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おいしくないタレを継ぎ足してきた会社

老舗の店には、何十年も継ぎ足してきた秘伝のタレがあるらしい

先代から受け継ぎ、少しずつ足しながら今まで使い続けてきたタレには、それだけで歴史を感じるし、何十年も守ってきた味と聞けばなんとなくおいしそうにも感じる

でも、ふと思う

そのタレ、本当においしいんだろうか

昔から継ぎ足してきたというだけで、誰も味を疑わなくなっていたらどうだろう

実はそんなにおいしくないのに、「これは何十年も継ぎ足してきた秘伝のタレです」とありがたがって使い続けている店があったら、たぶん店より先に客の方が気づく

これ、会社も同じなんじゃないか

会社にも秘伝のタレがある

会社にも長い時間をかけて継ぎ足してきたものがある

仕事の進め方だったり、会議のやり方だったり、上司と部下の関係だったり、評価の考え方だったり、「うちは昔からこうしてきた」という会社独自の文化だったりする

もちろん、昔から続いているものが悪いわけではない

長年積み上げてきた技術や顧客との関係、仕事に対する考え方の中には、簡単に真似できない会社の強みもある

問題なのは、それがおいしいかどうかを誰も確認しなくなることだ

昔は必要だった仕事が、今ではただ手間になっているかもしれないし、昔は必要だった確認が今では判断を遅らせているだけかもしれない、昔は機能していた教育方法や評価の考え方が今の社員には合わなくなっていることもある

それでも「昔からこうだから」という理由だけで続けてしまえば、会社のタレはそのまま継ぎ足されていく

長く続いていることと、今でも良いものであることは別だ

経営者はタレを継ぎ足す人ではなく、味を見る人

会社の文化を味見する役割は、やっぱり経営者にある

今の仕事の進め方は本当に合理的なのか、社員が動きやすい仕組みになっているのか、昔から続けているだけの仕事はないのか、今の市場や顧客に合った会社になっているのか

こういう違和感に気づいて、必要なら味を変える

そこまで含めて経営なんじゃないか

まずいタレなら変える力がいる

逆に、本当においしいタレなら、それを今の時代でもおいしいまま提供し続ける力がいる

昔からの強みを理解せずに全部変えてしまえば、それも会社を壊すことになる

何でも変えればいいわけではないし、何でも残せばいいわけでもない

何を残して、何を変えるのか

その判断ができることが、経営者の実力の一つなんだろう

会社は継げても、味を見る力までは継げない

この話を考えると、事業承継はかなり難しい

会社は受け継げるし、設備も顧客も社員も受け継げる、会社の中に残っている文化もほとんどそのまま次の経営者へ渡っていく

でも、経営する力まで自動的に受け継がれるわけではない

先代がやっていたから自分もやる、昔からこの方法だからそのまま続けるというだけなら、秘伝のタレを継ぎ足しているのとあまり変わらない

問題は、そのタレを自分で味見できるかだ

本当に残した方がいい文化なのか、それとも昔から続いているだけなのか、今の会社に必要なのか、変えた方が社員が動きやすくなるのか

そこを判断する知識や経験がなければ、おいしくないタレでもそのまま継ぎ足してしまう

逆に先代がものすごくおいしいタレを残してくれていたとしても、その価値を理解できず、時代に合わせて活かす力がなければ、そのうち味は落ちていく

結局、まずいタレなら変える実力が必要で、おいしいタレなら活かす実力が必要になる

どちらにしても、会社を継いだだけでは足りない

新しい社員まで同じ味にする必要はない

もう一つ気になるのが、会社に新しい人が入ってきたときだ

別の会社を経験してきた人、新しい技術を知っている人、これまで会社になかった考え方を持っている人が入れば、本来なら会社の文化にも少し違う色が混ざっていくはずだ

でも昔からのタレが強すぎる会社では、新しい人まで同じ味にしようとする

「うちはこうだから」

「前からこうしているから」

「みんなそうやってきたから」

せっかく違う経験や考え方を持った人を採用したのに、気づけば昔からいる社員と同じやり方を覚えさせ、同じ考え方を求めている

それでは、新しい人を入れた意味まで薄くなってしまう

いい会社って、社員全員から同じ味がする会社ではなくて、それぞれの色味がちゃんと見える会社なんじゃないか

技術が好きな人もいれば、人を育てるのが得意な人もいる、改善するのが好きな人もいれば、顧客との関係を作るのが得意な人もいるし、新しい道具をどんどん使いたい人もいれば、昔からの技術を深く持っている人もいる

そういう違う色が混ざっているから、会社として厚みが出る

古いタレに全部漬け込んで、同じ味にしてしまう必要はない

秘伝だから残す、では足りない

秘伝のタレという言葉には、それだけで価値があるように聞こえる

会社でも「創業以来」「昔から」「先代から」という言葉には、なんとなく逆らいにくい空気がある

でも、歴史があることと正しいことは同じではない

昔から残っている文化の中には、本当に大切にした方がいいものもあれば、もう役目を終えているものもある

残すものは残す、変えるものは変える、もう必要ないものは捨てる

その判断こそ、経営の仕事なんじゃないか

秘伝のタレを受け継ぐことより、その味に違和感を持てること

そして本当においしいなら、その味をもっと活かせること

会社を受け継ぐというのは、昔からのタレをそのまま継ぎ足すことではなく、その味を判断する責任まで引き継ぐことなのかもしれない


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