メイド喫茶の長男と、小関神社の父
高校2年生になる長男が通う高校の文化祭に行ってきた。
彼のクラスが出店したのは、「メイド喫茶」。
実際に売るのはお菓子のパンケーキだが、各々メイドにコスプレした生徒たちがウロウロと接客する教室は、それはそれで異質だった。
女子だけでなく、息子たち男子もメイドルック。ジェンダーレスの時代。
今やこのメイド喫茶とお化け屋敷がメインストリームか。全部で4店舗くらいずつあった。

飼い犬「なの」の写真を無断使用していた
AIはこんな時も便利だよなあ
同時に、今から約30年前、僕が高校3年生の時に文化祭でクラスの店長を任されたことを思いだした。
出店したのは、「縁日」だ。
企画の内容はずいぶん違う。でも、教室を自分たちの手で別の空間に変えてしまう、あの感じは同じだった。
きっと、もう時効だろう。
あの日のことを、書こうと思う。
美術部に、小さな社を作ってもらい、担任の小関先生の名を冠した神社を設置した。学校の裏山から竹を切り出して飾りつけ、神社の裏からは祭囃子のCDを流し続けた。ギャグで賽銭箱も置いた。
小関神社祭りを開催したのだ。
売った商品は、お面、落書きせんべえ、ハッカパイプ、香りあめ(水あめにシロップをつけたもの)だ。どれも、一切調理する必要のないものを選んだ。
僕の通った高校では、文化祭で模擬店を出す試みがこの時初めてだった。それまでは、文化部による展示だけの味気ないものだった。
教師たちにとっても初めての模擬店。だから、学校側の管理もゆるゆるだった。
仕入れ値と、売上金をトントンにすること。
これが出店する時に課されたルールだった。
残念ながら、僕たち3年6組は、それを忠実に守れる良い子ちゃんではなかったのだ。
仕入れ価格の見積もりを学校側に提示し、プラスにならないよう価格設定をする。
仕入れは、売り切れが見込める程度に抑えることが義務付けられていた。
でも。
クラスの数名で、密かに文化祭の打ち上げ資金を稼ぎ出すことを目標に定めた。
バレたら、出店は取り消しになっただろう。
翌年以降も、模擬店は禁止に逆戻りしていたかもしれない。
僕は、高校1年生の夏休みに、富士サファリパークで売店のアルバイトをした経験があった。そこでは、簡単なおもちゃと一緒に、お面なんかも売っていた。
その時、バイト先の社長が、「仕入れ先が違うだけで、仕入れ値もだいぶ違う」とよく話していたのを覚えていた。
そこで、まずは駄菓子屋に行き、お面や水あめ、エビせんなどの見積もりを出してもらった。
その見積書を持って、元バイト先の社長の元へ相談に行った。
目論み通りだった。
社長の知る問屋からは、もっと安く仕入れられるというのだ。聞くと、信じられないほど安かった。
僕はすぐに契約して、駄菓子屋の見積書を学校に提出した。
この仕入れ値の差額が、そのまま僕らの打ち上げ代に繋がる計算だ。
今考えれば、完全にアウトである。
当時の僕は、それを「クラスメイトのため」くらいに考えていた。
初日で多くの在庫を売ってしまった僕は、その日のうちにさらなる勝負に出た。
社長が抱える在庫を、一部追加で売ってもらったのだ。
正規発注している他のクラスは、売り切れたら当然そこで閉店となってしまう。実際、2日目の昼前には多くのクラスが店じまいをしていた。
でも、極秘販売ルートで仕入れていた我が3年6組は、翌日も迅速に商品を確保し、売り上げを重ねることができた。
閉店したときには、クラスみんなで、じゅうぶんカラオケに行ける資金がたまっていた。
しかも、ギャグで置いた賽銭箱も、開けてびっくり。小銭に混じって紙幣が何枚も入っていたのだ。面白がった父兄が投げ入れてくれたのかもしれない。
当然、学校側には、備品代を合わせた仕入れ額に少し上乗せして、きっちりと支払った。
まさか、これ以上の余剰が出ているなんて、クラスの文化祭委員数名だけの秘密だった。
学園祭が終わったその日、僕らは打ち上げを控えた。
教師たちの目も厳しいだろうと判断したのだ。
日を改めて、しかも隣町のカラオケ店に行く徹底したKYぶりで、僕らは馬鹿騒ぎをした。
酒屋で買ったサントリー「ザ・カクテルバー」や缶チューハイも、当然模擬店の売り上げから出した。
カラオケも何度も延長して、僕は多くのクラスメイトから「ありがとう」と言われた。
本当の会計額を知る、僕を含めた文化祭委員数名で、打ち上げが終わった後に焼肉へ行った。
生ビールジョッキで乾杯をした。
打ち上げが終わってもまだ、数人で焼肉を食べられるだけの売り上げが、僕の手元に残っていたのだ。
高校の文化祭、今はどうなんだろう。
それとなく、売り上げについて長男に聞いてみた。
「そもそも、電子決済のみだし、学校側に返すみたいだよ」
まあ、予想通りの答えだ。
さらに長男は、クラス全体の打ち上げにも参加しないのだという。
おいおい、まじか。
遺伝子、合ってるのか、これ。
打ち上げや焼肉の話をしようとして、やめた。
ただの犯罪者扱いにされそうだ。
でもなあ。
せっかくの青春の一コマ。せめて、親には言えないような、くだらない秘密の一つくらいは作って来いよ。
