加速と減速
クラシック音楽はインテンポで弾く場面でも
速度が揺れていることがあります。
この時、加速と減速を繰り返して帳尻を合わせているのです。
しかしこのテンポの揺れは表現上必要なものと
技術的な失敗の結果として想定外で起きてしまう2種類があります。
・強拍と弱拍の表現上の揺れ
小節の最初の拍は強拍で音価が長め、
最後の拍は弱拍で音価が短めになります。
また「ウィーン・フィル・ニューイヤーコンサート」で聴かれる
「美しく青きドナウ」では真ん中の2拍目が、かなり長いです。
全く均等な3拍子ではありません。
とはいえ強拍と弱拍の揺れは小節内で帳尻を合わせますから
曲のフレーズ単位では等速になっています。
・主旋律が歌う際に発生する揺れ
主旋律のパートが多少表現上、音価の伸び縮みを起こします。
主旋律の裏で均等に8分音符の刻みをしている場合でも発生します。
こういう場合、均等な刻みの方を合わせて揺らすのか、
揺らさずにキープするのかはケースバイケースですが
主旋律パートも伸ばした分、縮めて帳尻を合わせてくることが多いので
この場合は敢えて等速キープで続けることがあります。
主旋律が伸ばしたまま、縮みを作らず引き続けた場合は
曲全体のテンポが減速しますから
合わせて刻みも減速せざるを得ません。
協奏曲のソリストさんで優秀な方は伴奏パートがどんなテンポを作ろうと、
問題なく合わせてテンポは崩さずに主旋律を歌わせてくれます。
私が共演経験した中でヴァイオリン奏者の渡辺紗蘭さんは
この能力が極めて高く舌を巻きました。
・技術的問題で転んでしまい発生した揺れ
演奏上のミスでつっかえてしまい、
急加速や急減速が発生することを転ぶと言います。
これは解消しなくてはなりません。
高難度フレーズで音の配列が間に合わず、減速が発生してしまった場合や、
逆に高難度フレーズで気持ちが焦ってしまい加速してしまうケースです。
どちらかというと気持ちが焦り加速してしまう方が、
より演奏難度が上がるのでタチが悪いですが、気持ちだけの問題なので
解消は意外に簡単です。焦らないように気持ちを整えて慣れることです。
減速が発生するほうは気持ちの問題ではなく
技術的に音列が入るようにしなくてはならないので、
練習でしか解消できません。
音程のミスや全く違う音を弾いてしまうミスは
曲を知らない人からすれば間違いだとは気づかない場合が多く
音楽が壊れてしまうことは案外起きません。
曲の拍感が失われた時や、止まってしまいそうにつっかえた時のように
テンポの揺れが表現を超えて発生した場合は
誰が聴いてもミスだと気づきます。
こちらの方が音楽が壊れてしまうのですよね。
