作る

まずウェハー上に、
SiO₂(酸化膜)
金属膜
絶縁膜
などを成膜します。
② レジストを塗る
次に、光に反応する材料
「レジスト(感光材)」を塗ります。
③ 露光
〜半導体に回路を描く〜
半導体では、
まず「どこを削るか」を決める必要があります。
そこで使うのが「露光」です。
これは、
昔のフィルムカメラの現像に少し似ています。
昔の写真の現像

昔のカメラでは、
フィルムに光を当てて写真を撮っていました。
フィルムには、
光に反応する材料が塗ってあります。
そこへ光が当たると、
化学変化が起きます。
そのあと現像液と定着液につけることで、光の当たらなかった部分が溶け出して
写真が浮かび上がります。
半導体もかなり似ている
半導体でも、
ウェハーに「レジスト」という
光に反応する材料を塗ります。
そこへ露光装置で光を当てると、
光が当たった場所
当たっていない場所
で性質が変わります。
そのあと現像をすると、
回路パターンだけが残ります。
つまり、
「半導体の回路を写真のように焼き付けている」
とも言えます。

露光装置とフォトマスク
では、
どうやって回路パターンを描いているのでしょうか?
ここで登場するのが、
露光装置
フォトマスク
です。
フォトマスクとは?
フォトマスクは、
半導体回路の「原版」です。
イメージとしては、
写真のネガフィルムや、
ステンシル(型紙)に近いです。
透明なガラス基板の上に、
非常に細かい回路パターンが作られています。

光を通す場所、通さない場所
フォトマスクには、
光を通す部分
光を遮る部分
があります。
そこへ光を当てると、
ウェハー上に
同じパターンが焼き付けられます。
露光装置は超高精度プロジェクター
露光装置は、
巨大な高精度プロジェクターのようなものです。
フォトマスクのパターンを、
レンズやミラーを使って、
ウェハー上へ縮小投影します。
位置合わせも超重要
さらに露光では、
前の工程で作ったパターンに対し、
ナノレベルで位置合わせする必要があります。
これを「アライメント」と呼びます。
もし位置がずれると、
配線がつながらない
トランジスタが動かない
など、
半導体が正常に動作しなくなります。
でも半導体はとんでもなく細かい
普通の写真なら、
人の顔が写れば十分です。
でも半導体では、
100nm
10nm
数十nm以下
レベルの線を描く必要があります。
髪の毛よりはるかに細い世界です。
そこで重要になるのが「光の波長」
光は波のような性質を持っています。
この波の長さを「波長」と呼びます。
波長が長いと…
光がぼやけやすくなります。
太い筆で絵を描くような感じです。
波長が短いと…
より細かい線を描けます。
細いシャープペンのようなイメージです。
半導体で使われる光
KrF(クリプトンフッ化物レーザー)
波長:248nm
昔の半導体で主流でした。
180nm〜130nm世代など。
ArF(アルゴンフッ化物レーザー)
波長:193nm
さらに細い線が描けます。
90nm、65nm、45nm世代などへ進化。
今でも非常に重要です。
でももっと細くしたい
例えば、
「10nmレベルの加工をしたい」
のに、
光の波長が193nmだと、
普通に考えるとかなり難しい。
太いマジックで超細線を書くようなものです。
そこで登場したのがEUV
EUV(Extreme Ultra Violet)
波長:13.5nm
ArFの193nmより、
圧倒的に短い波長です。
そのため、
より細かい回路を形成できるようになりました。但し、この波長の光は直接出力するレーザー光源がないために、光源部だけで露光装置全体の約半分を占める程の重要な部分となっています。発生原理ですが、金属スズを熱して水滴を作り、この水滴が落ちる途中にレーザー光を当て、中空に高密度プラズマという状態を作る事によって発生します。
現在では、
7nm世代
5nm世代
3nm世代
2nm世代
などの先端半導体製造で使われています。
ただし「2nm」は本当に2nmではない
実は、
「2nmプロセス」
=
「本当に2nmの線幅」
ではありません。
昔は、
ある程度ゲート長など実寸に近い意味がありました。
しかし現在では、
トランジスタ密度
性能
消費電力
世代
などを含めた
「プロセスノード名」
として使われています。
つまり、
「2nmだから本当に2nmの線幅」
という意味ではありません。

ではなぜ13.5nmの光で
2nm世代が作れるのか?
半導体では、
光学補正
多重露光
パターン補正
計算処理
などを使い、
波長より細かい加工を実現しています。
EUVはなぜ難しいのか
EUVは、
普通のガラスレンズを通りません。
さらに、
空気にも吸収されてしまいます。
つまり、光源が実現しても普通のカメラのように
レンズを通して
空気中で光を運ぶ
ということができません。
ではどうするのか?
EUVでは、
レンズの代わりに「特殊なミラー」を使います。
その代表が、
Mo/Si(モリブデン/シリコン)
多層膜ミラー
です。

ただし大きな問題がある
このミラー、
1回反射しても、
光の多くが失われます。
反射率は約65〜70%程度と言われています。
つまり、
100%の光がきても、1回反射しただけで反射後は約65〜70%程度程度になってしまう。
しかも何回も反射する
EUV露光装置では、
光源
集光
マスク
投影
などのために、
ミラーで何度も反射させます。
例えば、
100%
↓
70%
↓
49%
↓
34.3%
↓
24%
↓
16.8%
↓
11.8%
↓
8.2%
↓
5.8%
のように、
光がどんどん減っていきます。
つまり、
「最初に超強力なEUV光源が必要」
になります。
なぜEUV装置が巨大なのか
そのためEUV露光装置では、
高出力レーザー(マイクロプラズマを作るための加熱源)
真空装置
超高精度ミラー
原子レベルの位置制御
など、
ものすごい技術が必要になります。
現在のEUV露光装置は、
1台数百億円とも言われています。
④ 現像
露光後、
現像液によって、
光が当たった部分
当たっていない部分
のどちらかを除去します
(レジスト種類によって異なる)。
すると、
回路パターンだけが残ります。

⑤ ドライエッチング
こうして描いた回路パターンを元に、
不要部分を削るのが
ドライエッチングです。
つまり、
露光 = 回路を描く
ドライエッチング = 実際に掘る
という役割分担になります。
エッチングには2種類ある
エッチングには大きく分けて、
湿式エッチング
ドライエッチング
があります。
湿式エッチングとは
湿式エッチングは、
薬液で材料を溶かす方法です。
例えば、
金属板にレジストを塗る
パターンを書く
薬液につける
すると、
露出部分だけが溶けていきます。

フォトエッチング加工などでよく使われます。
湿式エッチングの特徴
湿式は、
大面積加工
薄板加工
金属メッシュ加工
などに向いています。
例えばステンレスでは、
薄い板に
大量の穴を開ける
加工などが可能です。
ただし問題がある
薬液は、
横方向にも広がって削れてしまいます。
そのため、
「深く、細く掘る」
のが苦手です。
半導体ではそれでは足りない
半導体では、
数十nmレベル
非常に深い溝
垂直に近い側壁
が必要になります。
そこで使われるのが
ドライエッチングです。
ドライエッチングとは
ドライエッチングは、
真空チャンバー内で
プラズマを発生させ、
ウェハー表面を削る技術です。
プラズマの中では何が起きているのか
例えばCF₄(四フッ化炭素)を使うと、
プラズマ中で分解されます。
ラジカル生成
CF₄ + e⁻ → CFx + F•
F₂ + e⁻ → F• + F• + e⁻
ここで生まれる
F•(フッ素ラジカル)は、
非常に反応性が高い状態です。
アルゴンも重要
さらにエッチングガスにはAr(アルゴン)も
Ar + e⁻ → Ar⁺ + 2e⁻
アルゴンイオン(Ar⁺)は、
ウェハー表面に高速で衝突します。
つまり
化学反応
物理衝撃
を組み合わせることで、
高速かつ垂直に削れるようになります。
なぜ半導体はプラズマで削るのか
理由はシンプルです。
「超微細加工が必要だから」
です。
湿式では横にも削れてしまいますが、
ドライエッチングでは、
イオンを垂直方向に加速できるため、
深く
細く
真っ直ぐ
掘ることができます。
これが、
現代半導体を支える超重要技術になっています。
ドライエッチング装置のキーパーツは静電チャック
ドライエッチング装置はプラズマガスを入れた箱の中に数cm離れた2枚の平行平板電極を設置し、その間にシリコンウェハを置き、2枚の電極間にRF波と呼ばれる400kHz~13.56MHzの高周波電圧をかける事によって行われます。ウェハを置く下側の電極は静電チャックと呼ばれる装置で、Note「半導体・・縁の下の力持ち」に詳しい説明をしました。
