活版印刷プロジェクト #01|広島の活版地図ポストカードを試作する
私は普段、旅先の風景や建築、地図などをモチーフに、ポストカードやZINEなどの紙ものを制作しています。
今回紹介するのは、活版印刷でポストカードを作ってみた話です。
活版印刷とは
活版印刷の魅力は、まずその質感です。
フラットな印刷とは違い、紙にわずかな凹凸が生まれ、線や文字に少し奥行きが加わる。
紙の上に小さな彫刻のような陰影が生まれる感じがあり、特別な紙ものように感じます。
それに加えて、活版印刷には歴史ある印刷技法としての浪漫もあります。
15世紀半ばにヨーロッパでグーテンベルクが実用化し、長く本や印刷物を支えてきた技法です。
もちろん、今ではもっと効率の良い印刷方法がたくさんあります。
それでも、金属活字や版にインクをのせ、紙に圧をかけて刷るという仕組みには、古い道具を使ってものを作るような魅力があります。
以前、東京にある印刷博物館や市谷の杜 本と活字館にも行き、活版印刷や本づくりへの興味をさらに深めていました。そのときの記事を載せておきます。
自分のデザインを活版印刷
この活版印刷で、自分のデザインを印刷したい。
デザインと印刷技術は密接に関わります。
だから、自分がつくりたいものをこだわって作るなら、活版印刷自体を自分でやるしかないと感じました。
活版印刷の技術は簡単には習得できませんが、長い目で技術を磨く覚悟で、まずはどんなことができるかやってみました。
活版印刷にあたり揃えた道具
・プレス機 (パスタマシーン)
・樹脂版 (外注にて製作)
・インク
・トレイ
・ローラー
・自作プラットフォーム
・ポストカード(ハーフエアコットン)

樹脂版は活版印刷用の樹脂版などを制作されている真映社さんで制作いただきました。

自作プラットフォームは100均で手に入る硬質カードケースを切り開いて片側に樹脂版を貼り付け、もう片側にはポストカードを入れるためのガイドをスポンジテープで作成。

自作した活版印刷のデザイン
今回試作したのは、広島の地図ポストカードです。
広島の海と陸、そして川の流れをモチーフにしたデザインで、広島湾や島々、そこへ流れ込む川の線を中心に構成しています。
海と川がつくる自然の形を、ポストカードにするような感覚で作りました。
版は、海と川の地形を描いた版と、地名や陸の要素を描いた版の2版を作成しました。
活版印刷の版を作っていただいた真映社さんにも相談しながら、線の太さを調整しています。
印刷には、専用の活版印刷機ではなく、パスタマシンをプレス機代わりに使いました。
版にインクをのせ、紙の位置を合わせて、ローラーに通す。
かなり手探りではありますが、自分の手で一枚ずつ刷っていく感覚がありました。

実際に刷ってみると、活版印刷らしい掠れやインクの表情は、とても魅力的でした。
特に青の部分には、普通の印刷とは違うムラや質感が出ていて、紙ものとしての面白さを感じました。


一方で、課題も見えてきました。
まず難しかったのは位置合わせです。
版と紙の位置が少しでもずれると、印刷が中心から外れてしまいます。
今回は2色刷りなので、青と黒の位置をきれいに合わせることも課題になりました。
もうひとつ難しかったのは、インクの乗り方です。
細い線は思ったよりもきれいに出ました。
一方で、海のような広い面に均一に色をのせるのはかなり難しく、どうしても掠れやムラが出やすくなります。
掠れそのものは、活版印刷らしい魅力でもあります。ただ、今回は少し掠れが多すぎる部分もありました。
凹凸感も思っていたより弱めだったので、ここも次回改善したい部分です。
この試作品は、神戸で開催された「ZINEフェス旅と食」で初めて並べました。用意したのは5枚だけ。完成品ではなく、まずは試作品としての販売です。

結果としては、5枚すべて完売しました。
お客さんの反応を見ていると、見つけて、手に取って、そのまま決めてくださるような印象でした。
まだ改善点のある試作品ではありますが、「活版印刷の地図ポストカード」というものに反応してもらえることは確認できたように思います。
今後は、印刷位置のズレや掠れ、不良の多さを少しずつ改善しながら、完成度を上げていきたいです。
将来的には広島以外の都市にも展開していきたいですが、まずは広島をきちんと完成させることが先です。
通常のポストカードとは少し違う、手刷りならではの特別なシリーズとして、少しずつ育てていきたいと思っています。
いつか、自分の商品の中でも主力のひとつになるくらいまで、活版印刷の精度と表現を高めていきたいです。
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